目次

食べ物の中でも、炭水化物が胃や腸で消化・吸収され血液中に入った状態(ブドウ糖)のことを血糖と言います。私達は血糖=血液中のブドウ糖をエネルギーとして活動しています。しかし、インスリンの量や作用の不足があると、ブドウ糖をエネルギーとしては使えなくなり、代わりに体の脂肪を分解してエネルギー産生を行います。その時に、副産物として酸性のケトン体が作られます。

ケトン体が過度になると、血液は極端な酸性に傾きバランスを崩します。その結果、全身のだるさ、吐き気・嘔吐、体重減少などの症状を起こしてきます。ひどいと意識消失も起こります。多くは意識障害で救急搬送され入院での治療を要します。しかし治療の甲斐なく亡くなってしまうケースもあります。これが糖尿病ケトアシドーシスです。

主に1型糖尿病の発症時にみられますが、極端な糖質制限や清涼飲料水の多量摂取などで2型糖尿病にも起こることがあります。今回は2型糖尿病に起こりうる糖尿病ケトアシドーシスについてお話ししたいと思います。

極端な糖質制限に伴って起こる糖尿病ケトアシドーシス

1日の糖質摂取量が50g以下になると、エネルギー源が糖質から脂肪へとシフトしていき、ケトン体が増加するといわれています。過度にケトン体が増加した場合は、意識障害を起こすまではいきませんが糖尿病ケトアシドーシスが起こりえます。特にSGLT-2阻害剤(ジャディアンス、カナグル、フォシーガ、ルセフィ、アプルウェイ、デベルザ)を内服している糖尿病患者さんが極端な糖質制限を始めた場合は注意が必要です。

糖質何gと言われても…、と思いますよね。主食で言えば、ご飯茶わん1杯の白米や6枚切りの食パン1枚で糖質量は約30gになります。おかずだと、小学校給食のおかずの糖質量が大体20gだそうです。イメージできました?

清涼飲料水の大量摂取時に起こる糖尿病ケトアシドーシス(ソフトドリンクケトアシドーシス)

ソフトドリンク

高血糖状態の糖尿病患者さんの症状としては、のどが渇く(口渇)、たくさん飲む(多飲)、おしっこの回数が増える(多尿)などがあります。のどが渇いたとき(口渇時)に糖質を含む清涼飲料水を好んで飲み続けると、血液中にどんどん糖が入ってきて高血糖を助長します。

その上、糖尿病ではインスリンが作用しないため入ってきた糖はエネルギーとして使われず溜まる一方で、脂肪の分解によりエネルギーの産生を行う動きが進みます。その結果、血液中にケトン体が増加し、脱水を伴う糖尿病ケトアシドーシスを発症します。

 

最後に、糖尿病ケトアシドーシスは、発症はごく稀ですが起こると生命を脅かす重症な病態です。糖尿病で内服治療中であれば、医師の指示に従い、勝手に極端な糖質制限を行うことは避けるべきです。また、当たり前ですが喉が渇いたからといって清涼飲料水の過度な摂取は避ける必要があります。