大暑も過ぎ、1年で最も気温が上がり、暑さがこたえる季節となりました。熱中症といえば、暑さに弱い子どもや高齢者がなるものと思われがちかもしれませんが、炎天下の屋外や、熱のこもった調理場のような場所で働く大人にとっても、注意が必要です。

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職場の熱中症、死傷者数は建設業が最多

働く大人にとって、職場での熱中症は決して珍しくはありません。記録的な猛暑だった平成22年度は47人昨年度でも12人が仕事中の熱中症で命を落としています厚生労働省より)。月別の死傷者数をみると、7~8月が全体の約9割と断トツで、今がまさに要注意シーズンといえるでしょう。

なかでも、熱中症を発症しやすい仕事は、建設業と製造業で、死傷者数の約半数を占めています。昨年度の死亡者をみると、12人中7人が建設業と最も多く、過去5年間でも毎年6~11人が亡くなっています。炎天下の屋外で長時間作業するなど、冷房のない環境で働いている人が多いためと考えられます。

熱中症で亡くなる人のなかには、20~30代の若い世代も少なくありません。前述の厚労省のデータによると、昨年度の死亡者の内訳は20代1人、30代4人となっています。2017年も、7月中旬に広島県で屋根の修理作業をしていた20代男性が熱中症で亡くなっており、若いからといって油断は禁物です。

厚労省では「クールワークキャンペーン」を展開中

厚生労働省
今夏も全国的に猛暑が予想されることから、厚生労働省では「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」と銘打ち、職場での熱中症予防対策を広めています。

一般的な対策(「熱中症対策は十分ですか?」をご参照ください)とは異なり、次の5項目のチェックなどを通して、作業環境の見直し働く人の健康管理の徹底を呼び掛けています。

  1. 1. WBGT値の低減に努めていますか?
  2. 2. 熱への順化期間を設けていますか?
  3. 3. 自覚症状の有無に関わらず水・塩分を摂っていますか
  4. 4. 透湿性・通気性の良い服装を着用していますか?
  5. 5. 睡眠不足・体調不良ではありませんか?

気温だけでなくWBGT値のチェックも忘れずに

ここで、注目したいのが「WBGT値」です。「Wet-Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略称で、「暑さ指数」の測定に使います。アメリカの海兵隊が熱中症のリスクを事前に判断するために開発したもので、日本でも環境省が平成18年からweb上で全国各地のWBGT値の情報提供を始めています。

暑さ指数は、異なる3種類の温度計から、気温、湿度、輻射熱(地面や建物から出る熱)を測定して求める複合的な数値で、単なる気温とは違います。

算出式は次の通りです。

屋外 WBGT(℃)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

屋内 WBGT(℃)=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

一般的に、暑さ指数が28℃を越えると、熱中症にかかる人が急増するといわれていますが、これは日常生活での基準値です。これとは別に、厚労省では仕事内容によってレベルを5段階に分けた基準値を定めており、最も高いレベルでは18~25℃が基準値になっています。基準値は、あくまでも暑さ指数のことなので、温度計で測った気温そのものとは違うので注意してください。

体を熱に慣らすことも重要

こうした労働環境の管理のほか、重要なのが働く人自身の体調管理。なかでも、気をつけたいのが「熱への順化」です。計画的に体を暑さに慣らしていくことが、熱中症の予防につながります。厚労省では「作業者が順化していない状態から、7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くする」と例を挙げています。

ここで、注意したいのが、ばく露を中断すると4日後には順化の効果が薄くなり始め、3~4週間後には完全に効果がなくなるという点です。また、ばく露期間中に、心拍数の異常体重の著しい減少体調不良などがみられたときは、ばく露を中止する必要があります。

まとめ

職場での熱中症に関しては、睡眠不足や体調不良も大きく影響するほか、前日の飲酒量など大人ならではの原因も絡んできます。職場全体で熱中症対策を徹底することはもちろんですが、自分自身で体調をしっかり管理することも大切です。