だんだん夏が近づいてきました。汗をかいたら、しっかり水分補給していますか?水を飲まないと危険な脱水症状になるということは知っていても、具体的にどのような症状が出るのか知らない方は多いのではないでしょうか。今回は、脱水症状の原因と症状についてご説明します。
脱水症はなぜ起こる?
人間の身体は、成人で6割が体液から成っています(お年寄りでは5割、新生児では7~8割と、年齢によって割合に変化がみられます)。体液とは、血液・リンパ液・唾液・粘液・消化液・唾液・ 尿など、人間の身体が生命活動を行ううえで欠かすことのできないものです。この体液が失われた状態を、脱水症といいます。
脱水症状を起こすと、酸素や栄養素がうまく体内に行き渡らなかったり、老廃物を排出することができなくなったり、体温をうまく調整できなくなったりするなどの問題が生じます。治療を怠ると命にかかわることもあるので、症状に気付いたらすぐに処置を行うことが必要です。
特に注意が必要なのはどんなとき?
脱水症は、体内に入ってくる水分量の減少と体外に出て行く水分量の増加が主な原因です。そのため、以下のようなときには特に注意が必要です。
- 体調不良などであまり食事をとれない時(水分は、飲料だけでなく食事からも体内に取り込まれています)
- 暑い時(汗で多くの水分が奪われます)
- 嘔吐・発熱・発汗(水分が多く体外に排出されます)
- 慢性呼吸器疾患(気道からの分泌物が増えるため、水分が多く失われます)
- 糖尿病(高血糖により多尿になり、水分不足が起こりやすくなります)
- 脳血管障害や認知症(意識障害や認知障害があると、水分を摂取する量が少なくなります)
また、水分が体外に出て行く時には、ミネラルも一緒に排出されています。汗を舐めると、しょっぱい味がしますよね。それが、ナトリウムなどのミネラルです。ですから、脱水症の予防には水分だけでなくミネラルが欠かせないということを忘れないでください。
脱水症の症状とは
軽度
めまいや揺らつきが起こります。また、口の中が渇いたように感じます。
中等度
頭痛や悪心が起こります。口の中や粘膜が強く渇き、唾液や尿の量も減ります。嘔吐する場合もあります。
重度
意識障害、けいれんなどを引き起こします。そのほか、昏睡や錯覚、幻覚などの精神症状が起こることもあります。
重度の脱水症は、命に関わることがあります。軽度であっても症状が出たら、すぐに水分補給を行ってください。
また、高齢者の場合、口の渇きなどに気付きにくい場合があります。その他、認知症の患者さんや小さなお子さんでは、脱水症を起こしていることに自覚を持てないことがありますので、異変が見られないか周囲の人が常に気をつけて見てあげてください。
脱水症を予防するためには
脱水症は、治療よりもまず予防に努めることが第一です。予防の要は、水分補給とミネラル補給です。
水分補給
とにかく、こまめに水分をとるようにしましょう。とくに就寝前や起きてすぐ、入浴する前後、運動をする前後、運動中、そして飲酒後は、必ず水分をとってください。
汗や尿だけでなく、皮膚表面や呼吸などからも水分は排出されています。運動をしていなくても、1日に2リットルの水が排出されているのです。「汗をかいていないから」あるいは「汗をかきたくないから」水分をとらないという人もいますが、脱水症を防ぐためにも水分補給は怠らないでください。
ミネラル補給
水分だけを補給していると、自発的脱水と呼ばれる症状を起こすことがあります。これは、大量の汗をかいたときに 水のみを補給することで血液中の塩分が薄まり、「これ以上水は要らない」という指令が脳から出てしまうことです。この状態になると、身体は体液の濃度を元 に戻すべく水分を体外に排出してしまうので、結果的に脱水症を引き起こします。そのため、水分とともにミネラルを補給することが大切です。
日本体育協会では、熱中症予防の水分補給として0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80ミリグラム/100ミリリットル )と糖質を含んだ飲料を推奨しています。市販のイオン飲料や経口補水液の他、1リットルの水に対して小さじ半分(3グラム)の食塩と40グラム(大さじ4杯)の砂糖を加えると、自分で調製することもできます。
ただし、高血圧の方では塩分を取りすぎると血圧が上昇したり、糖尿病の方では糖分を摂取しすぎると糖尿病が悪化したりすることがあるので、持病のある方は主治医の指示を仰いでください。
最後に
脱水症が起こるメカニズムと、予防するための方法を分かっていただけたでしょうか?水分とミネラルのこまめな補給を意識して、自分の身体は自分で守りましょう。高齢者や小さなお子さんの脱水症には、周りの方が気を配ってあげてくださいね。