近年、糖尿病を罹患する患者さんが増え続けています。厚生労働省による2014年の調査では、糖尿病罹患患者数は316万6000人に達したと報告されています。そして、その多くは、不規則な食生活や生活習慣が原因となって生じるⅡ型糖尿病です。Ⅱ型糖尿病は生活習慣や食生活を改めることによって、状態を改善することができます。ここでは、Ⅱ型糖尿病の患者さんがするべき、生活習慣・食事習慣の改善法について説明します。

目次

糖尿病ってどんな病気?

まず、糖尿病がどの様な病気なのか簡単におさらいすることにしましょう。糖尿病はインスリンというホルモンが分泌されなかったり、きちんと全身の細胞に作用しなくなったりすることによって血糖値(血液中の糖分の量)が増加してしまう病気です。血管内で増加した糖分は、血管の壁を傷つけ動脈硬化を促進し、全身で様々な症状を引き起こします。つまり、糖”尿”病と名付けられていますが、実際は多くの血管に障害を起こす病気なのです

では、血糖値はどのように下げれば良いのでしょうか?もちろん、薬剤を服用することによっても下げられますが、患者さん自身の努力でも大きく改善することは可能です。患者さん自身で行える血糖値の改善法として、食事療法運動療法の2つがあります。

食事療法

食事療法

食生活を改善することによって血糖値を改善することは十分可能です。インスリンの作用は、肥満によって低下する傾向があるので、肥満を防ぐ食生活を心がけることが大切です。ですが、やみくもに『体によさそう』といったイメージだけで食生活を改めようとすることはあまり効率的ではありません。ここでは、日本糖尿病学会が2016年にガイドライン上で推奨した食生活についてみてみることにしましょう。

1.栄養素

血糖値の管理で最も大切なことは、エネルギーの過剰な摂取を抑えるということです。過剰に摂取したエネルギーは脂肪として体内に蓄積されて肥満を引き起こします。

近年、炭水化物の摂取を減らす「糖質制限ダイエット」が流行していますが、炭水化物の摂取だけを極端に減らす食事療法について、日本糖尿病学会は「エビデンスが不足しており、現時点では薦められない」としています。どの栄養素もまんべんなく摂りつつ、全体のエネルギー摂取量を削減することが大切です。

また、食物繊維を積極的に摂るのも血糖値を下げる働きがあります。

2.食事の摂りかた

単純な栄養分の摂取量だけではなくて、食事のしかたにも気を配ることが大切です。肉や魚を食べる前に食物繊維を多く含む野菜を摂ることで、食後に血糖値が上昇するのを防ぐことができるとされています。また、ゆっくりとよく噛んで食べることも有効だとされています。

運動療法

食事療法だけではなく、運動療法も血糖値を下げるのには効果的です。有酸素運動レジスタンス運動を合わせて行うことが効果的であるとされています。

有酸素運動とは、心臓と肺の機能を高める運動のことであり、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどが含まれます。有酸素運動は、体内での糖分代謝機能を改善することで血糖値を下げる効果があるとされています。

一方、レジスタンス運動はダンベルやマシンなどを用いて行ういわゆる『筋トレ』のことです。レジスタンス運動によって筋肉の機能が向上することも、糖代謝機能の向上につながります。なお、日本糖尿病学会では有酸素運動は一週間に3~5回、合計150分以上実施し、それに合わせてレジスタンス運動を2~3回実施することを推奨しています。また、普段の生活からエレベーターやエスカレーターではなく階段を利用するなど、運動量を増やせるように工夫することも大切です。

ただし、このように様々な効果が期待できる運動療法ですが、実施の際には医師と相談することが重要です。特に、すでに医師の治療を受けている場合や、末梢神経障害や糖尿病腎症などの合併症を持っている患者さんには過度な負担がもたらされる危険性があるので、注意しましょう。

まとめ

血糖値は、食事と運動の習慣を見直すことによって改善することができます。もちろん、糖尿病の患者さん向けに血糖値を下げる薬剤は数多く市販されていますが、まずは患者さん自身でできる努力によって改善を目指すことが重要でしょう。小さな工夫やほんの少しの努力で血糖値は少しずつ改善することができるので、これを機会に取り組み始めてはいかかでしょうか?