仕事上の過剰なストレスなどが引き金となって起こる「過労死」。過労死とは病名ではなく、何らかの病気で死や重篤な障害に至り、労災保険の支給対象となったケースを指します。原因となる主な病気は、脳出血や心筋梗塞など脳や心臓疾患が多く、過労死にあたるかどうかの認定基準が設けられています。

目次

死亡件数は年間90〜100件台前半で推移

平成28年版過労死等防止対策白書によると、ここ10年、仕事上の過剰なストレスで脳や心臓の病気を発症したとする労災認定は、200件台後半から300件台前半で推移。このうち、死亡件数は、平成14年度の160件をピークに、それ以降は90件台から100件台前半で推移しています。平成27年度の認定件数は251件(前年度比26件減少)で、死亡件数は96件(同25件減)となっています。

原因となる病気とは?

過労死の原因として知られているのが、脳や心臓の病気です。このうち、厚労省が労災保険の対象としているのは、次の通りです。

脳血管疾患

  • 脳内出血
  • くも膜下出血
  • 脳梗塞
  • 高血圧性脳症

虚血性心疾患

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心停止(心臓性突然死を含む)
  • 解離性大動脈瘤

これらの病気は、生活習慣や遺伝などの要因でも発症するため、「発病=過労死」ではありません。病気と仕事との関連性を判断するには、「業務による明らかな過重負荷」があるかがポイントとなります。

厚労省では、発症前の期間に応じて下記3段階に分けた認定要件を設けており、これを基に過労死かどうかを判断しています。

  1. 発症直前から前日
  2. 発症前おおむね1週間
  3. 発症前おおむね6カ月間

過労死につながるサインを見逃さないで!

疲れている女性

過労死の原因となる脳や心臓の病気のなかには、命を落とす重病もありますが、初期段階で手を打てば、一命を取り留めることもできます。そのためには、本人や周囲の人が病気につながる“サイン”を見逃さないことが大切です。

脳梗塞のサイン

  • 片方の手足がしびれる
  • 足がもつれる
  • 手足に力が入らない
  • ろれつが回らない
  • 言葉がとっさに出てこない
  • 他人の言うことがわからない
  • 物が見えにくい

上記のような症状が1つでもあれば、脳梗塞の疑いがあります。様子を見るのではなく、ただちに医療機関を受診しましょう。

心筋梗塞のサイン

  • 胸の痛み、圧迫感、しめつけられる感じ
  • 胸やけ
  • 腕、肩、歯、あごの痛み

ここで注意したいのが、上記のような症状は、数分〜10分ほどで完全に治ることが多いため、軽く考えてしまいがちということです。しかし、症状は繰り返すことが多く、歩いたり、階段を昇降したりすることでひどくなるケースもあるので、注意しましょう。

さらに、腕や肩など、一見すると心臓とは関係のない箇所が痛むこともあります。このような痛みでも、上述のように繰り返したり、動くことで痛みが増したりする場合には、すぐに循環器内科などの医療機関を受診しましょう。

職場の同僚や家族などに、このような症状が現れていると気がついたときは、迷っている時間はありません。心筋梗塞は致死率が非常に高い病気です。発症する前に、医療機関へ連れて行きましょう。過労死を防ぐために重要なことです。

まとめ

過労死は、イギリスの辞書にも「Karoshi」として記載されているほど、日本を代表する言葉になっています。働き過ぎの日本人にとって、過労死は「明日は我が身」と言うべき問題。労働環境はすぐには変えられないかもしれませんが、病気のサインを見逃さないという自衛策をとることが大切です。