心臓は全身に血液を送り出す重要な働きを持つ臓器ですが、その働きを妨げる様々な病気があります。

心臓そのものの異常によって起こる病気や、他の病気が原因となり二次的に起こる病気、また先天性の病気や原因が不明のものもあります。しかし、心臓病の多くは動脈硬化などの生活習慣病に起因しており、発症や悪化を防止するために日常生活において注意できることがたくさんあります。そんな心臓病を予防するための、生活のポイントをご紹介します。

代表的な心臓病については、「知っておきたい「心臓病」!一体どんな病気があるの?」をご参照ください。

目次

動脈硬化と心臓病の関係「死の四重奏」「メタボリックシンドローム」とは?

心臓病の原因となる動脈硬化とは、血管の弾力性が失われて硬くなり、血流の停滞や様々な物質が沈着して血管の内腔が狭くなる状態です。動脈硬化が進むと、心臓はより強く圧をかけて血液を送り出さなければならなくなり、高血圧心不全の状態となります。

動脈硬化は老化現象として必ず起こるものですが、動脈硬化のリスクとなる4つの因子は「死の四重奏」と呼ばれます。「メタボリックシンドローム」も動脈硬化を進行させるもので、これらを改善することが心臓病の予防の基本となります。

死の四重奏

1989年にアメリカの研究者カプランによって提唱された概念で、

  1. 肥満
  2. 糖代謝異常(糖尿病)
  3. 脂質異常症(高脂血症)
  4. 高血圧

が重なると冠動脈疾患による死のリスクが高まるというものです(厚生労働省 e-ヘルスネット|健康用語辞典 死の四重奏より)。メタボリックシンドロームの前身の概念でもあります。

〈メタボリックシンドローム〉

おなかに脂肪がたまった状態(内臓脂肪蓄積)で空腹時血糖、血清脂質、血圧が一定の数値を超えていることを表します。「死の四重奏」 で指摘されている糖尿病や高血圧などの病気を引き起こしやすくしてしまいます。血糖、脂質、血圧がそれほど高くなくても動脈硬化の進行を早めるものです。

心臓病を予防するには?

肥満男性

1.肥満を予防、是正する

肥満になると血中のコレステロールが増え動脈硬化を引き起こしやすくなります。

また、肥満は血糖値をコントロースするインスリンの働きを阻害し糖尿病の原因ともなります。

さらに大きな身体に血液を循環させるために心臓には負担がかかり、血圧も高くなります。

このように肥満は死の四重奏の他の因子(糖代謝異常・脂質異常症・高血圧)とも密接な関連があるほか、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすく、睡眠時無呼吸症候群もまた、心臓病の原因となります。

睡眠時無呼吸症候群について詳しくは、記事「いびきは聞こえるけど息をしてない?睡眠時無呼吸症候群とは?」をご参照ください。

体重は適正体重(=身長(m)×身長(m)×22)を目安にコントロールしましょう。

カロリーコントロールによる食事療法が基本となりますが、筋肉量の維持や血行の促進、ストレス解消のためにも、ウォーキングなどの運動も取り入れましょう。

体重を落とすことだけを目的とした極端な減食や、単品の食品だけを摂るダイエットは、ミネラルバランスや自律神経のバランスを乱し、不整脈などほかの心臓病の原因となり危険です。

肥満解消のための食事療法については、記事「肥満から抜け出したい!~肥満を解消するための食事のポイント~」をご参照ください。

2.糖尿病を予防する

血糖値を下げる働きをするインスリンというホルモンが不足して起こる糖尿病は、自覚症状がなくてもじわじわと動脈硬化を進行させています。

糖尿病の発症には、死の四重奏のひとつである肥満のほか、脂肪の多い食事や過食、運動不足や喫煙などの環境因子が関与しており、さらに両親や兄弟が糖尿病という遺伝体質も関与しています。

まずはこれらのリスクを自己チェックし、改善することを心がけましょう。

糖尿病は非常にメジャーな病気であり、ほとんどの医療機関で検査を受けることができます。また、職場などでも定期的な健康診断を受ける機会がある人は、血糖値に注意しておきましょう。糖尿病について、詳しくはこちらの記事「糖尿病ってどんな病気?専門医が語る、放っておいてはいけない理由とは」をご参照ください。

3.高脂血症を予防する

脂質異常症(高脂血症)は血液中のLDL-コレステロールや中性脂肪(TG)が多すぎたり、HDL-コレステロールが少ない状態を示します。高脂血症そのものには自覚症状はありませんが、高脂血症を放置しておくと動脈硬化が進行し、心臓や脳、血管の病気を引き起こします。

高脂血症は遺伝や体質肥満や過食によって起こりますが、太っていないのにコレステロール値が高い人もいます家族性高コレステロール血症という遺伝性疾患や、LDL-コレステロールを血液中にためやすくする飽和脂肪酸を取り過ぎると高くなります。いわゆる「かくれ肥満」と言われる内臓脂肪型肥満の場合には、体重に関係なく高脂血症になりえます。

また女性の場合は、更年期以降のホルモンバランスの関係からコレステロール値が高くなります

高脂血症の予防には、食事で動物性脂肪飽和脂肪酸が多い食品(肉の脂身やバターなど)を控える、食物繊維やイソフラボンなどコレステロールを減らす食品、DHA/EPAを含む青魚といったHDL-コレステロールを増やす食品を取るよう心がけましょう。

高脂血症について、詳しくは記事「放っておくと危ない?脂質異常症が心臓病や脳卒中を引き起こす!」をご参照ください。また高脂血症の食事療法については、こちらの記事「悪玉コレステロールが高いと言われたら?」をご参照ください。

4.高血圧を予防する

高血圧は糖尿病や動脈硬化と同様に自覚症状のない時期から、じわじわと動脈硬化を進行させています。また高血圧はすでに動脈硬化があり心臓に負担がかかっているサインでもあります。

高血圧の予防には、減塩を基本とした食事療法のほか、禁煙や規則正しい生活を送るといった自律神経のバランスをとることも大切です。詳しくは「血圧を防ぐ生活習慣とは」をご参照ください。

まとめ

心臓病の予防には死の四重奏と言われる①肥満②糖代謝異常③脂質異常症④高血圧を予防することが大切です。いずれも過食や脂質、塩分に留意したバランスの良い食事を摂取することや、適度な運動、禁煙や規則正しい生活など、日常の生活での心掛けが基本となります。

心臓病の原因となる動脈硬化は加齢に伴い徐々に進行していくため、その対策も長く習慣として取り入れていくことが必要です。また、心臓病の罹患率が高まる40代以降は、定期的な健診を受け、予防とともに早期発見を心掛けましょう