私たちが普段自分自身の健康状態を知るための手掛かりのひとつが体温です。しかし、体温ってそもそもどこの温度のことなのでしょうか?同じ「からだの温度」でも、測る場所によって少しずつ異なるはずです。
体温計はどうやって使うのが正しいの?体温計にはどんな種類があるの?時間が違くても体温は同じなの?など、体温に関する素朴な疑問についてお答えしていきます。
体温って何?
体温とは
体温とは、人間の血液の循環機能において、肺を循環した血液が全身に送り出される「大動脈」の入り口の血液の温度のことをいいます。
人の体温が病気との関連で注目されたのが、体温計ができる2000年以上前の紀元前460年頃とされています。その後紀元前100年頃に温度探知機が作られ、1603年に世界で初めての体温計が作られました。それから改良を経て、1742年以降に医療現場で体温計が使われるようになりました。家庭で体温を気軽に測るようになったのは、これよりもっと後の話となるようです(体温医学研究の歴史より)。
どこで測るの?
人間の体温を測る際に用いられる部分は、主に直腸(肛門から体温計を挿入)、口腔内(口の中)、腋窩(脇の下)の3ヶ所です。測定部位により温度差があり、例えば、直腸の温度は腋窩で測るよりも0.5℃高く、口腔内の温度は腋窩で測るよりも0.2度高くなります。
口や直腸は身体に対しての侵襲(身体が受けるダメージ)が大きいため、家庭用の体温計は、最も手軽にできる脇の下で測定するタイプが用いられることが多いです。
平熱について
人間の平熱は、正しく測定すれば子供から高齢者まで、腋窩温で36.89℃±0.34℃とされています(テルモ体温研究所より)。乳幼児は熱の産生が活発な一方で、体温を調節する機能が未熟であることから高めになり、逆に高齢者は熱産生および体温調節機能が低下するため低めになります。
体温計の種類~主な4つのタイプ~
体温計は現在いろいろなものが販売されています。ここでは4つのタイプの体温計をご紹介します。
水銀体温計
熱によって水銀が膨張する原理を利用して作られた体温計で、体温の上昇に比例して水銀柱が上がるため体温が測定できます。水銀体温計には留点部(水銀が通る管の部分の細くなったところ)があるため、最高温度に上昇した後は水銀が下がらないようになっており、振ることで元に戻ります。
しかし日本国内では水俣条約の採択を受けて、2021年以降の水銀体温計や水銀血圧計の製造販売の禁止、また医療機関においては2020年までに水銀体温計や水銀血圧計の使用中止が求められています(水俣条約及び水銀汚染防止法に関わるリーフレットより)。
現在地方自治体が主体となって家庭にある水銀体温計の積極的な回収を行っており、今後水銀体温計を見る機会は減ることが予想されます。
電子体温計
1970年頃にアメリカの陸軍の軍医が初めて考案し、現在、幅広く普及している体温計です(一般社団法人北多摩薬剤師会より)。電子体温計には2種類があります。
予測式体温計
体温上昇カーブから平均音を予測して、電子音で知らせる仕組みです。1983年に医療向け、1984年に家庭向けが初めて発売されました(テルモ体温研究所より)。早いものでは3秒ほど、遅いものでも1~2分で測定が可能であり、赤ちゃんなどでも体温が手軽に図れるようになりました。
実測式体温計
今現在の体温を反映させる体温計です。測定には最低でも5分ほどかかります。
電子体温計は脇で測定するタイプ以外にも耳の鼓膜とその周辺から出ている体温(赤外線)をセンサーで測る耳式体温計、おでこの表面から出される体温(赤外線)を外気温と換算して舌下音として測定するおでこで測るタイプの体温計などがあります。
体温計の正しい使い方
ここで、一般家庭で最もメジャーであると考えられる腋窩用の体温計の正しい使い方をご紹介します。
体温を測る前に注意したいこと
体温を測る前に以下のことに注意しましょう。
1.飲食、運動、入浴後30分間は測定しない
体温は飲食、運動、入浴後には高く測定されてしまいます。性格な体温を測るために、これらを行った後30分間は体温測定は避けるようにしましょう。
2.体温測定部位の汗を拭く
体温を測定する際に汗などが付着していると気化熱(汗などの水分が蒸発する際に体温が発散される)によって低くなるため、汗は必ず拭きとりましょう。
体温測定の際の注意
- 体温計は脇と垂直に差し込む
- 上半身に対して30度くらいになるようにして軽く肘を曲げ、掌が上に向くようにして脇を閉じる
- 空いている手で肘を抑えて密着させる
- 電子音が鳴るまで静かに待つ
(テルモ体温研究所より)
耳で測るタイプや額で測るタイプは、体温計を耳あるいは額にかざし、ボタンを押すことで測定可能です。耳の鼓膜あるいは額に対して水平に体温計をかざさないと測定できませんので、体勢に気を付けて測定しましょう。
1日の体温の変化

体温は1日の中でも大きく変化します。
早朝が1日の中で最も体温が低く、時間の経過とともに次第に上昇し、夕方が最も高くなります。そのため、体温を測る際にはいつも同じ時間帯に測定することが望ましいとされます。
また、運動や食事、睡眠、外気温によって体温は変動します。赤ちゃんでは大泣きした後でも体温が変動しますし、女性では生理周期に合わせて体温が変動します。
体温測定の頻度に関しては明確な決まりごとはありません。しかし、何度も測定しても結果は変わらないということも多いです。そのため、1日の中での体温の差を知りたい場合は、病院の検温でも行われている朝、昼、夕の1日3回測ることが良いでしょう。また、毎回同じ場所で測定することで、体温の変化を観察することができます。
発熱して解熱剤を内服している場合は、解熱剤内服後効果が現れる30分~1時間後に1回、解熱剤の効果が無くなる6時間後に1回測ることが望ましいでしょう。
まとめ
体温は、体温計が進化することでより手軽に、より簡単に測ることができるようになっています。
しかし、体温は測定する時間帯、その日の気温や行動で大きく値が変わります。そのため、体温測定をする際には毎回同じ時間に、同じ場所、同じ条件のもとで測ることが望ましいでしょう。
なお、3~4日間、朝、昼、夜に体温を測定し平均を出すと、自身の平熱を知ることができます(サワイ健康推進課より)。平熱が気になる方はぜひ測定していただき、自分の健康状態の指標にしてみてはいかがでしょうか。