糖尿病治療中の方は、日頃から食事や運動、そして薬の管理など、生活の中でいろいろなことに気を配っていることと思います。しかし、治療中の患者さんが万が一災害に遭われた場合、日頃のケアが十分にできなくなってしまうかもしれません。
そこでこの記事では、糖尿病治療中の方の災害時にもできるセルフケアについて解説しています。災害の混乱と不安の中、自分の身体を守るために必要な行動がとれるよう、日ごろから確認しておきましょう。
3つのポイントとは?
患者さんが自身で行えるケアのポイントは、次の3つにまとめられます。
- 食事のとり方
- 感染症予防
- 運動
予備軍の方も含めて糖尿病治療中の患者さんは、血糖値のコントロールを行うことで合併症の発症を予防・悪化を防止することが治療の目的となります。加えて、糖尿病の患者さんは感染が起きやすくなっていることがあるため、衛生状態を保つことが難しい災害時は、特に注意する必要があります。
以下、それぞれの項目について詳しく見てみましょう。
①災害時の食事のとり方
被災した直後、3日目くらいまでは食料を手に入れることが難しいことが考えられます。この時期には、まずはエネルギーを確保することを優先に考え、手に入った食事をとるようにします。ゆっくりと噛んで食べることで、血糖値の急激な上昇を避けることができます。
食事の確保がある程度可能になったら、糖質や塩分、炭水化物といった、血糖値が上昇しやすい食材の摂取に気を配るようにします。水分が不足しがちになるので、意識してこまめに摂りましょう。脱水状態では血糖のコントロールが悪くなったり、血管を詰まらせる原因になってしまいます。
救援物資として配られるものは、手軽に食べられる菓子パンやおにぎり、乾パンやカロリーメイトなど、どうしても炭水化物の多いものや、保存のできる塩分を多く含むものが多い傾向があります。こうした食べ物は、一度にたくさん食べずに回数を分けて食べるようにしましょう。
食物繊維はなかなか手に入りにくいと考えて、災害準備品の中にコーン缶などの野菜の入った缶詰を用意しておくとよいでしょう。
②感染症にかからないようにする
糖尿病の患者さんは感染症にかかりやすく、また傷が出た場合には治りにくいことがあります。災害時には怪我をしたり、感染症にかかったりするリスクが高まります。事前にしっかりと対策方法を確認しましょう。
風邪などの内科的な感染症
避難所などにはたくさんの人が集まります。そのため、風邪などの感染が起こりやすい状況に置かれることになります。周囲の人も含めてマスクを着けること、可能な限り換気を行うこと、冬場であれば寒さ対策を行うことを心がけましょう。
傷などからの外科的な感染症
被災時に負った傷や出血の処置は医療班にお願いしましょう。小さな傷でも、衛生面に不安のある場所ではその傷から感染症をおこし悪化することもあります。
また、片付けや救助に際して怪我をしてしまう可能性があるため、長袖長ズボンの着用、作業用の手袋の着用を心がけましょう。また、飛び散った破片などによる怪我にも十分注意してください。避難用のスリッパなどを用意しておくと便利です。
2次感染の防止
救助活動にあたる際や、救助を必要な人に遭遇した際、嘔吐物や出血には十分に注意しなければなりません。手袋や、簡単なレインコートなどがあれば、これらを着用することで自分の身を守りましょう。
③運動について
被災して不安な状態では、運動どころではないと思うかもしれません。身体が思うように動かないかもしれません。しかし、全く運動をしないと身体はさらにダメージを蓄積してしまうことにもなりかねません。可能な範囲で身体を動かすように意識しましょう。
血糖コントロールのため
配給される食料はどうしても炭水化物が多く、エネルギー過多になりやすく、血糖のコントロールが悪くなりやすくなります。そのため、運動をすることでカロリーを消費することが望ましいです。
一方、過度の運動は低血糖を引き起こす恐れがあります。身体を動かしていたほうが気がまぎれるため、救助作業や復旧作業に力を入れてしまう方もいるかもしれませんが、負担のかけすぎには十分注意してください。
ストレスを軽減するため
被災したというショックや、普段と違う環境で生活をしないといけない状態では、どうしてもストレスが多くなります。
この点、ストレスを軽減するためにはリズム運動が有効です。中でも手軽にできる散歩がお勧めです。散歩をする際には、避難所の周辺など危なくないエリアを探して安全に注意して行ってください。
身体をぶらぶら揺らして緩めるという動きや、深呼吸を意識的に繰り返すこともストレス軽減に役立ちます。他にも、ラジオ体操のような動きは、その場で簡単に行えるうえ全身をバランス良く動かすことができます。
まとめ
災害時のセルフケアは、実は普段行っていることから応用できることです。日頃から食事の摂り方、感染症予防の心がけ、隙間時間での運動などを心がけることで、災害時にも対応しやすくなります。また、食事については救援物資では摂取が難しい、食物繊維を含む食品を備蓄しておくとよいでしょう。