糖尿病の患者さんは毎日の治療が欠かせません。しかし災害が起きると、食事や運動量の管理がままならず、インスリンの供給が遅れる事態も考えられます。
このような時、患者さんはどう動けば良いのでしょうか?
この記事では、糖尿病患者さんが災害に備えてすべきこと、災害が起きた時にすべきことについてお話します。
災害に備えてすべきこと3つ
1.薬は1週間以上の備蓄を
災害直後には、インスリンや飲み薬の補給が期待できません。薬や消毒用品などの消耗品は1週間分以上備蓄するようにし、期限が切れているものがないか定期的にチェックするようにしましょう。
家だけでなく学校や職場にも、ある程度の備蓄をしておくことをおすすめします。
2.必要なモノ・情報をまとめておく
糖尿病の治療に必要なものは、避難時にすぐに持ち出せるようにしおきましょう。
インスリン自己注射セットや飲み薬、血糖測定器、ブドウ糖、飲料水といった最低限のものはコンパクトにまとめて常に携帯しておくと安心です。
そのほか、糖尿病連携手帳、お薬手帳、保険証はすぐに取り出せる場所に置いておきましょう。
また、自分の使っているインスリンの種類、処方薬品名、シックデイルール、通院している病院の連絡先はメモをして非常用袋に入れておくか、携帯電話やスマートフォンのカメラで撮っておくと役立ちます。災害時は充電できないこともありますので、紙にも残しておいた方が無難かもしれません。
3.非常時にはどうすべきか相談しておく
心の準備をしておく意味でも、主治医や医療スタッフに非常時の対応を相談しておきましょう。
注射器が壊れた場合、予備の薬がなくなった場合にどうすべきかなど、聞いておいてメモをとっておくといざという時に慌てずにすみます。特にシックデイの対応は人によって違いますので、必ず聞いておきましょう。
災害が起きたら
災害直後は、医療機関や薬局も機能が停止してしまいます。しばらくの間は自分だけでできる対応をしていく必要があります。
食事について
エネルギーの確保が最優先です。食事と水分は必要量をしっかり摂りましょう。
ゆっくり噛んで食べることで、急激な血糖値の上昇を防ぎ、満腹感を得ることができます。
特に炭水化物は重要なエネルギー源ですが、血糖値を上げる食べ物でもあります。時間をかけて食べ、タンパク質や野菜があればそちらを先に食べると良いでしょう。
また、カップラーメンのスープは全部飲まないなど、なるべく減塩を心がけ、野菜やきのこ、海藻といった食物繊維の多い食品があれば積極的に摂りましょう。
トイレを気にして水分を控えてしまうのも良くありません。
水分が不足すると血糖コントロールが難しくなります。ただし糖の多いジュースは飲みすぎると高血糖になりますので、甘くない飲み物を選びましょう。
逆に食事の量が多いと感じた場合には、気を使わずに残しましょう。必要な量だけを食べることが大切です。
薬の使用について
災害時には食事の量やタイミングがわかりにくいので、シックデイのルールに従って対処していきます。
この時、1型糖尿病患者さんは絶対にインスリン注射を中止してはいけません。
規則正しい食事ができるようになったらいつも通りの薬の量に戻していきます。
薬の保管・少なくなったら
インスリンを冷暗所に保管できない場合でも、直射日光のあたらない場所であればおよそ4週間もつとされています(詳しくは医師や薬剤師にご確認ください)。ただし、変色したり、浮遊物が生じたりしたものは使用してはいけません。
インスリンが残り3日分程度になったらかかりつけの病院や薬局に連絡するようにしましょう。
災害直後にインスリンを全く持っていない場合には、避難所の救護所や医療救護班、お近くの病院や薬局にお薬手帳を持って相談しに行きましょう。
それが無理そうであれば、避難所の管理担当者にお願いして、保健所に状況を伝えてもらいましょう。
注射針や血糖自己測定用の穿刺針は、感染症を引き起こす可能性があるため他人と共有してはいけません。
できる範囲で運動をする
災害時に配給される食事は炭水化物が多いため、食後には意識して身体を動かしましょう。また、同じ姿勢を長時間続けるとエコノミー症候群になりやすいです。散歩や屈伸運動など、軽い運動をすると良いでしょう。
ただし、重労働や過剰な運動は低血糖を招きますので注意が必要です。
怪我や感染症に注意
糖尿病の患者さんは免疫力が下がりやすいため、怪我や風邪が治りにくく重症化しやすい傾向があります。手洗い、歯磨き、うがいを徹底して感染症を防ぎ、怪我をした場合には放置せず早めに医療班や医療機関に相談しましょう。
血糖コントロールがうまくいかない時
災害後も治療を続ける必要がありますが、思うような管理ができないのが現実です。血糖測定ができない場合も含め、体調の変化には気を付けて、症状を感じたらある程度は自分で対処していきます。
高血糖の時
薬が足らない、ストレスといった要因で高血糖になってしまうことがあります。
高血糖で体調に変化が出た場合には、超速効型インスリンを少量注射し、様子をみて改善しなければ追加で再度少量打つという方法をとりましょう。
高血糖では、喉の渇き、尿の回数が増える、疲れやすいといった症状が出ます。
低血糖の時
食事量の少なさや重労働をしなくてはいけない状況で、低血糖を起こすことがあります。症状を感じたらブドウ糖や甘いものを補食として食べましょう。
低血糖では、眠気、脱力感、冷や汗、手足の震え、動悸、集中力の低下、落ち着かない、目のかすみ、頭痛といった症状が出ます。
いずれも重症化し、けいれん、昏睡まで行くと自分では対処できません。周囲の人に糖尿病であることを伝え、万が一の時には一刻も早く医療機関に運んでもらうようにしましょう。
まとめ
災害時には、いつも通りの血糖管理は難しくなってしまいます。医療機関もすぐには対応できないため、自分の力でできることをする必要があります。
ですが一人で全てを抱え込まず、周囲の人や医療班に糖尿病患者で毎日の治療が必要であることを伝えることも大切です。