漢方の中でもっとも身近なものとして葛根湯があげられます。
みなさんも漢方と言って一番に思い出すのは葛根湯ではないでしょうか?
葛根湯といえば風邪のひき始めに飲むといった方が多いと思いますが、実は風邪のひき始め以外にも色々な症状に効果があるのです。

そこで今回は「葛根湯」について詳しく見ていきたいと思います。

目次

「葛根湯」ってどんなお薬?

葛根湯は「かっこんとう」と読み、ドラッグストアにも顆粒、錠剤、ドリンク剤と様々な種類の葛根湯商品がおいてあります。

体を温めて熱や腫れ痛みを発散させるため、薬の作用を助けるように温かいお湯で服用していただくと効果的です。
風邪のひき始めの他にも肩こり頭痛などにも使われ、比較的体力のある方に用いられます。

葛根湯に含まれている生薬は以下の通りです。

  • 葛根(かっこん)
  • 麻黄(まおう)
  • 桂皮(けいひ)
  • 芍薬(しゃくやく)
  • 甘草(かんぞう)
  • 大棗(たいそう)
  • 生姜(しょうきょう)

「葛根湯」の効き目は?

マスク姿の女性-写真

それでは葛根湯の具体的な効き目についてみていきましょう。

風邪のひき始め

汗をかいていない場合で、風邪の初期症状であるぞくぞくとした悪寒発熱頭痛があり特に首筋や背中がこわばる(項背強急と言います)方によく効きます。

風邪の症状がでて3〜4日たってしまった後は葛根湯よりも小柴胡湯しょうさいことう)などを用いることがあるため、葛根湯は風邪のごく初期に服用することが大事です。

また風邪の中でも汗が出なくてゼイゼイとして、全身の筋肉痛を伴う場合では麻黄湯まおうとう

透明な鼻水が多く、サラサラした痰が絡むが主な症状である場合には小青竜湯しょうせいりゅうとう

胃腸が弱い方の場合は香蘇散こうそさん

を服用するなど、漢方では症状や体質に合わせて処方が異なりますので、一口に風邪といっても色々な種類があるため、全ての状況が葛根湯に合っているというわけではありません。

肩こり

葛根湯の中には体を温めたり、筋肉(特に上背部)をほぐし痛みを和らげる成分が入っているため、肩こりにも用いられます。

乳腺炎

意外と知られていないのが、この乳腺炎に対する効果です。
葛根には乳汁分泌を促進させる作用があります。昔は母乳を出すために葛粉で作った餅をよく食べたそうです。

授乳期はお薬を飲んでもいいのか悩んでしまう時期なので、乳腺炎になっても我慢するママも多いと思いますが、葛根湯であれば授乳中でも服用できるため、乳腺炎の症状である乳腺の詰まりによる痛みや熱など和らげてくれます。

またその他の炎症性疾患(結膜炎や扁桃炎、中耳炎など)や夜尿症・下痢などにも効果があるとされています。

「葛根湯」を服用する際に注意すべき人

妊婦

授乳婦が服用してもいいなら妊婦も服用できるのではと考えられる方もいらっしゃいますが、葛根湯の中にも胎児に影響を及ぼす可能性がある成分が含まれますので、基本的に使用は控えた方が良いと思われます。
漢方だから大丈夫というわけではなく漢方薬であっても妊娠中に飲むのを控えた方が良い薬もありますのでご注意下さい。

高血圧・心臓病・腎臓病・甲状腺機能障害を持っている方

葛根湯に入っている甘草(かんぞう)は下記のように血圧をあげてしまう恐れがあるため、高血圧の方は注意が必要です。

また麻黄(まおう)には交感神経刺激作用があり、心臓に負担をかけることがあるため、持病を持っている方は医師に相談してから服用した方が良いでしょう。

その他

葛根湯は発汗がなく、比較的体力のある方向けの漢方なので、葛根湯を使えない弱い体質の方は注意が必要です。

  • 体が衰弱している人
  • 胃腸が弱い人
  • 著しく発汗している人

詳しくは漢方医に相談していただいた方が良いのですが、つい服用してしまって”立ちくらみ”や”ショック”を起こして倒れてしまう方もいらっしゃるので、少なくとも上記の方は他の漢方を選びましょう。

「葛根湯」の副作用は?

漢方は様々な生薬を組み合わせるため、それぞれの毒性を抑えるような様々な成分が入っております。そのため西洋薬と比べると遥かに少ないですが、下記の様に少ないながらも存在します。

副作用としては葛根湯が飲めない弱い体質の場合は食欲不振、胃部不快感などがあらわれる場合があります。
また葛根湯の中には麻黄や甘草が入っているため

  • 発汗過多
  • 動悸、頻脈
  • 不眠
  • 血圧上昇

などが生じる恐れがあります。

重大な副作用

葛根湯の中に含まれる甘草により、以下のような重大な副作用をきたす恐れがあります。(風邪のようなごく短期間の服用では生じることは少ないのですが、長期にわたって服用される場合はご注意下さい。)

  • 偽アルドステロン症:カリウムの排泄を促進して血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が実際には分泌されていないのにも関わらず、甘草を服用することで分泌された時と同じような症状があらわれることを言います。その結果血圧が上がったり、低カリウム血症を生じる恐れがあり、具体的な症状としては
    しびれ・手足のだるさ・こわばり・こむら返り・筋肉痛・むくみ・脱力などがあげられます。また低カリウム血症がひどくなると心臓に負担をかけることもあります。

上記のような症状があらわれた場合には服用を中止して医師・薬剤師に相談してください。

まとめ

葛根湯は風邪の初期以外にも色々な症状に効果的であり、また子供や授乳婦も使用可能ということで、使いやすい漢方の一つです。

しかし使いやすいからこそ、どのような体質の方に使えるのか、また副作用は何なのかをしっかりと知ったうえで服用することが重要になります。

特に葛根湯の中に含まれている甘草や麻黄などは他の漢方にも含まれている場合もあり、重複して服用してしまうと副作用も起きやすくなります。

漢方だから副作用もなく安心というわけではないため、重複などを避けて正しく服用するようにしましょう。