性的な興奮をしていないにもかかわらず、勃起が何時間も収まらない場合があります。男性からすると、とても不安になるこの状態を持続勃起症といいます。持続勃起症の原因には2種類あり、一つはすぐに治療しなければ勃起障害が起こる危険なものもあります。今回は持続勃起症について詳しく紹介していきます。

目次

勃起が起こるメカニズム

性的な物事を想像したり、見聞きしたり、またパートナーの体を触ったりして得られる性的刺激は、脳の視床下部で処理されます。その後、仙髄(脊髄のお尻に近い部分)に存在する勃起中枢、さらに骨盤神経から骨盤神経叢(こつばんしんけいそう)、陰茎の組織(陰茎海綿体)にある神経に興奮が伝わります。すると陰茎海綿体に血液が流入し、静脈血が流れ出るのを止めることで勃起が完成します。

勃起時に陰茎を支える作用のある筋肉(坐骨海綿体筋)も、仙髄の勃起中枢から陰部神経へと伝えられて働きます。性器を直接刺激すると陰部神経によって勃起中枢が興奮し、反射性勃起を起こします。

持続勃起症とは

仕事現場で誇らしげに作業に臨む男性

持続勃起症は性的刺激に関係なく、陰茎海綿体に血液が充満したまま、勃起が4時間以上続いている状態です。6時間以上経過すると、海綿体が壊死(細胞が死ぬ)に陥る可能性があります。まれな病気ですが、すべての年齢の男性で起こり得ます。

持続勃起症は原因によって2つに分けられ、陰茎海綿体内の血流が停滞して虚血状態(血流が通わない状態)となる虚血性持続勃起症と、陰茎海綿体内の動脈から過剰に血液が流れ出て起こる非虚血(血流が途絶えていない)持続勃起症です。

尿道海綿体と亀頭は弛緩しているため勃起していても排尿は行えます。完全勃起の場合は排尿できません。

虚血性(静脈性)持続勃起症

陰茎海綿体から流出する静脈血が停滞してしまうと、動脈血の流入が途絶えてしまいます。このため勃起の持続が起こります。勃起は完全な状態(硬い状態)で痛みを伴います。血液の入れ替えができないために陰茎は低酸素状態に陥っています。

虚血性の場合は緊急治療が必要となり、早期に治療を行わないと陰茎の組織が壊死し、勃起障害となります。6時間虚血が続くと、壊死が起こるとされています。

白血病・鎌状赤血球性貧血などの血液疾患、骨盤内の悪性腫瘍による静脈の閉塞勃起不全(ED)治療で行われる陰茎海綿体への注射飲酒前立腺肥大症薬物治療が原因で起こります。日本では鎌状赤血球性貧血はあまりみられません。

治療は陰茎に針を刺し、陰茎内の血液外に逃がします。それでも収まらない場合は冷たい生理食塩水で患部を洗浄します。その後も勃起状態が続くようであれば海綿体に血管収縮薬を注入、効果がない場合は、陰茎海綿体と亀頭をつなぐシャント手術を行って血液を亀頭から逃がします。

虚血性持続勃起症を発症してから勃起障害が起きる確率は50%とされています(東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)より)。

非虚血性(動脈性)持続勃起症

陰茎海綿体の動脈が破れ、過剰な動脈血が流れ込んで血が増加することで起こります。静脈血の流出は妨げられないため、陰茎に酸素は通っている状態です。勃起時の痛みはなく、陰茎の壊死も起こりません勃起はしていても完全ではなく、柔らかい状態です。

陰茎や会陰部、骨盤の打撲や怪我によって、陰茎動脈が破れることで起こります。治療は受傷部位の圧迫やクーリングで自然に軽快することが多いのですが、長引く場合は血管塞栓術を行います。

血管を塞ぐ場合は勃起不全が後遺症として残る恐れがあります。

まとめ

陰茎への酸素が途絶える虚血性持続勃起症では、6時間経過すると陰茎の組織に壊死が起こり始めます。壊死が起きてしまうと勃起障害を発症するリスクがあります。陰部の痛みは場所が場所だけになかなか病院にも行きづらいかもしれませんが、痛みを伴う勃起が長時間収まらないときは、速やかに受診しましょう。