人間ドックなどによる腹部超音波検査の普及で胆嚢ポリープの発見率は受診者の5~10%(パーセント)と高まってきています(松戸市医師会より)。胆嚢ポリープとはどんな病気なのか、種類や治療などについて説明します。

目次

胆嚢ポリープとは

ポリープとは、粘膜の一部がイボのように盛り上がっている状態のものをいいます。胆嚢ポリープは、胆嚢の内側の粘膜の部分にできるイボのような隆起物のことをさし、イボの種類によって治療法が異なります。

胆嚢ポリープの種類と特徴

コレステロールポリープ

胆嚢ポリープの約90%がコレステロールポリープです(広島大学大学院より)。直径は数mm位のものが多く、10mmを超えることは稀です。多発することがしばしばあります。

良性であり、コレステロールポリープががんになることはありません。

炎症性ポリープ

主に胆石などの刺激により慢性の炎症が生じ、胆のう内側の上皮細胞が過剰に増殖したものをいいます。良性のポリープです(寿製薬株式会社|胆嚢ポリープより)。

病理形態により、以下のものがあります。

1.過形成性ポリープ

粘膜に炎症反応が生じることにより、皮細胞が増殖し、隆起した状態になったものです。

基本的には良性ですが、炎症が長期間続くと悪性化する可能性がありますので、腹部超音波検査による経過観察が必要です。

2.黄色肉芽腫性胆嚢炎

急性炎症が胆のう内に生じ、粘膜の破綻により壁内に肉芽腫(にくがしゅ)という病変を形成します。隆起性の病変を呈することが多く、胆のうがんとの鑑別が難しいことがあります。

腹部CT検査や超音波内視鏡、穿刺吸引細胞診などにより診断を下します。

腺腫性(せんしゅせい)ポリープ

先に述べた過形成性ポリープから移行する場合もありますが、はっきりとした原因は不明です。上皮細胞の増殖したものですが、良性の腫瘍です。ただし、前癌病変(放置するとがんになる可能性が高い状態)であることもありますので、定期的な検査が必要です。

胆嚢がん

5㎜程度の大きさでもがんの場合がありますので、油断はできません。定期的な経過観察中に、がんを疑う所見が認められれば、切除することを勧めます。

放置すると胆嚢壁に浸み込んでいき、肝臓をはじめとする他の臓器にも広がります。

胆嚢ポリープに症状はある?

ほとんどの胆嚢ポリープは無症状です。症状がないので、大部分は健診や人間ドッグの腹部超音波検査(腹部エコー)で発見されます。

ただし、人によっては胆嚢結石(胆嚢の中に石ができる病気)と似た症状、つまり脂っこい食事を食べた1~2時間後にお腹の右上が差し込むように痛むなどの症状が出る場合もあります。

胆嚢がんの場合、最初は無症状ですが、進行するにつれて食欲不振倦怠感が現れ、血液検査で肝機能異常を指摘されることがあります。よく風邪と間違われ、放置されることがあるので注意が必要です。

さらに進行すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)がみられます。また、みぞおちの右側にしこりや痛みを感じることもあります。

胆嚢ポリープを見つける検査

前述のとおり無症状であることが多いので、ほとんどの場合は健診などの腹部超音波で見つかります。

経過観察の目安として5mm以下の場合は1年ごと、6~10mmの場合は半年ごとに腹部超音波検査で大きさや形、血流のチェックを推奨します。

また精密検査としては、腹部CT腹部MRI(MRCP)、腫瘍マーカーであるCA19-9 やCEAの測定(血液検査)、超音波内視鏡検査の所見を総合して、がん化の有無を確認します。

※腫瘍マーカー:がん細胞の出すタンパク質を血液検査で調べます。CA19-9 やCEAを出すのは胆嚢がんの細胞だけではないので、あくまで補助的な検査です。

※超音波内視鏡検査:超音波検査装置のある内視鏡で、体の内部から超音波検査ができます。内視鏡検査では不可能な臓器の内部まで観察できます。
ただ、胃や大腸とは違い、見つけたポリープを内視鏡で取ることは胆嚢ではできません。

胆嚢がんの可能性が考えられる場合は、転移の有無を確認するためのPET-CT検査もあります。

胆嚢ポリープの治療

がんの可能性が無い場合は定期的に検査をし、特に治療はしません。

がんの可能性を考慮するポイントとして、腹部超音波検査で

  • ポリープの大きさが10mm以上
  • だんだん大きくなっている
  • ポリープの根元や茎の部分が太い
  • ポリープ内にドップラーエコーで血流が認められる

の4点があります。

がんの場合、あるいはがんが疑われる場合は胆嚢全体を摘出します。摘出手術には開腹手術腹腔鏡手術(お腹に小さい穴を開け、カメラや手術の道具をお腹に入れて、テレビ画面を見ながら手術します)との2種類があります。

両方にメリット、デメリットがあるので医師と相談して決めることになりますが、ポリープと判断して腹腔鏡手術を開始し、がんの浸潤や転移を確認した場合、開腹手術に切り替えることもあります。

まとめ

沈黙の臓器と言えば「肝臓」ですが、胆嚢ポリープも無症状で、基本的には健康診断で発見されることが多いです。

健診や人間ドッグで腹部超音波検査を受けられる機会があれば積極的に受診しましょう。