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胆嚢がんは、症状が出にくいため進行した状態で発見されることが多く、また有効な治療法が少ないこともあり、予後(治療成績)が悪いがんのひとつです。進行した胆嚢がんの患者さんでは、しばしば胆嚢だけではなく、胆管や肝臓の一部を含めて切除する拡大手術が必要になりますが、術後の再発・転移が多いのが問題となります。抗がん剤治療や放射線治療の効果も限定的です。

一方、早期(がんが胆のうの壁の粘膜から筋層までに留まり、リンパ節に転移がない時期)の胆嚢がんでは、胆嚢摘出術で完全に治る可能性があります。

したがって、胆嚢がんの危険因子を理解し、検査を受けるなど早期発見に繋げることが最も重要となります。ではどういう人が胆嚢がんになりやすいのでしょうか?今回は、気になる胆嚢がんの危険因子について解説します。

胆嚢がんとは

胆嚢は、肝臓で作られる胆汁(たんじゅう)という消化液が流れる胆管(たんかん)の途中にあり、胆汁を一時的に溜めて濃くする袋状の臓器です。この胆嚢にできる悪性の腫瘍を胆嚢がんといいます。

胆嚢がんは高齢(60~70歳代)の女性に多くみられ、日本を含むアジアに多く発生するとされます。

胆嚢がんは胆嚢の内側(粘膜)から発生しますが、容易に壁をつたって進行し、外側の膜(漿膜:しょうまく)や周囲の臓器に達することがあります。

また、胆嚢がんが進行すると、リンパ節に転移したり、腹膜に転移したり、あるいは遠くの臓器(肝臓、肺など)に転移することもあります。胆嚢がんを含む胆道がんの5年生存率(診断されてから5年間生存する患者さんの割合)は30%以下と低く、治療が難しいがんとして知られています。

胆嚢がんの危険因子

問診票

1.胆石症

胆嚢がんの患者さんが同時に胆石を持っている割合は高く(約60%)、胆石と胆嚢がんには深い関係があるとする報告があります。

特に、胆石症の患者さんのなかでも、

  • 石による痛みなどの症状がある場合
  • 胆石が大きい場合
  • 胆石の数が多い場合
  • 胆石と診断されてからの期間が長い場合

などは胆嚢がんになる可能性があるといわれています。

一方で、胆石を持っている人が胆嚢がんになる頻度は、胆石のない人に比べて高くないとする調査結果もあり、因果関係ははっきりと証明されていません。

したがって、胆石症があるからといって全員が胆嚢がんの危険が高まるわけではありませんが、胆石と診断されてからの期間が長い患者さん、胆嚢のなかに胆石が充満している患者さん、また胆嚢の壁が厚い患者さんでは胆嚢がんに注意し、少なくとも年に1~2回の超音波検査を受けることをおすすめします。

2.膵胆管合流異常(すいたんかんごうりゅういじょう)

通常、膵管(膵液の流れる管)と胆管(胆汁の流れる管)は十二指腸の壁の内で合流します。ところが、膵管と胆管が十二指腸の壁外で合流する「先天性の形成異常」があり、これを膵管胆道合流異常といいます。

正確な発生頻度は不明ですが、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)という膵管と胆管を同時に調べる検査を受けた約27,000例のうち、0.03%に膵胆管合流異常が認められたとの報告があります。

膵管胆道合流異常では、膵液と胆汁が相互に逆流し、消化液が活性化されて胆管や胆嚢の粘膜に炎症を引き起こします。このような持続的な炎症が、がん化の原因になると考えられています。

胆管拡張(胆管が異常に広がること)を伴うものは先天性胆道拡張症と呼ばれており、胆管がんの危険因子と考えられています。一方、胆管拡張を伴わない場合もあり、この場合には胆嚢がんの発生率が高くなることが分っています。

膵胆管合流異常は、胆管炎、胆石形成、閉塞性黄疸、急性膵炎などの様々な病態を引き起こすことがあり、腹痛の他、嘔吐、嘔気、発熱、黄疸、灰白色便、腹部腫瘤などの症状がでる場合があります。しかし、無症状なこともあり、ERCPなどの検査によって偶然に発見されることも多いです。

もし何かの検査で膵胆管合流異常と診断された場合、精密検査を受けていただくことをお勧めします。

3.胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープとは、胆嚢の内側にできる隆起性病変(盛り上がり)のことです。腹部超音波検査で見つかることが多く、5~10%に発見されると報告されています。

胆嚢ポリープの多くは良性ですが、なかには胆嚢がんのこともあり、注意が必要です。

胆嚢ポリープが10ミリ(1センチ)以上で、かつ繰り返しの画像検査で大きくなっている場合、または大きさにかかわらず広基性(ポリープの付け根がふといこと)の場合、胆嚢がんの頻度が高くなるといわれています。このような胆嚢ポリープに対しては、胆嚢摘出術が推奨されます

胆嚢がんの症状

ドクター

胆嚢がんは、早期には症状がほとんどありませんが、以下のような初期症状がみられる場合もあります。

  • 黄疸(皮膚や白眼の部分が黄色くなる症状)、かゆみ
  • 腹部不快感
  • 食欲不振
  • 嘔気

また、胆嚢がんが原因で胆嚢炎(胆嚢の炎症)を併発することもあり、この場合は腹痛(主に右上腹部や心窩部(みぞおち)の痛み)、発熱などの胆嚢炎の症状がみられます。

これらの症状がある場合、すみやかに専門の医療機関(できれば消化器内科のある総合病院など)の受診をおすすめします。

まとめ

胆嚢がんは進行した状態で見つかることが多いがんであり、治療の成績を高めるためには早期発見が不可欠です。胆嚢がんの危険因子には、胆石症(一部の患者さん)、膵胆管合流異常、胆嚢ポリープなどがあります。これらの病気(異常)と診断された場合には胆嚢がんの危険があるため、専門機関による経過観察や治療が必要と考えられます。