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腹痛の原因は様々ですが、その中でも軽視できないものの一つに「胆石」が原因で引き起こされる腹痛があります。苦しい症状を緩和するため、また、深刻な状態に陥らないために適切な医療機関の受診が求められます。ここでは、体の中で胆石が作られるメカニズムや、胆石に見られる特徴的な症状について見てみましょう。

胆石ができるメカニズム

胆汁の流れ

体の中の老廃物は「胆汁」という形に変えられて体外に排出されます。胆汁の排出路となるのが胆管や胆嚢です。胆汁の成分が石のように固まったものが胆石で、これが胆管や胆嚢を詰まらせてしまうことを胆石症といいます。胆石には大きく分けて次の2種類があります。

コレステロール胆石

コレステロールを主成分とし、胆嚢にできやすいのが特徴です。通常、コレステロールは胆汁の中に溶けた状態で存在しますが、胆汁のコレステロール濃度が高いとき、または、胆嚢の収縮機能が低下したときには凝固してコレステロール胆石となります。

色素胆石

色素胆石に分類される胆石には、「ビリルビンカルシウム石」「黒色石」があります。

ビリルビンカルシウム石とは、胆汁中に含まれる細菌の影響によって水に溶けにくいカルシウム塩が作られ、これが次第に大きくなっていったものです。胆汁中の細菌は衛生状態と関係しており、一般的に先進国には少なく、発展途上国に多いとされています。日本においても、昔はビリルビンカルシウム石が多く見られたものの、衛生状態が改善した現在では少なくなっているといいます。

黒色石については、まだ原因がよく分かっていません。

腹痛の原因は「胆石」かも?

胆石ができたからといって必ず症状が出るわけではありませんが、約半数の人に腹痛が現れるそうです。胆石ができる胆嚢という臓器は右の上腹部に位置していますが、痛みはしばしば胃の辺りに感じられます。そのため、胃の病気だと思って医療機関を受診し、超音波検査を受けたところ胆石が発見された、というケースも少なくありません。

胆石を原因とする腹痛は強い場合もあれば弱い場合もありますが、2~3時間経つと痛みが消えていくという特徴が見られます。腹部や胃のあたりだけでなく、ときには背中側や右肩に痛みが出ることもあります。

また、小さな結石が総胆管に落ち、そこで詰まってしまった場合にを総胆管結石といい、重篤な症状になることがあります。

総胆管結石では、緊急対応が求められることも

救急車

胆石ができた場合、急性胆嚢炎という病気を引き起こすことがあります。急性胆嚢炎の症状としては、突然発生して長く続く腹痛と発熱に加え、目や皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)がみられることがあります。中でも、腹痛・発熱・黄疸が同時にみられるときは、総胆管結石急性化膿性胆管炎閉塞性化膿性胆管炎が疑われます。

胆石が引き起こすこれらの病気は、胆石が詰まった胆管が炎症を起こした状態です。そのままにしておくと敗血症に至ることがあります。敗血症とは、体にできた炎症や傷に細菌が増殖し、血管を通じて全身に広がってしまう病気です。敗血症は、肺をはじめとする複数の臓器に障害が出る多臓器不全を引き起こすことがあります。

胆石の患者さんで腹痛・発熱・黄疸が見られた場合には、緊急治療が可能な医療機関を受診することが大切です。

胆石の患者さんが増えています

実は、現代日本では胆石症の患者さんが増えており、成人のおよそ8%が胆石を持っているといいます(広島大学大学院)。その理由は2つあり、1つ目は食生活の欧米化、もう1つは医療の進歩によって無症状の胆石・小さな胆石を発見できるようになったことです。

胆石を持っている人は、中年以降に多くみられます。特に女性は、男性の2倍多くみられるようです(広島大学大学院)。脂質の多い食生活が胆汁内のコレステロールの割合を増加させることになるので、食生活が乱れている人は見直してみると良いかもしれません。

まとめ

胆石が疑われる症状が現れたとき、それが胆石によるものなのかどうかは医療機関で検査を受けなければ分かりません。胆石には「コレステロール胆石」、「色素胆石」という異なる種類があり、どちらであるかによって治療方針も異なってきます。適切な診断が重要になります。特に、腹痛の他に、発熱や黄疸を伴う場合には「急性胆管炎」の可能性もあるので速やかに医療機関を受診してください。