近年、成人年齢が20歳から18歳へと引き下げられることが話題になっています。
2018年6月の民法改正により、国政選挙への投票権や国家資格取得の年齢制限にも影響が出ている中、「飲酒」と「喫煙」が可能になる年齢は、10代の青少年に与える影響の大きさを考慮して20歳で据え置かれる予定になっています。

飲酒や喫煙は青少年のからだに一体どのような影響を及ぼすのでしょうか?
中学校や高校の保健体育の授業などで学んだことはあるかもしれませんが、ここでは医学的な視点からより深くみてみたいと思います。

目次

なぜ10代の飲酒はいけないの?

10代の飲酒は様々な悪影響を及ぼします。

まず10代では、お酒に含まれるアルコールを分解する能力が成人と比較して劣っています。

アルコールは血液によって肝臓に運ばれ、ADH(アルコール脱水素酵素)MEOS(ミクロゾームエタノール酸化酵素)と呼ばれる酵素にてアセトアルデヒドに分解され、最終的にはALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)によって酢酸となります。

ALDHが生まれながら不足している人は、アルコールを分解しにくいため「お酒に弱い」ということになりますが、10代の子供たちも同様にALDHの活性が不充分であるとされています。
したがって、お酒に含まれるアルコールを効率的に分解できず、肝臓を始めとする臓器への負担が大きくなります。

また、10代の時期は抑えが利かずに大量の飲酒をしてしまうことも多いため、命に関わるような急性アルコール中毒を引き起こすリスクが高くなります。
実際に毎年、大学の新入生歓迎会などで急性アルコール中毒となるケースは多く報告されています。

なぜ10代の喫煙はいけないの?

飲酒と同様に喫煙も10代の健全な成長に悪影響を及ぼします。
喫煙者か禁煙者であるかに関わらず、煙草に含まれる「ニコチン」「タール」が体に悪いということはよく知られていますよね。では具体的にこれらの物質がどのように身体に悪影響を与えるのでしょうか?

ニコチンには血管を収縮させる作用があります。血管が収縮する結果、全身の血流が悪くなり、成長や発達、そして運動能力に大きな影響を及ぼします。
またニコチンには強い依存性(ヘロインやコカインなどの麻薬よりも強いとされています)があるため、禁煙を難しくしてしまいます。

さらに、タールは肺や気管支などにこびりつくことによってがんのリスクを高めます。特に肺がんのなかでも扁平上皮癌とよばれるタイプのがんのリスクを高めます。

10代と依存性

これは飲酒と喫煙の両方に言えることですが、両者ともに始める年齢が若ければ若いほど依存しやすいとされています。

これは、大量飲酒者や喫煙者を対象とした調査などでも明らかになっています。また、始める年齢が早いほど摂取量も多くなるため、結果的に有害物質の悪影響が蓄積しやすくなってしまいます。

まとめ

「未成年飲酒・喫煙は許されない」ということは大人たちが共有する常識でしょう。また、そのような常識を子どもたちに伝える機会は教育の現場でも積極的に持たれています。それにも関わらず、未成年飲酒・喫煙はなかなかなくなりません。

子供たちに未成年飲酒・喫煙の恐ろしさを説得力のある形で説明できるようにするためにも、それらの危険性を医学的視点から知っておくことは大切なのではないでしょうか。