睡眠時無呼吸症候群は、文字通り眠っている間に突然呼吸が止まってしまう病気です。心臓突然死の原因になったり、脳の病気になる恐れのあるものです。今回は睡眠時無呼吸症候群の検査や治療、予防法などについて、医師・篠塚 成順先生による監修記事で説明していきます。

目次

睡眠時無呼吸症候群の検査について

睡眠状態をチェックするエプワース睡眠尺度(ESS:Epworth Sleepiness Scale)の問診票や、症状から睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかを確認します。

睡眠時無呼吸症候群の可能性があれば、簡易検査やポリソムノグラフィ(PSG:polysomnography)検査が行われます。また合併症のチェックとして心電図や採血なども一緒に行われます。

ESS検査

  • 0点=ほとんど眠らない
  • 1点=たまに眠る
  • 2点=しばしば眠る
  • 3点=ほとんど眠る
座って読書中 0 1 2 3
テレビを見ている 0 1 2 3
人の大勢いる場所(会議や劇場など)で座っている時 0 1 2 3
他の人の運転する車に、休憩なしで1時間以上乗っている時 0 1 2 3
午後に、横になって休憩をとっている時 0 1 2 3
座って人と話している時 0 1 2 3
飲酒をせずに昼食後、静かに座っている時 0 1 2 3
自分で車を運転中に、渋滞や信号で数分間、止まっている時 0 1 2 3

国立病院機構 近畿中央胸部疾患センターの資料を参考にいしゃまち編集部が作成

検査結果の見方

  • 合計点が0点から5点まで:日中の眠気が少ない
  • 合計点が5点から10点:日中軽度の眠気がある
  • 合計点が11点以上:日中強い眠気がある 睡眠時無呼吸症候群の可能性あり

簡易型睡眠モニター検査

指先で血中の酸素濃度を測定するパルスオキシメータ、気流を測定するためのサーミスタ(温度センサ)圧力センサ、いびき音を測定するマイクなどを装着し、気道の狭窄の程度、無呼吸の有無を測定し、睡眠中の呼吸状態を検査します。

小型軽量かつ操作・装着が簡単なので自宅での検査が可能です。機器に記録されたデータを解析します。

ポリソムノグラフィー(PSG)検査

簡易型睡眠モニター検査に加えて脳波や筋電図・眼球の動きなどを測定することで、睡眠の深さや覚醒反応の有無などを呼吸状態と併せて検査します。

装着機器が多いため、入院のうえ検査します。こちらも機器に記録されたデータを解析します。

簡易検査、またはPSG検査で算出された「無呼吸・低呼吸指数」(Apnea-Hypopnea Index = AHI)で重症度が決められます。

5≦AHI<15  軽症
15≦AHI<30 中等症
30≦AHI    重症

睡眠時無呼吸症候群の治療について

睡眠時無呼吸症候群の治療-マウスピース-CPAP-図解
主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療について示します。軽症の場合は、生活習慣を改善する事で良くなる場合があります。肥満があれば減量の指示禁酒や禁煙寝る時の横向き指導などです。

生活習慣の改善だけで難しい場合は、マウスピース療法・経鼻的気道持続陽圧(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)療法外科手術などの治療が行われます。

マウスピース療法

軽症から中等症までの治療となります。

マウスピースによって下顎を前に引き出し、舌の後方にある空間を確保することで上気道を広げ、気道を塞がりにくくします。閉塞性SAS診断ののち、専門の歯科医との相談が必要です。

経鼻的気道持続陽圧(CPAP)療法

中等症から重症では現在、最も多く行われている治療方法です。

鼻マスクまたは鼻・口マスクを介して上気道内に陽圧をかけることで、気道が塞がることを防ぎ、無呼吸を取り除く方法です。無呼吸を改善することで低酸素状態になることも防げます。

簡易型睡眠モニター検査でAHI(無呼吸・低呼吸指数) 40以上、PSG検査でAHI 20以上で保険適応になります。

外科手術

外科的手術-写真
アデノイド(咽頭扁桃が増殖し肥大した状態)に対してはアデノイド切除術、扁桃の肥大を認める場合は扁桃摘出術を行い、上気道の容積を拡げます。また、舌の肥大などを認める際は、舌縮小術を行い舌の容積を小さくすることにより、上気道の容積を拡げます。これらの治療法は、小児には効果があると言われていますが、成人においては効果が一定ではありません。

成人で、口蓋垂(のどちんこ)が長い、のどの奥が狭いなどの場合は、のどを拡げる手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)で50%の患者さんに効果があったとされますが、効果が一時的で無呼吸が再発されてしまう方もいます。

睡眠時無呼吸症候群の予防方法

1.体重を減らす

肥満により首周り、喉に脂肪がつき気道が閉塞しやすくなります。またお腹周りの脂肪も呼吸の妨げになるため、減量が必要です。

肥満で、既に閉塞性SASと診断されている人はかなり(10kg以上)減量をしないと無呼吸の改善にはつながりませんので、まずは1kg でも落とすことを心掛けましょう。

2.飲酒の制限

アルコールは筋肉の緊張を緩めるため舌が落ち込み、気道が塞がりやすくなります。お酒を飲むといびきが大きくなる人は、飲む量と飲む時間(寝る前は避けましょう)を考え、できるなら禁酒するのが一番です。

3.禁煙

タバコを吸うと、喉が炎症を起こしやすくなり気道が狭くなる原因になります。ほかの病気の原因にもなるため禁煙しましょう。

4.睡眠薬精神安定剤の服用を控える

中枢神経系を抑制するベンゾジアゼピンなどの精神安定剤は、上気道の筋肉の緊張が緩むため服用を制限します。

5.横向きの体勢を取る

仰向けで寝ると舌が落ち込み気道を塞ぎます。そこで横向きに寝るようにすると無呼吸になる回数が減ります。仰向けで寝ることが多い人は、背中にテニスボールやバスタオルを丸めたものを縦に貼るなどすると強制的に横向きの体勢を取ることが出来ます。

まとめ

いびきは迷惑なもの、としか受け取られていないことが多いようです。ですが、睡眠時無呼吸症候群の症状かもしれません。そうであるなら、窒息しかかっているのと同じです。もし家族にいびきが大きい人がいたら検査を勧め、命に関わる重大な病気を引き起こす前に治療が受けられるようにしましょう。