日本人を対象にした調査では、5人に1人が睡眠に何らかの問題を抱えているといいます(厚生労働省より)。特に「眠れない」という症状に悩む人は歳を重ねるごとに増え、60歳以上の方では3人に1人 が問題を抱えているといいます。適切な睡眠時間やスタイルには年齢や性別による個人差に加え、季節や文化によっても差がありますが、ここでは「不眠症」に焦点を当て、その原因に迫ります。
不眠症の症状と診断基準をチェックしよう!
不眠症の症状は大きく3つに分類することができます。
- 寝付きが悪く、それが苦痛に感じる(入眠障害)
- 普段より2時間以上早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
- 眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
しかし、このような不眠の症状は誰しも1度は経験があるものかもしれません。次の日の仕事のことが気になったり、人間関係がうまくいかずに寝付きが悪かったりしたことはないでしょうか。通常、よく眠れない症状に悩まされる場合でも、数日から数週間経てばまた眠れるようになり、この場合には不眠症として病院に行く必要はありません。
不眠の症状が1ヶ月以上続き、日中の生活に支障をきたす場合に不眠症と診断されます。
日中の生活の質を下げる要因としては、上記の3つの症状に伴って、起きている時にも倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振などの症状が出てくることがあります。
不眠症の6つの原因
どうして不眠症になってしまうのでしょうか、考えられる原因を紹介します。
1.ストレス
ストレスと緊張は、眠りを妨げます。神経質で生真面目な性格の人は、ストレスを強く感じやすく不眠症になりやすいです。
2.からだの病気
以下の病気が、不眠の原因となることがあります。
- 頭痛・関節痛・腰痛などの痛み
- 心臓病・高血圧・狭心症・心筋梗塞など胸の苦しさ
- 呼吸器疾患(気管支炎・肺炎)・喘息などによる咳と呼吸困難
- 腎臓病・前立腺肥大・膀胱炎・過活動膀胱などによる頻尿
- 認知症・脳血管疾患・脳腫瘍など
- 感染症による発熱
- アレルギー疾患などのかゆみ
- 胃・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎などの消化器疾患による腹痛・下痢・嘔吐など
- 肝機能・糖尿病・甲状腺など内分泌・代謝疾患
- 睡眠時無呼吸症候群
- ムズムズ脚症候群(レストレスレッグス症候群)など、睡眠に伴う感覚の異常
上記の場合には、不眠の背後にある病気の治療が重要です。原因となっている症状が解決できれば、不眠も改善していきます。
3.こころの病気
精神疾患によっても、不眠の症状が出ることがあります。代表的なのは以下の病気です。
不眠は多くの精神疾患における基本的な症状で、特に気分障害や不安障害においてはその診断基準の1つにもなっています。
4.薬や刺激物
嗜好品(お酒・コーヒーやお茶・タバコ)などにはアルコール、カフェイン、ニコチンなどの不眠症になる原因の成分が含まれています。また、以下のような薬が原因で起こる不眠もあります。
また、抗ヒスタミン薬は、日中の眠気が出ることもあります。
5.生活リズムの乱れ
交代制勤務や時差による不規則な睡眠時間や不適切な睡眠環境は、不眠の原因となることがあります。
6.環境
騒音や光が気になって不眠になる場合です。寝室の温度や湿度を改善するだけで、不眠が快方に向かうこともあります。
不眠のメカニズム
我々は、毎日ほぼ同じ時間に眠りに入り、同じくらいの睡眠時間で目が覚めます。睡眠は、プロセスS(疲労蓄積)とプロセスC(体内時計)という2つのシステムで成り立ち、体内時計には「深部体温(脳の温度)」とメラトニンという「体内時計ホルモン」が関与しています。これらのバランスが崩れると、不眠症になってしまうのです。
深部体温は就寝する少し前から下がっていき、それと同時に強い眠気を感じることで眠りにつくことができます。就寝後も深部体温は下がり続け、午前2~3時に最下点に達し、その後、夜明け頃から体温が上がり始め身体が活動する準備をします。
詳しくは「睡眠不足解消!睡眠メカニズムに基づく4つの快眠方法」をご覧ください。
まとめ
日本人の平均の睡眠時間は7時間程度ですが、数時間で足りる人もいれば、10時間寝ても足りない人など個人差があります。不眠症は、「日中に不調が出る」ことが問題なので、睡眠時間が短いことや、目覚める回数にこだわりすぎないことが大切です。