「デュピュイトラン拘縮(こうしゅく)」という病名をご存じでしょうか?
あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、日本ではまだ認知度が高くないだけで、中高年の多くの方に見られる手の変形です。

この記事では、デュピュイトラン拘縮について説明します。

目次

デュピュイトラン拘縮って何?

手のひらから指にかけてしこりが数珠状にでき、皮膚がひきつれることでだんだんと指がまっすぐ伸ばせなくなる病気です。

この病名は、フランスの外科医Guillaume Dupuytrenの名前を冠しています。

デュピュイトラン拘縮の症状

初期は手のひらにマメのようなもの(結節)ができるところから始まります。進行すると拘縮索と呼ばれる、太い束のようなものに変化していき、指が少し曲がった状態になります。

拘縮索はコラーゲンが腱膜(線維性の組織のこと。手のひらでは各指に向かって扇状もしくは放射状に広がっており、皮膚の移動を防ぐことでものを握りやすくする働きがある。)などに沈着したもののため、腱が浮き上がっているように見えることもあります。さらに進行することで指が曲がったまま、伸ばせないようになってしまいます。

症状は薬指、小指に多い傾向が認められます。また、複数の指に症状が拡大するケースがあります。こういった病気の進行の速さは人によって違い、速度も一定ではありません

指が曲がる以外の症状でいうと、通常、痛みはほとんどありません。しかし、洗顔がしにくい、ボタンをとめづらい、手袋をはめにくい等、日常に支障をきたすことがあり、高齢者が転倒した際に手すりを掴めず骨折してしまうようなこともあります。

テーブルトップテスト

拘縮が起きているかどうかを調べる方法に、テーブルトップテストというものがあります。

平らなテーブルの上に手のひらを押し付けて、テーブルと手のひらがぴったりくっつかない場合には拘縮が起きている可能性があります。

原因は何?デュピュイトラン拘縮になりやすい人とは

デュピュイトラン拘縮の原因は詳しくわかっていませんが、長期のアルコール摂取と関係があると考えられています。

そのほか、高齢の男性、家族に同じ病歴がある方、手に外傷のある方に良く見られることがわかっています。北欧の人がなりやすく、日本人の罹患率は比較的少なめです。
糖尿病に合併することが多いとされ、抗てんかん薬との関係性も報告されています。

どんな治療をする?

自然には治らない病気ですので、指が伸ばせないことで日常生活に支障をきたしてきた際には治療をする必要があります。
酷くなると治療をしても元通りにできないことがあります。指の第2関節が曲がってきたら、できるだけ早めに治療を行う方が良いでしょう

現在、内服薬やリハビリテーションによって治す方法はなく、外科的手術のほか、注射によって治療する方法があります。

外科的手術による治療

皮膚を切開し、拘縮索になっている腱膜を切除する方法です。

注射による治療

最近日本でも承認された、新しい治療法です。
拘縮索にコラーゲンを分解する薬剤を注射し、拘縮を解消します。注射した翌日に医師の診察を受け、状態によっては指を伸ばすための処置を受ける必要があります。

注射による治療は専門的な講習を受けた手外科専門医にしか行えません。手外科専門医は下記のリンクから探すことができます。

日本手外科学会|手外科専門医名簿

また、デュピュイトラン拘縮は術後もリハビリが重要であり、再発することもあるため経過観察が大切です。

まとめ

デュピュイトラン拘縮は、実は多くの方が罹患している病気です。
手のひらにしこりがあり、指が曲がってきた場合にはこの病気かもしれません。

現在は比較的痛みも少ない注射による治療も承認されていますので、日常生活に支障をきたし始めた方はお早めに整形外科を受診することをおすすめします