手の指が太鼓のばちのように変形することを「ばち指」といいます。ばち指は特に原因がない場合もありますが、肺や心臓などに疾患があったときにみられることがあります。今回はばち指について、その原因や考えられる疾患を紹介していきます。

目次

ばち指とは

ばち指-図解

ばち指(撥指)は指先の結合組織が増殖し、爪自体や根元が盛り上がった状態です。正常な爪は、指を伸ばしたときに爪の付け根で一度くぼみますが、ばち指では1関節から爪の付け根、爪の先と追った時に指の背面が作る角度が180°を越えています。

痛みは伴いません。また、ばち指は通常単独ではなく、他の症状とともに現れます。このような変形が生じる原因はいまだ明らかになっていません。血小板由来成長因子(PDGF)などの物質が産生されて、結合組織の過形成をおこすという仮説などがあります。

ばち指で考えられる疾患

ばち指がみられたときは肺や心臓、消化器の疾患を考えます。何の病気も関係ない場合は心配いりません。

ばち指の症例写真-2
ばち指の症例写真-1ばち指の症状

肺疾患

肺がん

肺がんの初期には、特徴的な症状はありません。ただし初期症状は風邪に似ていることもありますので、咳が長引く場合には要注意です。このほか血痰や呼吸困難、胸発熱などがみられることもあります。進行すると、声がかれたり、食事が飲み込みにくくなったりすることもあります。COPD(慢性閉塞性肺疾患)のみでは、ばち指の頻度は低いと考えられており、「COPD患者にばち指を認めたら、肺がんの合併を疑う」という考え方もあります。

肺がんの原因として最も重要なものが喫煙です。このほか車の排ガスや工場の煙などの大気汚染物質、放射性物質、アスベストなども原因として考えられます。

間質性肺炎

肺の中で気管支や肺胞ではなく、これらを支える働きをしている部分を間質といいます。ここに起こる肺炎が間質性肺炎です。

間質に炎症が起こると、その修復のためにコラーゲンなどが蓄積して(線維化)肺胞の壁が厚く硬くなります。その結果、酸素と二酸化炭素のガス交換が行えなくなります。

間質性肺炎は初期症状が出ない場合もありますが、進行すると呼吸困難や咳が出てきます。

肺膿瘍

肺に感染が起こり肺胞などの構造が破壊されて、そこにできた空洞に膿が溜まる状態です。悪寒や高熱、咳、悪臭を伴う痰、血痰などがみられます。進行すると胸痛や呼吸困難、意識障害などがみられることもあります。

お酒をたくさん飲む人、糖尿病の人、免疫力が低下している人に起こりやすいです。

気管支拡張症

気管支は肺の中を分岐している空気の管です。細菌感染などで炎症を繰り返すと、気管支が壊れてしまいます。その範囲が広がると気管支拡張症となります。

壊れた気管支には菌が繁殖しやすく、気管支や肺をどんどん破壊してしまうため肺の機能が低下します。症状としては、咳や痰、繰り返す肺炎などがみられます。

心疾患

先天性心疾患

先天性心疾患は、生まれつき静脈や動脈が正しい位置になかったり、通常より狭かったりすることです。血液が正しく体を巡っていかないので、チアノーゼ無酸素発作呼吸困難心不全などがみられることがあります。

先天性心疾患のうち、ファロー四徴症、完全大血管転移症、総肺静脈還流異常症、アイゼンメンジャー症候群などが考えられます。

感染性心内膜炎

皮膚や口腔内の傷などをきっかけに細菌が血液中に入りこみ、心臓の内膜に感染症が生じたものです。

症状として疲労感や発熱、心拍数の上昇、体重減少、発汗、貧血などがみられます。症状は数週間から数カ月かけてゆっくりと進行していきます。

消化器疾患

肝硬変

肝炎ウイルス感染やアルコールなどが原因で肝臓が傷つくと、線維化が起きます。繊維化で肝臓は小さく固くなるため機能が低下していきます。

症状は疲労感や倦怠感、食欲低下、むくみ、かゆみなどです。この他、クモ状血管腫(首や胸の血管が拡張し、赤い斑点が現れる)、手掌紅斑(手のひらが赤くなる)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)もあります。

炎症性腸疾患

腸の粘膜に慢性炎症が生じる病気で、代表的なものとしてクローン病潰瘍性大腸炎があります。

クローン病は10~20代に多く、消化管であればどこにでも発生します。腹痛や下痢に加えて、口の中や肛門に炎症、潰瘍ができます。

潰瘍性大腸は20代に多いです。腹痛や下痢、粘血便などがみられます。また共通の症状として、体重減少や発熱、貧血などがみられることもあります。

まとめ

ばち指はそれ自体に痛みはありません。ただしその他に呼吸器や消化器に気になる症状が出た場合は、疾患が隠れている場合があります。また生まれつき心臓に問題があった場合にみられることもあります。

気になる人は病院を受診してみましょう。