新学期が始まると、学校で健診があります。身長や体重の他に、尿検査が行われます。尿検査で異常を指摘されたことはありませんか?そもそも、尿検査は何のために行っているのでしょうか。
ここでは、健診での尿検査(検尿)の目的や見つかる病気などについて解説します。お子さんの学校健診に際して、参考にしていただければと思います。
検尿の目的は「腎臓の病気の発見」
検尿は、日本では1974年から行われています。
検尿が開始された頃、学校を長期欠席する児童・生徒の中で最も多い理由が腎臓の病気でした。 また、腎臓の病気は症状がなく進行することも多く、見つかる頃にはかなり症状が進行しているということがあります。
こうした腎臓の病気は、早期発見することで早く治療したり、進行を遅らせたりすることができます。特に、子供の腎臓の病気の約半数は慢性に経過する(長期間にわたって続く)ので、早期からの治療や適切な生活管理が大切になります。
検尿はこうした腎臓の病気を早期に発見するために行われており、小学生・中学生・高校生の全学年、全員を対象にしています。
結果の見方と、検尿で分かること
検尿では、尿の中に 潜血(赤血球)・蛋白(タンパク)・糖 がないかどうかを検査します。尿中にどれも認めないのが正常な状態です。
下記のとおり、潜血は4段階、蛋白と糖は5段階で評価されます。
- 潜血:(-)/(±)/(1+)/(2+)/(3+)
- 蛋白と糖:(-)/(±)/(1+)/(2+)/(3+)/(4+)
(-) が正常な状態で、+の数が増えていくと排泄される量が多い状態を示しています。
(-)を陰性、(1+)以上を陽性といいます。
尿は腰のあたりにある左右の腎臓で作られます。作られた尿はその後、腎臓から出ている尿管を通り、膀胱へ貯まります。膀胱が収縮すると、尿は尿道を通って排泄されます。腎臓・尿管・膀胱・尿道をあわせて尿路と呼びます。
潜血が認められるのは、腎臓の病気ではもちろんですが、尿路の炎症や結石、外傷などでも認められます。
蛋白が検出される場合には、腎臓の病気を考える必要があります。しかし、これ以外にも、腎臓以外の尿路の炎症などでも起こりえます。また、発熱しているときや運動したあとなどには、正常な状態であっても 尿中の蛋白が見られることがあります。
尿中に糖が認められる場合には、糖尿病が疑われます。糖尿病では血液中の糖が多くなりすぎることで、正常であれば排泄されない糖が尿中に出てしまいます。他にも、甲状腺のホルモンの異常を起こす病気などでも見られることがあります。
「偽陽性」「偽陰性」が出る場合も
実際には潜血や蛋白が出ていなくても、さまざまなことが原因で偽陽性(実際には出ていないのに出ているという判定になること)あるいは 偽陰性(実際には出ているのに 出ていないという判定になること)があります。
これを防ぐために、正しい方法で採尿して検査に提出する必要があります。次の項では、正しく採尿を行う方法を改めて確認しましょう。
正しい採尿の仕方

検尿前夜から朝にかけてはビタミンCを多く含むジュースやお茶、果物を摂取するのは控えましょう。ビタミンCを多く含む食品を摂取した時の尿では潜血が偽陰性になることがあります。
また、検尿前日は夜間におよぶ激しい運動は避けるようにしましょう。
検査前夜は入浴し、陰部を清潔にしましょう。
そして、入眠前には排尿し、翌朝起きたら 朝一番の尿を採取します。その時に、出初めの尿は採取せず、途中の尿(中間尿)を採取するようにしましょう。
女子の児童・生徒では生理も結果に影響します。生理中および生理前後の3~4日は避けた方がいいとされています。
再検査・精査となった場合には
学校健診ではまず、1回目の検尿があります(一次検尿)。ここで糖を(+)以上認めた場合には、糖尿病かどうかを診断するための検査が必要になります。
潜血・蛋白が(±)以上みられた場合は、2回目の検尿を受けます(二次検尿)。自治体によって判断は異なりますが、二次検尿でも(±)以上の潜血や蛋白がみられた場合は、より詳しい検査が必要になります。
専門の医師による診察や別の検出方法による尿検査、どの程度潜血が含まれているかを顕微鏡で確認する検査(尿沈渣顕鏡法:にょうちんさけんきょうほう)に加えて、腎臓の機能などを確認するための血液検査や超音波検査なども必要になることがあります。
それらの結果から、腎臓などの病気があるのかを診断し、必要に応じて治療を開始します。また、学校や家庭での適切な活動の範囲を定め、その結果を学校へ通知します。
病気の可能性は?
これまでの学校検尿の結果から、尿検査において 蛋白陽性者の8% , 潜血陽性者の5% , 蛋白・潜血両方の陽性者の70%において、治療や管理を必要とする腎臓の病気があることが分かっています(九州学校腎臓病検診マニュアル 第4版 p.20より)。
潜血のみがみられる場合
学校検尿で最も多い異常(60~70%)は潜血のみがみられる場合です。
潜血のみの場合では問題となることは少ないです。家族に腎臓の病気がない場合では、5年以内に約半数で潜血は消失すると言われています。また、腎臓を濾過する膜が薄いなど、家族的な要因による所もあります。
しかし、潜血のみの場合でも、尿中に出ている赤血球の数が増えていないか、潜血と一緒に蛋白も出ていないか などを確認するために定期的に尿検査を受ける必要があります。
蛋白のみがみられる場合
蛋白のみがみられた場合でも問題となることは多くはありません。
病気ではなく体位による蛋白尿(起立性蛋白尿)や運動による蛋白尿(運動性蛋白尿)が多いです。このような影響を除外するために、検尿前日は激しい運動を控え、当日は起きたらすぐに排尿するようにしましょう。
蛋白のみの場合も、尿中に排泄されている量が増えていないかなどを確認するため、定期的な尿検査などが必要です。
潜血・蛋白の両方がみられる場合
潜血・蛋白ともにみられた場合、腎臓の病気の可能性があります。
この場合は、医師による診察、詳しい尿検査、血液検査、超音波検査などが必要となります。腎臓の病気は症状がないまま進行することも多いので、早期発見・早期治療が重要です。
まとめ
尿検査は症状がないまま進行することのある腎臓の病気を早期に見つけ出すための大切な検査です。検尿で異常を指摘されても問題ないことも多いですが、異常がないことを確認するためにも診察や検査を受ける必要があります。
診察や検査で病気が見つかった場合には早期に治療を開始できます。そのため、検尿で異常を指摘された場合には、忘れずに再検査を受けたり、医療機関を受診したりしましょう。