心電図検査は、普段医療機関を受診された時に受けることはないかもしれません。しかし、学校や会社での健診では受けたことがあるのではないでしょうか。この春、お子さんが学校健診で心電図検査を受ける、という保護者の方もいらっしゃることでしょう。
「異常なし」という結果を受け取ることが多い心電図検査ですが、ここでは学校で行われる心電図検査の目的と「引っ掛かった」ときにどうしたら良いのかを解説していきます。

目次

学校健診での心電図検査について

学校で行われる心電図検査は、学校保健安全法(施行規則)で定められています。

以前は、心電図について統一された方法などはありませんでした。しかし平成6年に規則が改正され、現在では小学校1年生、中学校1年生、高等学校1年生の全員に心電図検査を行うことが義務づけられています。

心電図検査の目的には、下記のようなものがあります。

  • これまでに判明していない心臓の病気の発見・早期診断
  • 心臓の病気を持つ児童・生徒へ適切な治療を促す
  • 心臓の病気を持つ児童・生徒に対して日常生活における適切な指導を行い、学校生活でのクラブ活動や体育のレベルの確認、健康的な生活を送ることができるようにサポートする
  • 突然死の予防
    など

心電図検査で何が分かる?

心臓では規則的な電気的刺激が起こり、それが心臓全体に伝わって収縮します。心臓が収縮すると、血液が心臓から全身へ送り出されます。

この電気的刺激の変化をグラフ状にしたものが心電図です。

心電図検査では、心臓が正常なリズムで動いているか、刺激が伝わる経路のどこかに異常がないか、刺激に反応して心臓の筋肉がきちんと収縮しているか、心臓の大きさに異常がないかなどが分かります。

リズムの異常

リズムの異常としては不整脈があります。

不整脈と言っても、さまざまな種類があります。リズムが速すぎる/遅すぎる、一定のリズムでなく変化する、リズムがとぶ(“脈がとぶ”)などの異常があります。

刺激が伝わる経路の異常

刺激が伝わる経路の異常には、心臓の左右への伝導が遅くなる・あるいは途切れてしまう左脚(さきゃく)/右脚(うきゃく)ブロック や 心臓の筋肉が肥大することで電気的な変化が生じる心肥大などがあります。

刺激に対する収縮の異常

刺激に対する収縮の異常はさまざまな原因で起こります。電解質のバランスの異常心臓をおおっている膜の炎症(心膜炎)などが原因となります。また、本来とは異なる経路で電気的刺激が伝わってしまうこともあります(副伝導路)。副伝導路があると、心臓の収縮がうまくできなくなることがあります。

 

健診の心電図検査でこれらの何らかの異常がある場合には、詳しい診察や別の検査が必要になります。

再検査・精査が必要となった場合には

健診には、まず調査票による検査や診察、心電図などを行う一次検診があります。これが学校健診にあたります。

この一次検診で何らかの異常が指摘された場合には、専門の医師による診察、心電図の再検査や別の検査による精密検査を行う二次検診を受けることになります。

学校健診(一次検診)で再検査・精密検査が必要と指摘された場合には、小児科あるいは循環器内科を受診することが必要です。

この場合、診察や一般的な心電図検査だけではなく、下記のような検査が必要になることがあるので、大きな医療機関の受診が必要になります。

  • レントゲン検査:心臓の大きさを確認するための検査です。
  • 超音波検査:心臓の動きや形態異常、心臓弁膜の狭窄逆流の有無を確認します。
  • 運動負荷心電図:走るなど、心臓に負荷をかけてとる心電図検査です。
  • ホルター心電図検査:小型の心電図検査機器を装着し、24時間の心電図を取ります。

また、心臓の血管に影響のでることのある川崎病などにかかったことのある子では、現時点の状態をきちんと評価した上で、適切な運動や生活での制限区分(指導区分)を定めることが必要です。

中学生までであれば小児科、高校生以上であれば循環器内科の受診をおすすめしますが、どの医療機関を受診したらいいのか分からない場合にはかかりつけ医で相談すると良いでしょう。

病気の可能性は?

ハートを持った男の子

学校で行われる心電図検査(一次検診)は、何らかの異常がある可能性をもれなく見つけ出すことを目的としています。

そのため、一次検診で再検査・精密検査が必要とされた場合でも必ず病気があるというわけではありません。専門医による問診や診察、心電図の再検査やその他の検査の結果、「異常なし」「問題なし」となることも多くあります。

しかし、本当に病気があるのか・ないのかは詳しい診察・検査を受けないことには分かりません。症状のない、あるいはたまに動悸がするくらいの、症状の軽い不整脈などはよくあります。そうしたものの中には、突然死につながるようなものも含まれます。

そのため、心電図に限らず、学校健診で何らかの指摘を受けた場合にはきちんと医療機関を受診するようにしましょう。

まとめ

学校健診で身長や体重を気にされることは多いと思いますが、心電図はいかがでしょうか。異常がなければ問題ないですが、再検査・精密検査が必要と指摘されたことはありませんか。

心電図検査は病気の可能性を見つけ出すための大切な検査です。何か異常を指摘された場合には、専門の医師の診察や詳しい検査を受けるようにしましょう。