心臓の雑音と聞くと何か異常があるのではないか、心臓の病気ではないか、と心配になるものです。心臓の雑音はなぜ起こるのでしょうか?病気として治療が必要なものでしょうか?今回は、こうした心臓の雑音について解説します。

目次

心臓の雑音に気付く?自覚症状はない

心臓の雑音は、胸の痛みや息苦しさのように自覚することはありません。痛みや息苦しさとして自覚するものの多くは、心臓の血管の異常(狭心症心筋梗塞)や不整脈によるものです。

では、心臓の雑音はどのようにして気づくのでしょうか?

健康診断や集団検診で発見されることが多い

心臓の雑音は医師による胸部の聴診によって発見されることがほとんどです。

風邪などで体調を崩して病院を受診した際に、肺、気管支などの呼吸器系の異常の確認のほか、全身的な異常の確認の目的で聴診は行われます。また、会社の健康診断などで聴診が行われた際に偶然発見されることがあります。

乳幼児の場合は、乳幼児健診で、就学期の子供の場合は、学校で行われる心臓検診で発見されることも多くあります。

学校心臓検診について

学校保健法に基づいて、小学校、中学校、高校の各1年生の全員に対し心電図検査を含む集団検診が行われています。

1次検査は学校で行われ、事前に保護者が回答した調査票による健康状態の確認と心電図検査学校医による聴診が行われます。

この1次検査で異常ありと判定された場合、集団2次検診が指定の日時、場所で行われ専門医の診察とさらに詳しい検査(心臓エコー、胸部レントゲン撮影など)が行われます。

この学校心臓検診において心臓の雑音が発見されるケースが非常に多いのですが、学校で行われる1次検診は短時間で多数の子供の聴診が行われ、聴診には不向きな環境下であることを加えると、病的な心臓の雑音であるか、無害性のものかの厳密な判断は難しいです。

心臓の雑音の原因

小学生たち

無害性心雑音(機能性心雑音)

学校心臓検診などの集団検診において発見される心臓の雑音の多くは、病的な異常を伴わない無害性心雑音と言われています。

医師は聴診により雑音の質を聞き分け、他の検査所見(心電図や心臓エコー検査)や症状、発育や成長の状態をみて病的な原因の有無を判断します。

器質性心雑音

心臓の雑音が心臓の何らかの異常によって起こっているものを器質性心雑音といい、多くは、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)が原因とされています。

心房中隔欠損症

通常左右の心房は心房中隔という壁で区切られていますが、心房中隔欠損症はこの心房中隔に穴が開いている病気です。

この穴を通じて酸素を多く含んだ血液が左心房から右心房に流入することによって、全身に送られる動脈血の酸素が不足する異常を来たします。
しかし、この穴が小さい場合はほとんど症状がなく、集団検診で心臓の雑音があることによって発見される場合があります。

心室中隔欠損症

心室も左右が心室中隔という壁で区切られており、この壁に先天的に穴が開いており、血流の異常を来す病気です。心房中隔欠損症と同様、穴が小さな場合は心雑音のほかは症状はないことがほとんどです。

このような先天性の心臓病の診断は、聴診だけではなく、心電図や心臓のエコーの検査によって総合的に行われます。

症状が重篤であればその発見も早く、乳幼児期に軽症であったものが、小児期や成人になって突然重症化することはありません。

心臓弁膜症

成人の場合も治療を必要としない軽度の先天性の心臓病があると、聴診を受けたときに心臓に雑音があると言われることがあります。

これとは別に、後天的に発症した心臓弁膜症によって心臓の雑音が聞かれることがあります。

心臓には僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁、大動脈弁の4つ弁があり、この弁の開閉によって一方向への血流が維持されています。弁の開きが悪くなり血液の逆流や停滞が起こる病気を総称して、心臓弁膜症といいます。

心臓に雑音があると言われたら

健康診断や集団検診で心臓に雑音があると言われたら、まずは病的なものか、無害性のものか医師の見解を確認しましょう。

病気が疑われる場合は、心電図や心臓のエコー検査により病気の診断がなされ、必要であれば治療となります。しかし、乳幼児や小児の場合は発育成長による変化も認められるため、しばらく経過観察を勧められることもあります。

心臓の雑音の原因が病的なものでなかったり、すぐに治療を必要するものでなければ、学校生活や就業も問題なく通常通り行えます。経過観察を勧められた場合は、定期健診の頻度や注意すべき症状を医師に確認しておきましょう。

まとめ

心臓の雑音はその多くが病的な異常を伴わないものとされています。しかし、なかには病的な異常によるものもあり、専門医による判断が必要です。

精密検査を勧められた場合は、必ず検査を受け、病的な異常がないか確認しておきましょう。