「大人の発達障害」と診断されたら、誰でも不安に思うことでしょう。しかし、その症状は、適切な治療とサポートで改善することができます。発達障害は生まれながらの特性であり、生きづらさや困難もありますが、適切な処置によって世界的に活躍している著名人も数多くいます。ここでは、大人の発達障害の治療やサポート、制度についてまとめてみました。発達障害がどのようなものかについては、「自覚症状のない、大人の発達障害とは」の記事をご覧ください。

目次

大人の発達障害の治療について

大人の発達障害を専門に扱う医療機関はまだ少数ですが、昭和大学烏山病院や清和病院など、大人の発達障害外来を設置している病院もあります。また、精神科・心療内科などで大人の発達障害についての治療を行っている場合もあります。

具体的な治療としては、薬物療法、生活療法、環境調整などがあります。

薬物療法

発達障害そのものを薬物によって治療することは困難ですが、薬を使うことによって、うつ症状などの二次的な精神症状を軽減することが可能です。

なお、ADHDについては治療薬があります。以下で説明する他の治療法の効果や周囲との状況から判断し、必要であれば薬を用いた治療を行います。

生活療法

生活療法ではデイケアがあります。そこでは、障害について理解を深めることを目的とした心理教育や、コミュニケーションの向上を目的としたSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)などが行われています。

地域の発達障害者支援センターが、自閉症スペクトラム障害者を対象にしたグループ活動を行っていることがあります。

環境調整

環境調整とは、発達障害の人が使いやすい物を用意したり、分かりやすい表現を使うなどして、本人が落ち着いて生活したり、作業できる環境を整えることです。家庭、学校や職場など、周囲の協力のもとに行います。

例えば、書くことや計算が苦手な人のためにパソコンや電卓などの機器を用意したり、暗黙のルールを感じ取ることが難しい人のために、ルールをきちんと説明したり、文章化する(図や絵を取り入れる)ことなどが挙げられます。また、混乱してしまったときに、一人で落ち着ける時間と場所を用意したり、困ったときに相談に乗ってくれる人を決めておくのもよいでしょう。

大人の発達障害の方への就労支援

大人の発達障害_職業訓練

大人の発達障害の方が仕事に就くことができるように、行政による様々な就労支援があります。具体的には、以下のとおりです。

  • ハローワーク(公共職業安定所):仕事の相談に乗ってくれたり、職業を紹介してくれる。
  • 地域障害者就業センター:職業評価、職業相談、職業準備支援、職場適応援助などの専門的な職業リハビリテーションを行う。
  • 障害者就業・生活支援センター:就業とそれに伴う日常生活上の支援を一体的に実施している。
  • 障害者職業能力開発校:職業に就くために必要な能力を習得する機会を提供してくれる。原則的にハローワークに求職申込みを行っている障害者が対象。

その他にも、就労移行支援・就労継続支援の指定障害福祉サービス事業所では、障害者に生産活動などの活動の機会を提供し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等を提供しています。

「障害者手帳」は大人の発達障害でも申請可能

「精神障害者保健福祉手帳」は、大人の発達障害の方でも申請することができます。手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられおり、NHK受信料の減免や、所得税・住民税の控除など、様々な優遇があります。精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級から3級まであります。

手帳の交付を受けるためには、診断がついてから6か月以上経過していることが必要になりますので、主治医と相談するようにしましょう。

詳しくは、厚生労働省のサイト(厚生労働省|精神障害者保健福祉手帳)にてご確認ください。

まとめ

大人の発達障害については、まだ専門の医療機関も多くはありませんが、治療の方法もいくつかあり、受けられるサポートも増えてきています。「人間関係をよくしたい」という場合はSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を受ける、「きちんと生活したい」「仕事をスムーズにこなしたい」という場合は障害者就業・生活支援センターを活用するなど、目的に合わせて治療やサポートを組み合わせ、症状の改善に取り組んでいきましょう。