熱性けいれんを起こした子供を見ると、早く何とかしなくては!と思うことでしょう。でも、少し冷静になってください。救急車を呼ばなくてはいけない状態は、実はそんなに多くはないのです。

もし子供が熱性けいれんを起こしても、対処法を知っていれば焦らないで対応できますよね。ここでは熱性けいれんの対処法について、医師・武井 智昭先生による監修記事で紹介していきます。

目次

熱性けいれんの対処法は?

熱性けいれんは、だいたい5分以内で治まる場合が多いです。また、数分で治まるけいれんの場合は、脳に後遺症を残したり、命の危険があったりするものは少ないです。

まずは、以下の応急処置を取ってください。慌てず、落ち着いて対処しましょう。

  • 首の周りなどを締め付けないよう、衣服を緩める
  • 平らなところに寝かせる
  • 嘔吐が見られる場合は、顔を左に向けて吐いた物が気道に詰まらないようにする
  • 口や鼻の周りの吐物を拭き取る
  • 診察時に備えて、けいれんの様子(左右差)や持続時間、体温などを確認しておく

してはいけないこと

  • 大声で名前を呼んだり、身体を揺すったりする(刺激となり、けいれんが長引く場合があります)
  • 舌を噛まないように口の中に物を入れる(熱性けいれんで舌を噛むことはほとんどありません。また、噛む力はかなり強いため、2次損傷の恐れがあります)

熱性けいれんでは激しい症状が出ます。そのため、すぐに救急車を呼びたくなるのは仕方がないことです。ですが、症状の多くは2,3分で治まります。救急車が到着した頃には、ケロッとしていて何事もなかったようになっていることが多いので、まずはしばらく様子をみましょう。

ただし、救急車を呼ばなければいけない時もあります。発作が5分以上続く、また発作が治まっても意識の戻りや顔色が悪いなどが目安です。どういった時に救急車を呼ばなければいけないか、また早めに受診させるべきかについては、下図をご参照ください。

熱性けいれんの治療法は?

熱けいれんの対処法-図解

単純型熱性けいれんなのか、複合型熱性けいれんなのかで、治療の対応が変わってきます。単純型や複合型については「子供に見られる熱性けいれんってどんな症状?」をご覧ください。

単純型熱性けいれんの場合

けいれんが繰り返されていないか意識障害が起こってこないか、しばらく様子を見ます。それでも何も起こらなかった場合は、治療を行う必要はありません。

複合型熱性けいれんの場合

病院に到着した時にけいれんが続いている場合は、けいれんを抑える注射など、けいれんを止めることを第一目的とした治療が行われます。

けいれんが起きた原因が何かの病気によるものでないかを検査します。

  • 血液検査:低血糖や電解質異常などが起きていないか
  • 脳のCTやMRI:脳出血や脳腫瘍などがないか
  • 髄液検査:髄膜炎や脳炎になっていないか

それでも長時間(30分以上)けいれんが治まらない場合・意識レベルの低下があれば、大学病院やこども医療センターなどの3次医療機関への搬送・加療となります。

検査をしてもけいれんを起こす病気がなかった場合で、複合型熱性けいれんが過去に2~3回以上起きている時は、抗けいれん剤の座薬(ダイアップ)が処方されます。この薬は、家で熱が高くなった時に頓服として使うよう指示が出ます。また、複合型熱性けいれんが起きた時にダイアップを使用しても効果がなかった場合は、抗けいれん剤が持続で投与されます。

熱性けいれん後の日常生活は?

単純型の熱性けいれんの場合、けいれんの発作は1回限りで、その後起こらないことが大半です。そのため、日常生活で特別に注意するべきことはありません。ですが、何回か複合型の熱性けいれんを起こしたことがある場合、医師から処方された、けいれんを予防する座薬(ダイアップ)をいつでも使えるようにし、外出時には持って出かけると安心です。

熱が出た時に解熱剤を使うと、薬の効果が切れた時にけいれんを起こす場合があります。座薬を予防で使い、解熱剤は控えた方が良いでしょう。加えて、第一世代の抗ヒスタミン剤(ポララミン、ペリアクチン)やテオフィリン(テオドール)でけいれんが誘発される場合があるので、風邪や鼻炎などでは市販薬は使わず、病院を受診するとよいでしょう

また、熱が高くなる感染症で予防接種があるものは受けるようにしましょう。ただし、けいれんが起きてから3ヶ月は間を開ける必要があります。

まとめ

熱性けいれんは、周りの大人が落ち着いて対応することが必要な病気です。慌てて間違った対応をすると、子供を余計に苦しませることになってしまうかもしれません。1回きりで終わる子供さんの方が圧倒的に多いのですから、「大丈夫」と思って落ち着いて対応してくださいね。