食物依存性運動誘発アナフィラキシーをご存知ですか?たいへん珍しいアレルギー症状ではあるものの、場合によっては命にかかわることもあり、学童期のお子さんなどは特に注意が必要です。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの概要について解説します。

目次

食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは?

食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、ある特定の食品を食べる後に運動をすることによって引き起こされるアナフィラキシーです。

アナフィラキシーはアレルギー反応のひとつであり、他のアレルギーの症状と比べて症状が急激にあらわれます。

アレルギー反応は、アレルギーの原因となるアレルゲンとの接触をきかっけに症状が起こりますが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの場合は、食事と運動の2つの要因により引き起こされます。そのため、特定の食べ物を食べたあとだけ、もしくは運動をしただけでは症状が現れないのも特徴です。

10〜20代で初めての症状が出ることが多く、小学校で給食後にある体育の授業や放課後の部活動などで発症がみられることもあります。

アレルゲンとなる食品

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの第一の原因は、特定の食物を摂取することです。

原因となる食物で最も多いのは小麦で60%以上を占めるとされています。その他にも、エビやカニなどの甲殻類、果物、魚、大豆など様々な食物が原因となります(島根大学医学部皮膚科より)。

そして、もう一つの原因は運動です。食後早期に比較的激しい運動を行うことで発症しやすいとされています。しかし、散歩などの軽めの運動でも発症することもあります。

また、入浴や飲酒、NSAIDsと呼ばれる痛みや炎症などを抑える薬の服用でも発症することがあります。

主な症状

全身に蕁麻疹やむくみといった皮膚の症状が見られます。また、せきや呼吸が難しくなる、胸が苦しくなるといった呼吸器症状がみられることもあります。

また、血圧が低下してまめいや失神といったショック症状が起こることもあり、早急に対応を行う必要があります。

アナフィラキシーを疑ったら…対処法

1.まずは運動を中止し、安静に

運動により蕁麻疹などの症状が出現した場合は、直ちに運動を中止して安静にする必要があります。その後、必ず医療機関を受診しましょう。

2.薬がある場合は服用を

アレルギーに対して使用する薬を処方されている場合は服用します。

ショック症状がある場合は、アドレナリンと呼ばれる薬を注射して使用することがあります。アドレナリンは心臓の働きを強めることで、血圧の上昇や気管支を広げる効果があるため、ショック症状の改善に有効です。

注射は自分で行うように処方されますが、自分で行うことができない場合は、周囲にいる人が使用する必要があります。

3.こんな場合には119番

以下のような場合には、アナフィラキシーの可能性が高いので、速やかに救急車を呼びましょう。

  • 運動の前に、小麦などの原因となりうる食品を摂取している場合
  • 蕁麻疹・むくみといった皮膚の症状に加え、呼吸の苦しさ・嘔吐・腹痛・腹痛などが見られる場合
  • 過去にアレルギー症状の経験がある場合

再発予防について

給食を食べる小学生

すでに初発症状を経験している場合には、再発を予防する対策をとりましょう。以下に具体的な予防法を紹介します。

  1. 運動の前に原因となる食物を食べないこと
  2. 食後数時間は運動を実施しないこと(4時間程度が原則)
  3. 皮膚の違和感を感じた場合は運動をすぐに中止すること

これらの予防法や発症時の対応などは本人や家族だけでなく、学校などで対応を行う必要がある先生もしっかり把握しておく必要があります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーが発症したことがある場合は、そのことを学校などに伝え、対応方法を検討していくことが重要です。

まとめ

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、皮膚の症状だけでなく、ショック症状を引き起こす場合があります。原因となる食物をしっかり把握し、運動のタイミングなどを考えることが必要になります。そのため、気になる症状がある場合は、アレルギー科のある専門の病院でしっかりと診察を行うことをおすすめします。