4本の記事にわたり、「障がい者の性の健康」についてさまざまなテーマを扱ってきました。最後に、執筆者の岩室紳也先生より読者の方、そして様々な対策を打ち立てる立場にいる方に向けてメッセージです。(いしゃまち編集部)

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「ダメ。ゼッタイ。」は、だめ、絶対

様々な性のトラブルにどう向き合うべきか。マスコミを含め、今の日本社会はすべて「正論」で、「個人」を断罪して終わりにしています。もちろん「ダメ。ゼッタイ。」という、薬物対策で繰り返し使われているこの言葉は「正論」です。しかし残念ながら、そもそも何故「ダメ。ゼッタイ。」ということをわかっていながら、違法薬物を使う人がいるのか、これを考えないまま「ダメ。ゼッタイ。」といい続けている人が多いのが、今の日本です。

敢えて不適切な言葉で、薬物を使っている人たちのことを責めたいと思います。「君たちはバカか?」と。彼らが、彼女たちがなぜ薬物にはまり、薬物依存症になるのでしょうか。熊谷晋一郎先生の言葉がわかりやすく説明してくださっています。

『自立は依存先を増やすこと。希望は絶望を分かち合うこと』

仲間が、依存先がいっぱいある人は薬物に依存しません。同じく、仲間が、依存先がいっぱいある人は性のトラブルに巻き込まれません。しかし、仲間が、依存先が少ない人は、薬物に、セックスに依存しても不思議ではありません。

絶望を感じたり、辛いことがあったりしたとき、そのことを分かち合える仲間がいれば、次なる希望が生まれてきます。しかし、「ダメ。ゼッタイ。」と切り捨てられたら、次なる希望は生まれません。

障がい者の方々は、障がい故に残念ながら仲間を、依存先を増やすことが難しい現実があります。だからこそ、ご本人に対する支援はもちろんのこと、「障がい」を本人のみならず周囲も意識しない環境整備こそが急がば回れの目標になります。

難しいことですが、ぜひ、一人ひとりの経験を分かち合いつつ、ノーマライゼーションという言葉がいらない、Sexual Health and Rightsが保証される社会づくりをみんなで進められたらと思っています。