世界中でみられる感染症の一つ、アメーバ赤痢。日本では爆発的な流行は見られないものの、年々感染者が増えていることをご存知でしょうか。

環境衛生の整っている日本では、アメーバ赤痢は主に男性間で感染する性感染症として知られています。本記事では、アメーバ赤痢とはどんな病気か、予防対策も含めて解説します。

目次

アメーバ赤痢ってどんな病気?

アメーバ赤痢は、赤痢アメバと呼ばれる原虫(単細胞の微生物)によって生じる感染症です。

赤痢アメ−バに感染すると、2~3週間の潜伏期間(症状の出ない期間)を経て、感染した人の5〜10%に症状が出ます。なお、この潜伏期間は数日のこともあれば、数ヶ月から数年に及ぶこともあり、かなりの幅が見られます。

多くの場合、粘血便(粘液と血液とが混じった便)、下痢、しぶり腹(便が出ないのに便意をもよおす状態)、腹痛などといった症状がみられます。これらの症状は、数日から数週間の間隔で良くなったり悪くなったりを繰り返します。

無症状のこともあるが、重症化すると死に至ることも

赤痢アメーバに感染した人の多くは、特に症状が出ることはありません。中には感染していることに気づかない人もいます。この場合、感染者は体内に原虫を保ったまま(保虫者)となり、便の中に排出されるシストによって感染を拡大させてしまうリスクがあるのです。

「シスト」は嚢子ともいい、一時的に厚い膜をかぶって休眠している状態です。原虫にとって住みやすい環境になると目を覚まします。

一方、大腸以外に赤痢アメーバが侵入した場合、肝膿瘍(肝臓に膿がたまる)などを起こします。全身に症状が生じると、死に至る場合もあります。

「赤痢」とは違う病気?

一般的に「赤痢」と言った場合に指すのは、赤痢菌が原因となる「細菌性赤痢」という病気です。

細菌性赤痢は、特に衛生環境の整っていない途上国を中心に見られる病気です。細菌に汚染された食品や水、手指などが感染源となります。経口感染が主です。

しかし、アメーバ赤痢の感染は環境衛生の整った先進国でもみられます。日本では、男性同性愛者の間で性感染症として流行しているのです。

アメーバ赤痢になりやすい人はいるの?

アメーバ赤痢が最も多くみられるのは、発展途上国です。衛生環境の整っていない途上国では、赤痢アメーバに汚染された水や野菜、果実、肉などを食べることで感染する恐れがあります。

また、日本国内での感染は、男性の同性間性的接触を持った方に多くみられています。特に、肛門と口とが接触するような行為を行った場合に感染するため、注意が必要です(糞口感染)。

アメーバ赤痢の治療法は?

アメーバ赤痢は、採血や、便などの顕微鏡検査で診断します。大腸炎、肝膿瘍のいずれの場合も、第一選択薬として用いられるのはメトロニダゾール(抗原虫剤・真菌剤)です。

アメーバ赤痢の診断がつけば治療は難しくありませんが、症状から他の大腸疾患と区別することは困難なので、感染原因に心当たりがある場合は医師に必ずそのことを伝えてください。

また、アメーバ赤痢は性交渉によって感染する病気です。そのため、パートナーも同時に治療を受けるようにしましょう。

アメーバ赤痢にならないための予防法とは?

手をつなぐ男性

アメーバ赤痢に対するワクチンはありません。一般的な手洗いうがいに加え、下記の予防法策を徹底してください。

発展途上国で注意すべきこと

途上国では、水や氷、生の食品(肉、野菜、果物)などからアメーバ赤痢に感染する可能性があります。肉や野菜は、十分に加熱調理されたものを食べるようにしてください。

野菜や果物の場合、洗うときに使った水が汚染されていると、その野菜・果物自体も汚染されてしまいます。カットフルーツなどにも十分に注意が必要です。

また、生水を飲むのは避け、一度沸騰させた水やミネラルウォーター(瓶入りのもの)を飲むようにしてください。

男性同性愛者の方が注意すべきこと

男性同士の性的接触は、妊娠の可能性がないことからコンドームを用いずに行いがちです。

しかしコンドームの着用は、性感染症を予防する上では非常に重要です。アメーバ赤痢だけでなく、他の性感染症を予防するためにも、必ずコンドームを使用するようにしてください。

まとめ

アメーバ赤痢では、粘血便やしぶり腹など、大腸がんや内痔核でも見られる症状が出ます。そのため、「発展途上国から帰国した」「その地域から来た人との接触があった」などの情報を医師に伝えなければ、発見が遅れてしまう場合があります。

軽い症状で済むことも多いアメーバ赤痢ですが、放っておくと全身に病変を引き起こしたり、知らぬ間に他の人に感染させてしまったりすることがあります。心当たりのある方は、早めに医師に相談することをおすすめします。