海外でいきなり腹痛が起きた場合、衛生環境の悪い屋台の水や食事を摂ったことなどが原因として考えられます。適切な治療を受けないと死亡してしまうケースもあるので注意が必要です。またかかった場合は医師を通じて保健所に届ける必要があるなど、行政を巻き込む可能性があります。

今回は海外でも特に熱帯、亜熱帯地域で腹痛を起こしやすい感染症について紹介するので、旅行予定がある人は一読して対策を考えてみてください。

目次

飲食から感染する病気

飲食から感染する原因は衛生環境の悪さです。発展途上国では上下水道が整備されていない国が多いため、生活排水や家畜の糞尿で汚染された水が川などの生活用水に混ざることがあります。また感染症に対する予防や教育が行き届いていないなど、感染症が拡散する環境も影響します。

赤痢

赤痢患者、もしくは赤痢菌保有者の便や便に汚染された手、食品、水、ハエが直接、間接的に口の中に入って感染します。潜伏期間は1~3日間で倦怠感、寒気を伴う急激な発熱、水溶性の下痢が現れます。さらに発熱から1~2日続いて腹痛、しぶり腹(便意はあるけれど出ない状態)、粘血便がでます。

ニューキノロン系の抗生物質がよく効き、5日間服薬して改善していきます。予防ワクチンはありません。

腸チフスパラチフス

赤痢と同様、患者や保有者の糞便に汚染された食品などを直接、間接的に口にすると感染します。生水、氷、衛生環境の悪い屋台での飲食には注意が必要です。7~14日の潜伏期間を経て発症します。39℃を超える高熱が1週間以上続き、赤い発疹(バラ疹)、下痢、腹痛があらわれます。

症状が進行すると腸出血などを引き起こすほか、意識障害や難聴など重症化する場合もあります。感染しても無症状、つまりキャリアになる人も存在し、胆嚢(たんのう)に菌を保有する状態になります。その場合は適切な治療が施されないと胆石や胆嚢炎を合併する可能性が高くなります。

フルオキノロン系の抗生物質や第三世代セファロスポリン系注射剤などで治療していきます。流行国への滞在が長ければ長いほど感染する率は高くなるため、旅行者は予防効果は100%ではありませんが、ワクチン接種が推奨されています。

コレラ

コレラ菌に汚染された食品、水を口にすることで感染します。無症状かもしくは軽い胃腸炎の人が多いですが、重症化すると1~2日の潜伏期間後に米のとぎ汁のような水溶性の激しい下痢がおこります。

1日に5~10リットルの下痢と激しい嘔吐を伴う為に脱水への注意が必要で、他の症状には皮膚の弾力低下、粘膜の乾きや口の渇きがあります。

治療の基本は脱水予防であり、こまめに経口による水分補給、必要であれば点滴による静脈輸液が死亡リスクを下げます。重症の場合は抗生物質も服用して治療期間を短縮します。予防するためには手洗いはもちろん、ワクチンを接種しましょう。

虫さされから感染する病気

生い茂った場所-写真

マラリア

熱帯、亜熱帯地方の蚊(ハマダラカ)に刺されるで感染します。ヒトの体内に入り込んだマラリア原虫は肝臓の中で増え、1~2週間後に血液中に出てきます。さらにマラリア原虫は赤血球に入り込んで増え、その赤血球を壊して他の赤血球に入り込みます。1~2週間後(潜伏期間にはばらつきがあります)に高熱と倦怠感、頭痛、腹痛、嘔吐が現れます。

マラリアには熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵型マラリア、サルマラリアの5種類があり、種類によって発熱の症状が変わってきます。詳しくは「旅行中の発熱に要注意!マラリアの4つの初期症状と予防法」をご参照ください。

熱帯熱マラリアは重症度が格段に高く、嘔吐や発熱(発汗)による脱水から腎不全やショックをおこします。また赤血球破壊による貧血、破壊された赤血球が腎臓の細い血管に詰まり腎機能障害も起きます。

マラリア原虫の寄生している赤血球は血管壁にくっつきやすい特徴があります。その結果脳の細い血管に詰まり、脳性マラリアなど合併症を起こして死亡した例が多く報告されています。

マラリアは防蚊剤を塗るなど対策を万全にし、抗マラリア薬を服用して予防します。発症した場合は早期の治療が有効なので、マラリアの流行国で熱が出た場合は感染を疑って病院を受診しましょう。

接触して感染する病気

エボラウイルス病(エボラ出血熱)

エボラウイルスによる急性熱疾患をエボラウイルス病(エボラ出血熱といいます。感染した人や動物の血液、分泌物、臓器、その他の体液に触れることで感染していきます。また患者が触れて汚染された環境を介して間接的に感染するケースもあります。空気感染はしません。

潜伏期は2 〜21 日で、最初に高熱、頭痛、筋肉痛、咽喉炎などが起こります。次に嘔吐、下痢、腹痛、発疹、多臓器不全がみられます。致死率は高いため、注意が必要です。まずは感染の可能性のある国には旅行しないことが重要で、もし流行国を訪れた場合は感染が疑われる人との接触は一切避けてください。

感染後に抗体ができれば回復しますが、現在のところワクチンおよび治療薬はありません

まとめ

感染を防ぐためには、渡航先の国でどんな感染症が流行しているか把握する必要があります。外務省のページに医療情報、厚生労働省検疫所のページに感染症の情報が掲載されているので、情報を入手してください。またワクチンが効く場合は接種する、こまめな手洗いや生水(氷も含む)、加熱不十分の食品を口にしないなどの基本的な対策も忘れないでください。