アレルギーの症状の出方は人によってさまざまですが、場合によっては命に関わることがあります。喉の奥が腫れて呼吸困難に陥ったり、不整脈やショックが起こったりなど、アナフィラキシーショックを起こした場合には、一刻も早い処置が必要です。

エピペンはそんな時に命を救う、まさに命綱となる薬です。ここでは、エピペンとはどんなものか、エピペンの使い方などについてお話ししたいと思います。

目次

アナフィラキシーとは

エピペンの話をする前に、アナフィラキシーとは何かを確認しておきましょう。
アナフィラキシーは、アレルゲン(アレルギーの原因)などが体内に侵入することによって起こる、命の危険を伴う過敏反応のことです。全身の複数の臓器にさまざまな症状が表れます。血圧低下や意識障害を伴う場合は、アナフィラキシーショックと呼ばれ、死に至ることもあります。

アナフィラキシーになったことのある子供の割合は、小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.3となっており、食物アレルギーによるアナフィラキシーの死亡率は10万人あたり3.25人(0~19歳まで)です。

アナフィラキシーが多く見られる誘因としては、食物、昆虫(ハチやアリ)の毒、薬剤などが挙げられます(アナフィラキシーガイドラインより)。

エピペンとは

エピペンは、アナフィラキシーがあらわれた時に使用する薬で、医療者でなくても使えるペン型の自己注射薬です。

アナフィラキシーの症状が出た際には、一刻も早いアドレナリン薬液の注射が必要となります。持ち運びやすい大きさで、もしもの際にその場で注射ができるエピペンは、アナフィラキシーの危険性がある方にとっては非常に重要な薬です。

エピペンは、血圧を上げる、気管支を拡げる、粘膜のむくみを改善するなどの効果を持ち、アナフィラキシーの症状の進行を緩和してショックを防ぐことができます。

アレルギーを治す薬ではないので、注射後は必ず医師の診察が必要になります。また、エピペンは登録された医師からの処方でないと購入できないため、必要と思われる方は医師に相談しましょう。

エピペンを打つべき症状

エピペンが処方されている方でアナフィラキシーショックを疑う場合、下記の症状が1つでもあらわれたらできるだけ早くエピペンを注射し、救急車を呼びましょう。

  • 繰り返す嘔吐
  • 持続する強い(がまんできない)お腹の痛み
  • のどや胸の締め付け感、声のかすれ、犬が吠えるような咳
  • 持続する強い咳込み、ぜーぜーする呼吸、呼吸困難
  • 唇や爪が青白い
  • 脈が触れにくい・不規則
  • 尿や便失禁
  • 意識が朦朧としている、ぐったりしている

アナフィラキシーが起こったらどうする?

アナフィラキシーの症状がみられたら、まずは原因とみられる物を取り除きます。口の中に残っている食べ物を取り除いたり、虫の毒針が刺さっていれば可能な範囲で抜いてあげたりといった対応を取ってください。ただし、蜂の毒針は無理に除こうとするとかえって押し込んでしまうこともあるので、その場合はすぐに近くの医療機関へ連れていくようにしましょう。

その上で、太ももの前外側にエピペンを注射します(お尻や腕には絶対に注射しないでください)。針がきちんと太ももに刺さるよう、向きや持ち方には十分気をつけましょう。

エピペンは、基本的には本人が自分で打つものです。しかし本人が打つことができないときは、保護者や教職員、保育士などが注射を行います。その際には、投与部位をしっかりと押さえ、注射する部位がずれないようにしてください。なお、緊急時には衣服の上から打っても構いません。

また、エピペンは治療手段ではなく、あくまで応急処置です。使用後は、必ず医師の診察を受けるようにしてください。

打ち方は、必ず事前に確認しておこう

エピペンの打ち方は、パッケージに記載されています。

そのほか、製薬株式会社が使用方法の動画やガイドブック、練習用トレーナーなどを用意しています。エピペンを使う可能性がある方が周囲にいる場合、緊急時に備えて使用法を事前に把握しておくと良いでしょう。

「迷ったら打つ」と認識して

意識を失ってしまうなど、患者さん本人がエピペンを注射することができない場合は、周囲の関係者が注射を行うことが可能です。とはいえ、「本当にエピペンが必要な状態なのだろうか」「注射を打っても大丈夫だろうか」と心配になる方も多いと思います。

エピペンの主成分であるアドレナリンは、もともと体内で分泌されているホルモンです。緊張時にドキドキと鼓動の高鳴りを感じると思いますが、その現象を起こしているのがアドレナリンです。したがって、誤ってエピペンを打った場合、ほてりや動悸といった症状は起こるものの、15分程度でもとの状態に戻ります。

誤射した場合も医療機関を受診する必要はありますが、誤射よりも、打たないことで生命に危険が生じるリスクの方がずっと大きいです。打つのが遅れたことで死亡に至った例もあるので、エピペンは、「迷ったら打つ」べきものだと心得てください。

まとめ

アナフィラキシーは命の危険を伴う状態です。食物によるアナフィラキシーの場合、心停止までわずか30分との報告もあるように、一刻も早い処置が必要です。

その場ですぐに投与できるエピペンは、アナフィラキシーの危険性が高い人にとっては命綱となります。もしものときにはすぐに対処できるよう、エピペンの使い方はしっかり覚えておきましょう。

またエピペンは、保護者や学校・保育園の職員など、本人以外の方も使えるようにしておく必要があります。エピペンを使うことで、アナフィラキシーの症状を抑えることが期待できますが、症状を抑えるだけなので、エピペン使用後は必ず医師の診察を受けるようにしましょう。