胃下垂になると、たくさん食べても太らない…と羨ましく思っている方がいるかもしれませんが、一概にそうはいえません。胃下垂だけでは、病気とはなりませんが、いろんな症状で悩む人はいます。なぜ痩せの大食いに胃下垂が多いのか、また胃下垂とはそもそもどういう症状なのかを解説します。
胃下垂とは?
胃下垂は、胃の下部が垂れ下がっている状態です。胃の上部は普通の人と一緒ですが、胃の下部がみぞおちではなく、骨盤の上部を結ぶヤコビー線という場所より下まで落ちたものを言います。胃下垂は胸辺りから腰あたりまで胃があるということになります。
症状を訴えても、内視鏡などの検査をすると何も異常がありません。でも治療を行うためには病名を付ける必要があります。そこで以前は、胃アトニ―(胃無力症)とともに神経性胃腸炎や慢性胃腸炎という病名がつけられていました。
この神経性胃腸炎や慢性胃腸炎は、2013年より国際疾病分類により機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)と統一されています。
この症状が起こると胃の動きが悪くなるため、食べ物の消化が悪くなります。いわゆる胃下垂の人がたくさん食べても太らないといわれるのは、消化がうまくできず栄養が吸収できないためです。
胃の働きと胃下垂で症状が出る原因

胃は、食べ物が入ってくると一旦大きく膨らみ食物を溜めこみます。そして胃酸を分泌しながら消化していきます。胃の蠕動運動には、自律神経や消化ホルモン、食べ物の成分などが複雑に絡んでいます。
胃下垂だけでは、全く無症状である場合があります。ですがストレスなどから自律神経のバランスが崩れ、胃の蠕動運動が低下したり、胃を保護する分泌物が減ったり、胃が膨らんで食べ物を貯める機能が低下したりすると、症状が出てきます。
胃が下がってしまうことで起こる症状
- お腹の不快感
- お腹の張り
- 胃もたれ
- 悪心
- 食欲不振
- 肩こり
- めまい
- 倦怠感
胃下垂になる原因はまだはっきりわかっていません。身体がほっそりとして痩せている体型に合わせて、胃の形もそうなっているのではないかともいわれています。痩せているから胃下垂という胃の形になっているのです。
胃下垂の原因になる、機能性胃腸症の症状は?
機能性胃腸症の症状には、食後に起こる食後愁訴症候群と、上腹部に痛みを感じる心窩部(みぞおち)痛症候群に分けられます。
食後愁訴症候群
- 腹部膨満感(お腹が張る)
- 食後に下腹部が膨れる
- 胃がもたれる
- 食欲不振
- 胃のむかつきや不快感
- 吐き気が続く
心窩部痛症候群
- みぞおちの痛み
- みぞおちの灼熱感
この他、便秘と下痢を繰り返したり、倦怠感や肩こり、背部痛などを訴える人がいます。ストレスから起こることが多いため、不安や抑うつ、睡眠不足などがみられる時もあります。
まとめ
胃下垂になれば食べても太らないと勘違いをして、胃下垂になりたい人が多いようです。しかし、胃下垂では胃の機能が弱まってしまうことも多いので、「胃下垂になりたい」という願いは実態に即したものではないといえます。また、健康診断などで胃下垂といわれた方で、生活に支障のある症状が出ている方は機能性胃腸症という病気も考えられますので、消化器内科で相談してみると良いでしょう。