ピロリ菌?少し可愛い名前でしょうか。しかし、実際は慢性胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になる注意するべき菌なのです。50代以上の日本人の多くが感染しているといわれており、メディアでも取り上げられています。ピロリ菌とはいったいどのような菌なのか解説します。

目次

ピロリ菌とは?

ピロリ菌の正式名称は、ヘリコバクター・ピロリ菌です。ピロリ菌は、細菌の一種で胃の中に生息しています。

もともと、胃は強力な胃酸の影響で菌は存在しないと考えられていました。しかし1983年、オーストラリアでロビン・ウォレン博士とバリー・マーシャル博士がピロリ菌の培養に成功しました。当初はピロリ菌と胃炎・胃がんの発生には関連性がないとされていましたが、バリー・マーシャル博士は自らピロリ菌を飲んで胃炎が発症することを証明しました。2005年には「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃炎、胃・十二指腸潰瘍における役割の解明」という功績に対して、発見者の2人にノーベル医学生理学賞が授与されています。

現在ではピロリ菌の研究が進み、慢性胃炎、胃潰瘍十二指腸潰瘍の原因の一つとなることや、胃がんとの関連性についても報告されています。

ピロリ菌はどのように感染するのか

親子

感染経路については十分に解明されていませんが、衛生状態が悪い途上国などで水による感染が報告されています。日本でも、井戸水を飲用する機会が多かった50歳以上の世代では約70%の人が感染しているといわれています。現在では、日本において水から感染する可能性はほとんどありません。

親しい人から感染する可能性があり、親が感染していると子どもの感染率が高くなるといわれています。親しい人からの感染といっても、キスや通常の接触で感染することはありません。免疫機能が十分に発達していない幼児期に感染しやすく、大人になってからの感染はほとんど心配することがありません。

ピロリ菌にかかるとどのような症状が出るのか

ピロリ菌に感染した場合、慢性萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍などを起こすことがあります。胃・十二指腸潰瘍は、ストレスなどピロリ菌以外の原因でも起こるといわれています。しかし、ピロリ菌の感染者では発症の危険性がより高くなります。さらに、ピロリ菌がいる場合、潰瘍が治っても1年後には再発する患者さんが多いのです。

また、胃がんとの関係についても報告があります。胃がんの発症率では、12年間の追跡調査で、ピロリ菌の感染者は年齢とともに発症率が高くなっていくのに対して、感染していない人は胃がんの発症は見られなかったといわれています。

このように、ピロリ菌は胃において様々な病気を引き起こす原因になってしまうのです。

まとめ

ピロリ菌とは、正式名称がヘリコバクター・ピロリ菌です。日本では、上下水道が未発達で井戸水を飲む機会が多かった50歳以上の人に感染が多くなっています。ピロリ菌に感染すると慢性萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんにかかることがあります。特に50代以上の人にとっては、ピロリ菌に感染していないかという自分の胃の状態を把握していくことは大切です。