強迫性障害という病気を知っていますか?「鍵をかけ忘れたかも」―外出した後、ふとそんな不安を抱いて確かめに戻ることは、誰しも経験があることです。しかし、強迫性障害の場合はその度合いが過剰であり、生活に支障が出るほど強いのが特徴です。細かいことが気になって仕方がない・・・それは強迫性障害かもしれません。ここではその症状と原因についてまとめました。

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強迫性障害ってどんな病気?

強迫性障害とは、OCD(Obsessive Compulsive Disorder)とも呼ばれ、強迫観念強迫行為を特徴とする精神疾患です。強迫観念とは、不合理だと分かっていても、頭から振り払うことができない考えのことです。また、強迫行為とは、強迫観念から生まれた不安にかきたてられた行為です。それが無意味であったり、やりすぎだとわかっていても止めることができません。

例えば、トイレに行く度に汚れが気になって長時間手を洗わないと気が済まない、鍵をかけたか気になって何度も家に戻って確認する、などが挙げられます。

この病気の真理は、一言であらわせば「わかっちゃいるけど、やめられない」ということです。病気の本人も、自分でやっていることがおかしいという感覚があり、そのことで心身共に疲弊しています。しかし、その行為をしないと、不安や恐怖が増して耐えられないため、自分で行動をコントロールすることが非常に難しいのです。

映画が好きな方は、ジャック・ニコルソン主演の映画「恋愛小説家」でジャック・ニコルソンが演じた主人公メルヴィンや、「アビエイター」でレオナルド・ディカプリオが演じたヒューズなどをイメージしていただけると分かりやすいかもしれません。

強迫性障害の症状とは?

強迫性障害の症状は、強迫観念(頭から離れない考え)と強迫行為(強迫観念を振り払うための行為)が結びつき、様々な形で現れます。いずれの症状も、単なる潔癖やこだわり、縁起かつぎといった程度のものではなく、強い不安や恐怖に突き動かされた、繰り返される行き過ぎた行為が特徴です。以下に代表的な症状を挙げます。

汚染の心配と洗浄

強迫性障害の症状として最も多く見られるのが、汚染の心配と洗浄です。汚れや細菌汚染の恐怖から、必要以上に手洗い、入浴、洗濯を繰り返します。帰宅後に必ずシャワーを浴びて、服をすべて着替えないと気が済まない、トイレの後に長時間手を洗う、ドアノブや手すりなどを不潔と感じて触れない、などの症状があります。

確認行為

確認行為も、強迫性障害によくみられる症状です。家の鍵をかけたか、ガスの元栓を閉めたか、電気器具のスイッチを消したか等、必要以上に確認しようとします。そのため、何度も家に戻ったり、出かけるのに時間がかかったりします。

加害不安自分への危害不安

加害不安は、「誰かに危害を加えたかもしれない」という不安がこころを離れない症状です。そのため、新聞やテレビに報道されていないか執拗に確認したり、警察や周囲の人に聞いてまわる、現場に何度も行って確認する等の行為が見られます。

また、自分への危害不安は、そばにナイフがあるなど、ふとしたきっかけで自分に危害が及ぶのではないかと不安になる症状です。

儀式行為

儀式行為は、ものごとを進めるにあたって、ある決まった手順を踏まないと恐ろしいことが起こると思い込み、どんなに急いでいる時でも同じ手順で仕事や家事をしようとする症状です。人前では儀式行為を悟られないように隠していることもあります。

その他

上記の他に、特定の数字を不吉または幸運だと感じて必要以上にこだわる「数字へのこだわり」や、物や形の配置が左右対称でないと気がすまない「対称性へのこだわり」、物を失う恐怖に駆られて不要な物まで過剰にため込んでしまう「強迫的ため込み」など、様々な症状があります。

強迫性障害の原因は?

強迫性障害の原因については、今のところ正確にはわかっていません。しかし、仕事や対人関係、妊娠や出産などの大きなストレスが、強迫性障害を発症するリスクを上げることが分かっています。

また、身近な親族に強迫性障害の患者がいる場合、病気の発症率が高いという報告があり、何らかの家族性や遺伝的な要因が、強迫性障害の発症にかかわっている可能性が指摘されています。しかし、成長する過程で加わった環境など様々な要因も影響しており、原因の特定には至っていません。

さらに、最近の研究から、強迫性障害の発症は、脳内の神経伝達物質で精神安定作用のあるセロトニンの代謝に関係があるということがわかってきました。また、脳の画像研究から、大脳の前頭葉皮質から基底核、視床への回路の機能異常が関係している可能性も指摘されており、研究が進められています。

強迫性障害かも?と思ったら

強迫性障害の症状が軽い場合は、何とか日常生活を送ることができます。しかし、症状が重くなると、確認や洗浄などの強迫行為にかなりの時間がとられるなど、日常生活に重大な支障が出るようになります。そのため、引きこもりになったり、うつ病を併発するケースも多く見られます。また、同居している家族や友人などが強迫行為に付き合わされることもあり、本人だけでなく周囲にも深刻な影響を及ぼすことがあります。

最近では、強迫性障害の治療法も大きく進歩し、薬物療法認知行動療法など、適切な治療によって症状を大幅に改善できるようになりました。心あたりがある場合は、早めに精神科心療内科など、専門医の診断を受けるようにしましょう。

まとめ

強迫性障害の症状は様々ですが、ある考えがもたらす不安(強迫観念)を解消するために過度に繰り返される行為(強迫行為)が特徴になります。原因はまだ明らかではありませんが、適切な治療によって回復することが可能です。強迫性障害かも?と思ったら、できるだけ症状が軽いうちに、専門医による治療を受けることをお勧めします。