過呼吸は、短い時間に「浅い呼吸」を「くり返し早く」行うことで起こりやすくなります。体内に酸素が増えすぎて、血液中の二酸化炭素の濃度が極端に低下し、息が苦しくなり、動悸・めまい・手足の痺れなどの症状が出ます。急な発作に動揺し、パニックになることがあります。発作は時間が経つと鎮まり、命に関わることはありません。正しい処置を知っておきましょう。

目次

発作は自然に治まる「慌てないこと」が大事

過呼吸による発作は、酸素を吸いすぎたことにより、血液中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、極端に「二酸化炭素の濃度」が低下したことで起こります。胸が苦しく、呼吸がしづらいことから、「酸素が足りない」と本人は認識しますが、不足しているのは二酸化炭素です。

二酸化炭素が不足しているので、体は一旦呼吸を停止しようとしますが、意識は「息苦しい」と感じて必死に呼吸をしようとします。体内で起こっていることと、本人の意識でズレが生じて喉の奥が引きつるような症状が現れ、混乱します。そのうえ、視界は狭まり、頭痛・めまい・耳鳴り・全身のけいれんが現れると、冷静さを失い、パニックに陥ることがあります。

しかし、「息が吸えない感覚」に襲われているだけで、実際に酸素は十分にあり、死ぬようなことはありません。落ち着いて、慌てないことが大事です。発作は、10~30分で治まるのが一般的です。強い発作でも、1時間程度で自然に回復します。

正しい応急処理で「CO2濃度」を上げる

過呼吸が起こっている体内は、血液中に酸素が増えすぎて、二酸化炭素が不足している状態です。そこで意識としては、苦しくて息を吸いたくなりますが、酸素を摂り込むのは「逆効果」です。酸素を抑えて、二酸化炭素の濃度を上げることが必要です。焦らず、まずは気持ちを落ち着かせ、次のようなを行います。

1.胸に手をあてて、呼吸の速度を下げる

周囲の人は、背中に手をあててあげましょう。それだけ落ち着くことがあります。

2.呼吸のリズムを「浅くゆっくり」にする

深く吸うと、二酸化炭素の濃度が上昇しづらくなります。

3.息を吸ったあとに、1~2秒息を止める

呼吸回数を減らし、二酸化炭素の濃度を上げる効果があります。

4.吸い込んだ息を、10秒かけて吐く

吐くことに意識を集中します。周囲の人が「イーチ、ニー、サーン」と声を出して数えてあげるとよいでしょう。

「ペーパーバック法」は、むしろ危険!

過呼吸の発作では、周囲の人が気づいて、袋を口にあてる「ペーパーバック法」が以前は常識でしたが、いまはむしろであるとして推されていません。この方法は、本人が吐いた空気(二酸化炭素)を再び吸い込むことで、二酸化炭素の濃度を上げる試みですが、次の理由で危険とされています。

  • 過呼吸だけでなく、他の重篤な病気である可能性もある
  • 二酸化炭素を吸い込むことで、不安を助長させる恐れがある
  • 低酸素を招き、死亡したケースがある

救急車を呼ぶのは、どんなとき?

救急車-写真

過呼吸の発作は時間が経てば鎮まりますが、次のような状態が続くときは、119番に電話して救急車を呼びましょう。

  • 手足または全身の痺れが改善しない
  • けいれんを起こしている
  • 声をかけても反応が薄く、意識が遠のいている
  • 失神している、あるいはしかけている

救急車が到着するまでのあいだ、周囲の人は「自分の名前は?」「どこが痛む?」など、なるべく声をかけて会話をするように心掛けましょう。会話をすることで、呼吸回数が減り、二酸化炭素の濃度が上昇し、症状が和らぐことがあります。

何回も起こるときは、心療内科を受診する

過呼吸を何回も起こすときは、精神的な要因が考えられます。心療内科を受診し、専門医に相談しましょう。予防として「抗不安(不安を抑える薬)」の服用を勧められることがあります。

また、過労や寝不足が過呼吸を引き起こすといわれています。風邪の症状で過呼吸にかかる人もいるようです。いずれにせよ、普段の体調を整えることが予防に繋がります。そして何よりも「発作は自然に治まる」という安心感を持つことです。

それでも「胸が苦しい」「これは過呼吸かも」と感じたら、息を吸い込む時間よりも長い時間で息を吐くようにしましょう。呼吸の際に息を完全に吐き切るのが大事です。「息を吸う1:息を吐く2」の割合で呼吸します。

まとめ

過呼吸は、急な発作で「息ができずに窒息死するかも」とパニックを起こしやすい症状です。しかし窒息するような現象は体に起こっていません。強い発作でも、時間が経てば自然に治まります。『正しい理で「CO2濃度」を上げる』の段落で挙げた処置を行いましょう。発作が何回も現れるときは、精神的ストレスが要因かもしれません。心療を受診し、予防策などを相談します。