膀胱炎」といえば、特に女性にとっては身近な病気のひとつでしょう。発熱などは通常みられませんが、排尿時の痛みや頻尿などの症状があらわれ、日常生活に少なからぬ影響があります。しかし、こうした膀胱炎は細菌への感染が原因となり、抗生物質を用いることで軽快・回復へと向かいます。

一方、数は少ないものの抗生物質の効かない膀胱炎があります。今回は、抗生物質が効かない膀胱炎である「間質性膀胱炎」について解説します。

目次

間質性膀胱炎とは

膀胱は腎臓で作られた尿を一時的に蓄える働きを果たしており、一定以上の量の尿が溜まると尿道を介して体外に排泄するはたらきをもつ臓器です。何らかの原因で、この膀胱に炎症が起こるのが膀胱炎です。

私たちがよく知っている膀胱炎は単純性膀胱炎と呼ばれるもので、大腸菌などの細菌感染が原因であることがわかっており抗生物質による治療が可能です。

一方で、間質性膀胱炎は具体的な原因が判明していません。膀胱の粘膜を覆う細胞の異常や、免疫の異常(本来外敵を攻撃するはずの免疫が自分自身の身体の細胞を攻撃してしまうこと)が原因とする説がありますが、未だに原因は、はっきりしていません。

間質性膀胱炎の症状

間質性膀胱炎では、次のような症状が見られます。

  • 頻尿
  • 強い尿意
  • 残尿感
  • 膀胱の違和感・圧迫感・痛み

単純性膀胱炎や過活動膀胱でもみられる症状ですが、抗生物質が効かず、抗コリン剤やβ3刺激剤も効果がないため、これらの症状がしつこく持続し、繰り返したりする場合には、間質性膀胱炎が疑われます。

進行すると、膀胱の痛みが激しく骨盤内、下腹部全体に感じられることもあり生活に支障をきたします。

間質性膀胱炎の治療

根本的な治療方法は見つかっていませんが、症状をコントロールするための治療はさまざまなものがあります。

まず大切なのは、痛みを引き起こすような生活習慣を改善することです。一般的に間質性膀胱炎の痛みは唐辛子やマスタード、ワサビなどの香辛料を摂取した後に悪化するとされています。「辛い食事の摂取を控える」ということも大切かもしれません。

また、仕事や家事によるストレスでも痛みは悪化するとされているので、可能であればストレスをため込まないようにできると良いでしょう。

また、なかなか症状が改善しない間質性膀胱炎に対しては薬物治療(鎮痛薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、免疫抑制剤など)が基本です。重症例では、膀胱水圧拡張術(麻酔した状態で膀胱に生理食塩水を入れて、膀胱を拡張する方法)を行ったり、潰瘍型では、レーザー・電気メスによる焼灼術が実施されたりすることもあります。

あまりにも膀胱痛が強い場合は、膀胱全摘になることがあります。

これらの治療によって間質性膀胱炎と上手に付き合っている患者さんも数多くいるので、是非一度、医師(泌尿器科専門医)の診察を受けると良いでしょう。

まとめ

「間質性膀胱炎」という病名を耳にしたことがある方はそれほど多くないでしょう。実際にかつては非常に稀な病気とされていましたが、研究が進んだ結果、想定以上に多くの患者さんがいることが明らかになってきました。思い当たる症状がある方は一度医師の診察を受けてみると良いかもしれません。