「先ほどトイレに行ったばかりなのに、出し切っていない感じがする…」と悩んでいる人はいませんか。その残尿感は年をとって骨盤周りの疾患が関係している場合があり、その疾患も男女によって特徴があります。今回は残尿感があったときに考えられる病気について紹介していきます。

目次

女性によくみられる残尿感の原因

膀胱炎

膀胱炎は急性膀胱炎と慢性膀胱炎、間質性膀胱炎があります。症状は特に変わりませんが、原因に違いがあります。

症状

  • 頻尿・尿意頻回(おしっこが溜まっていないのに、漏れそうな感覚になってトイレに行きたくなる)
  • 残尿感(全部、出し切った感じがしない)
  • 排尿時痛(おしっこをした時に痛みを感じて恐怖心も出る)
  • 血尿や白濁尿(血の混じった尿や酒粕のように濁った尿が出る)

原因

原因のほとんどは細菌感染が原因であり、特に大腸菌が多いです。

女性は男性と比べて膀胱までの尿道が短く、肛門と尿道の場所も近いため、菌が侵入しやすい状況です。風邪を引いたり疲れが溜まっていたりするときには、免疫力や抵抗力が低下していますので特に注意が必要です。

基礎疾患(尿路結石・糖尿病・悪性腫瘍・抗がん剤治療中・ステロイド長期内服など)がある人は膀胱炎を何度も繰り返す危険性があります。治療方法について担当医とよく相談しましょう。

間質性膀胱炎は慢性的な炎症にともなって起こる膀胱粘膜障害ですが、その原因はわかっておりません。膀胱の不快感や痛みは膀胱に尿が溜まった時や冷えた時のほか、刺激物の摂取や精神的なストレスでも悪化します

治療

軽症であれば自然軽快もしますが、抗生物質を服用した上で水分を多くとることでも治療が可能です。女性は特に陰部を清潔に保ち、おしっこを我慢しないことも予防にもつながります。

間質性膀胱炎の治療は、他の膀胱炎とは異なり細菌感染によるものではありません。萎縮した膀胱を水圧で拡張させたり、おしっこを溜める訓練(膀胱訓練)を行ったりすることが有効ですが、完治を目指すのではなく症状を和らげることが目的になります。

男性にみられる残尿感の原因

残尿感に悩む男性-写真

前立腺肥大症

年をとるにつれて前立腺が肥大して尿道を圧迫します。そのことで排尿に関するさまざまな症状が現れる疾患です。

症状

  • 残尿感があり、何度もトイレに行く(特に夜間)
  • 尿の勢いが弱く、尿も細い(チョロチョロしか出ない)
  • 力まないと尿が出ず、また出始めるまでに時間がかかる
  • 尿が分かれて出る(1本の尿として出ない)

原因

なぜ肥大するのかはっきりとした原因は不明です。前立腺肥大症には、メタボリックシンドローム、男性ホルモンが関与していると考えられています。

治療

注意が必要なのは、残尿感という感覚ではなく、実際に排尿できていない残尿が多いこともあります。簡易的な検査で残尿は測定できるので、専門医に相談をすることをお勧めします。

一度肥大した前立腺は自然に元の大きさに戻ることはありませんが、内服薬で症状を抑える事ができます。まれに薬での効果が期待できない場合は、肥大した前立腺を取り除く内視鏡手術を行うことがあります。

慢性前立腺炎

名前の通り前立腺が炎症している状態です。若い世代に多くみられます。

症状

  • 頻尿
  • 残尿感
  • 排尿時痛
  • 尿の勢いが弱くなる
  • 睾丸の鈍痛や不快感
  • 勃起障害(ED)

原因

疲労、ストレス、飲酒、冷えなどが考えられます。長時間のデスクワーク、車の運転や自転車・バイクの運転など前立腺への刺激も挙げられます。

治療

抗生物質や植物製剤(セルニルトン)・漢方薬などで治療を行います。すぐに症状が良くなる人は少なく、長期的な治療に取り組む必要があります。

まとめ

残尿感は年齢とともに男女によって原因となる疾患が分かれています。疾患によっては水分の摂取が必要ですので、「トイレに行きたくなるから」といって水分摂取を控えることはやめましょう。かえって膀胱内の細菌が排出されずに膀胱炎を引き起こしてしまう場合もあります。

加齢に伴う症状だから仕方ないとあきらめずに、一度泌尿器科を受診してみることをおすすめします。