風邪をひいた子供が小児科を受診すると、よく「扁桃腺が腫れていますね」と言われますよね。「扁桃腺が通常よりも大きい」という指摘を受けたことがある方もいらっしゃるかもしれません。また、「扁桃腺」と言うこともあれば「扁桃」とも言うこともあり、どちらなのでしょうか?

ここでは、知っているようで知らない「扁桃腺」「扁桃」についての疑問を一つずつ解決していきましょう。

目次

「扁桃腺」と「扁桃」どっち?

かつては「扁桃腺」と呼ばれていましたが、厳密には「腺(物質を分泌するところ)」とはいえないため、現在では単に「扁桃」と呼ばれています。

扁桃は口から喉にかけて複数存在し、口や鼻から侵入してくる病原体(細菌やウイルス)に対する防御機能を担っています

大きく分類すると、口の天井(口蓋)に存在する口蓋扁桃、鼻の奥に存在する咽頭扁桃アデノイドとも呼ばれる)、耳管(耳と鼻を繋ぐ管)の出口に存在する耳管扁桃、舌の付け根に存在する舌扁桃の4種類です。

これらの扁桃には免疫に必要な白血球(リンパ球やマクロファージなど)が多数分布しており、口や鼻から侵入した病原体に対して防御反応(免疫応答)を起こします

この反応によって喉や気管などへの感染ができる限り起こらないように保たれているのです。

扁桃が腫れているって?

上記のように扁桃は感染から私たちの身を守る働きを担っています。そのため、口や鼻から病原体が侵入するとまず始めにその病原体にさらされることになります。

病原体に対して白血球が様々な防御を試みた結果、炎症反応が生じて扁桃は大きく腫れてしまいます。これがいわゆる、「扁桃が腫れる」という現象です。

扁桃が腫れている」ということは、つまり「病原体が体に侵入しつつある」ということなのです。

扁桃がもとから大きい人もいる

このように炎症によって扁桃は大きくなるのですが、感染の有無にかかわらず元から扁桃がある程度大きい場合もあります

風邪や感染症ではないものの、大きくなった扁桃によってさまざまな問題が生じることがあります。

副鼻腔炎

肥大した扁桃によって鼻のとおりが悪くなると副鼻腔に鼻水がたまり、副鼻腔炎の原因となります。

睡眠時無呼吸症候群

副鼻腔炎と同様に、鼻のとおりが悪くなることでいびきの原因となることもあります。ひどい場合には、睡眠時に呼吸が一時的に止まってしまう睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。

中耳炎

扁桃によって耳と鼻を繋ぐ耳管が塞がれると、中耳炎が引き起こされることがあります。

アデノイド顔貌

常に口を開けていることで生じる、独特な顔つきの症状です。鼻での呼吸がしづらくなることで口呼吸となってしまうことが原因となります。

大きい扁桃はなおる?

基本的にはまず、薬による治療を試みます。ステロイド抗菌薬など、原因に応じた薬剤による治療を行います。

炎症を繰り返す場合、扁桃が大きいことによるデメリットが生じる場合は、手術によって扁桃を取り除きます。一般的には、手術は大学病院や比較的大きな総合病院などで実施されます。

まとめ

扁桃についてここまで簡単に説明してきました。扁桃は感染防御という点では重要ですが、もし扁桃が大きいのであれば必要に応じて治療を実施する必要があります。

場合によっては手術が勧められることもあるかもしれませんが、担当の医師としっかりと相談したうえで治療方針を決定することが大切なのです。