白血球は血液成分の1つで、主に免疫に関わる働きをします。外部から細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入すると、自分のなかに取り込み、消化分解などの処理を行うことで感染を防ぎ、体を守ります。白血球の数は、健康な人でも個人差が大きく、また生活習慣や体調によって変動するのが特徴です。しかし、白血球が多すぎる・少なすぎる状態が続くときは、医師の診断が必要です。

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1日に「約1000億個」作られる

白血球は無色透明ですが、集まると白く見えるため、その名前がつけられています。日常で白血球を目にするのは、ケガをしたときです。傷口から白くどろっとした膿が出ることがありますが、これは白血球の死骸です。

成人の場合、白血球は1日に約1000億個が骨髄で作られ、やがて「好中球」「好酸球」「好塩基球」「」「リンパ球」の5種類のいずれかに成長します(MSDマニュアルより)。それぞれが役割を持ち、優れたチームワークで異物を撃退します。5つの主な特徴は次のとおりです。

好中球

好中球は、白血球の約45~75%を占めています(MSDマニュアルより)。細菌などの感染を防ぎ、傷や炎症を治すなどの働きをします。そのとき好中球は増加します。

普段は血管のなかを循環し、パトロールしています。体内に細菌などが侵入すると、血管の壁を通り抜けて真っ先に感染場所へと移動します。そして、細菌に接触すると、飲み込んで分解します。

好酸球

白血球の約7%未満が、好酸球です(MSDマニュアルより)。主に寄生虫から体を守る機能を担っています。寄生虫感染が起こったときに、好酸球が増えて寄生虫を攻撃します。一方で、気管支喘息アレルギー性鼻炎などアレルギー反応による炎症の一因とも考えられています。

好塩基球

好塩基球は、白血球の3%未満といわれています(MSDマニュアルより)。主に免疫作用の監視を担っています。感染した場所に到着すると、ほか白血球を呼び寄せるための物質を作り、放出します。多くの白血球を集めて細菌などを撃退する準備を整えます。傷の治癒の役割も担います。

単球

白血球数の約1~10%を占めています(MSDマニュアルより)。血管の外に出ると、マクロファージという細胞に変化し、沢山の細菌を飲み込み、分解します(大食作用と呼びます)。異物撃退の初期には好中球が活躍し、やがてマクロファージが集まり、細菌や死滅した細胞を飲み込んで処理します。

リンパ球

リンパ球は白血球の約20~40%を占めています(MSDマニュアルより)。T細胞とB細胞、NK細胞に分かれ活動します。活発に細菌を撃退する能力はありませんが、抗体を生産し、異物が侵入してきたときに取りついて、他の白血球の攻撃の目印となります。

「白血球数の異常=病気」とは限らない

妊婦さんと子供-写真

白血球数の異常は、白血病を想像し、必要以上に強い不安が起こります。しかし、白血球数の変化は、喫煙・運動・ストレス・月経・妊娠ステロイド薬の服用などによっても起こります。健康な人でも基準値から外れることもあり「白血球数の異常=病気」とは限りません。何も症状が出ていない場合、重大な病気ではないケースが多いと考えてよいでしょう。

一方で、中には深刻な病気が原因となっていることもありますので、他の症状が伴う場合は早めに血液の受診をおすすめします。一般的に、白血球数の正常範囲は、1マイクロリットルあたり約400011000といわれています(MSDマニュアルより)。個人差が大きく、範囲は広く設定されています。白血球数に明らかな異常があるときは、何らかの病気が疑われます。

「白血球の増加」の原因とは?

1.ほとんどの場合、「感染症」と「生理的原因」

白血球は、体に侵入した異物に対抗し体を守るときに増加します。感染症として多いのは、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症があります。また、これら3つに比べると少ないものの、結核、感染症心内膜炎、百日咳梅毒、トキソプラズマなどが原因となる場合もあります。

さらに、喫煙、運動、興奮、不安、月経、出産などの生理的ストレスも大きな原因のひとつです。寝不足や不規則な生活が続くと、一時的に白血球が増加することがあります。

2.アレルギー疾患、薬の服用が原因となることも

ステロイドなどの薬の服用や、体に合わない薬を使用した場合のアレルギー反応として、白血球が増加することがあります。アレルギー疾患としては、花粉症アトピー性皮膚炎気管支喘息蕁麻疹アレルギー性鼻炎などが考えられます。

3.稀に原因となるもの

腎臓の機能が低下し、排出されなければならない老廃物が血液中に溜まった場合(尿毒症)に、白血球の増加が見られます。他にも、がんの骨髄転移・浸潤、膠原病、血液疾患など様々な理由により白血球は増加しますが、原因としては稀です。

白血病

多少多いだけで過剰に心配する必要はないですが、ごく稀に、白血病が原因で白血球が増加している場合があります。

白血病には、急性白血病慢性白血病の2種類があります。急性白血病は進行が早く、貧血や、出血が止まらなくなる、感染症にかかりやすくなるといった症状がみられます。慢性リンパ性白血病はゆっくりと進行し、初期はほとんど症状がみられないため、健康診断での白血球数の異常から偶然に見つかることもあります。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、白血球のなかのリンパ球ががん化したものです。発熱や体重の減少盗汗(とうかん;著しい寝汗)といった症状がみられます。全身のあちこちで発生する可能性がある病気です。

「白血球の減少」の原因とは?

免疫の働きが頻繁に起こり、白血球の消費や破壊が速く、白血球の生成が追いつかないときに、白血球の減少は起こります。そのため、感染症が重度になった場合に白血球が減少することがあります。

また、胃薬であるファモチジン(商品名:ガスター)や甲状腺の薬(メルカゾールチウラジールなど)といった薬の副作用でも、白血球の減少がみられることがあります。

さらに、白血球の減少は「がんの化学療法」の際に多く見られます。抗がん剤の使用で現れる副作用です。細胞の増殖を抑えるため、がん細胞だけでなく、毛髪・皮膚・爪・骨髄など正常な細胞も攻撃されてしまうのです。すると、骨髄機能が低下し、白血球の生成が減少します。

白血球数の異常では「ここに」気をつけて

白血球が増加しているときは、過度な運動と喫煙を控えます。また精神的なストレスや疲労は、免疫力の活性を促し、白血球は増加します。リラックスして穏やかに過ごすことをおすすめします。風邪などの感染症やアレルギー反応がある場合は、症状に合わせて病院を受診しましょう。

白血球が減少しているときは、体が風邪、肺炎食中毒など感染症にかかりやすい状態です。通常よりも、手洗い・うがいを丁寧に行いましょう。また、生ものの摂取は控えます。部屋を清潔にして、外出のときはマスクを着用し、人ごみはなるべく避けます。

まとめ

白血球は免疫に関係した働きをする細胞です。白血病など深刻な病気の場合にも検査値の異常がみられることがありますが、白血球の増減の原因としては大変稀です。

一方、増減の原因のほとんどは、細菌やウイルスへの感染や生理的ストレスです。基本的には規則正しい生活を心掛け、原因となる感染症がある場合には治療を行いましょう。