18歳以上で新たに視覚障害認定を受けた人の疾患の原因で1位になっている緑内障(※)。失明の危険もある疾患ですが、先天的な眼の器官の異常や眼の外傷などによって子供でも発症する場合があります。

子供の緑内障は以前、発達緑内障もしくは先天緑内障と呼ばれていましたが、2017年に改訂された緑内障診療ガイドライン(第4版)小児緑内障に変更されました。今回は将来的な視力にも関わってくる小児緑内障について紹介します。

目次

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小児緑内障とは

眼の前部には、毛様体で作られた房水(ぼうすい)と呼ばれる体液が循環しています。房水が循環していることで眼圧は一定に保たれ、眼球の形状も崩れません。房水は虹彩と水晶体の間を通りながら前部、そして角膜と虹彩の境目で開かれている隅角(ぐうかく)に流れていきます。最終的には隅角にある線維柱帯、シュレム管を通って静脈に排出されます。

房水を循環させる上で重要な隅角ですが、生まれつき開いていない・うまく開かないといった発育異常などがあると、房水はうまく排出されていきません。そうすると眼圧が上がってしまい、緑内障を発症することがあります。これが小児緑内障です。

1993年に行われた先天緑内障の全国調査によると、発生頻度は約3万4千人に1人となっています(あたらしい眼科13(4)p.601より)。

診断方法

小児緑内障は、眼圧の数値だけでなく、乳頭陥凹(視神経の出口にある視神経乳頭の凹み)や角膜の大きさなど計5項目から診断されます。これは乳幼児では正確に眼圧を測るのが容易ではなく、観察してわかる項目が必要なためです。

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小児緑内障の分類

小児緑内障は大きく分けて原発と続発に分類されます。原発とはある器官にのみ異常がみられそれが疾患の原因となっていること、続発はある疾患が別の疾患によって引き起こされていることを表しています。そこからさらに原発で2種類、続発で4種類に分けられます。

それぞれのケースについて説明します。

小児緑内障:原発のケース

原発先天緑内障

隅角がうまく形作られず閉じた状態で、出生直後もしくは生後早い段階で眼圧が高くなります。隅角以外の異常はみられません。以前は早発型発達緑内障と分類されていました。

原発先天緑内障はさらに発症年齢によって次のように細かく分けられます。

  • 出生前または新生児期(0~1か月)
  • 乳児期(1~24か月)
  • 遅発性(2歳以上)

特徴的な症状として、黒目が大きく見えることが挙げられます。これは高眼圧だと角膜が肥大し、眼球そのものが大きくなるためです。牛の眼のようにも見えるため牛眼(ぎゅうがん)と呼ばれることもあります。その他には、涙があふれる(流涙)、まぶしさ(羞明)、まぶたがピクピクする(眼瞼痙攣)、黒目が白く濁る(角膜混濁)といった症状がみられる場合があります。

若年開放隅角緑内障

軽度の隅角異常のために発症が遅れ、4歳以降で発症するタイプの小児緑内障です。多くは10~20代で発症します(日本小児眼科学会より)。遅発型発達緑内障と呼ばれていました。

原発先天緑内障と同じく隅角以外の異常はみられませんが、隅角の形成異常は軽いため、隅角は閉じていません。シュレム管が年々詰まっていくため発症します。原発先天緑内障と違って眼球の拡大はありません。そのため症状は現れず、発見が遅れることがあります。

小児緑内障:続発のケース

眼の先天異常に関連した緑内障

生まれつき虹彩がない無虹彩症や、虹彩と角膜が生まれつきくっついているPeters(ペータース)異常などの先天的な眼の形成異常によって起こる小児緑内障です。他の眼形成異常には結膜に色素が沈着している眼皮膚メラノーシス(太田母斑)、眼球が小さい小眼球症などがあります。

全身の先天異常に関連した緑内障

マルファン症候群やムコ多糖症、スタージ・ウェーバー症候群、ダウン症などの全身の先天異常に関連して起こる小児緑内障です。

後天要因による緑内障

出生時にはなかったものの、その後に発生した要因によって引き起こされる小児緑内障です。ぶどう膜炎や腫瘍、眼の外傷による前房出血や隅角解離、副腎皮質ステロイドなどが挙げられます。

白内障手術後に起こる小児緑内障

白内障手術後に起こる小児緑内障です。

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小児緑内障の治療

小児緑内障の治療は高くなった眼圧を下げることを目指します。

原発先天緑内障や大半の続発緑内障は手術による治療が基本となります。若年開放隅角緑内障やスタージ・ウェーバー症候群を発症している年長者では、点眼薬による薬物療法が第一選択になります。

手術方法には、繊維紐帯の切開もしくは切除、隅角の切開、眼球の中にプレートとチューブを入れて房水が流れられる径路の設営(チューブシャント術)、房水を作る毛様体の破壊(毛様体破壊術)などがあります。毛様体破壊術は他の手術方法でも治療がうまくいかない場合に検討されます。

治療が終わっても経過観察は必要で、複数回手術が必要となる場合もあります。また、続発性の場合は、元となる疾患の治療も行われます。

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まとめ

小児緑内障は、その後の見え方に大きく関わってきます。特に乳幼児の時期は、視機能が発達するとても大切な時期です。小児緑内障について正しい知識を持ち、子供の眼に違和感を覚えたら、早期に病院を受診しましょう。

 

(※)出典:「森實祐基・小椋祐一郎,視覚身体障害者認定の実態疫学調査,厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究.白神史雄.H28年度総括研究報告書」(厚生労働科学研究成果データベース閲覧システム)(http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201610055A)(2018年8月15日に利用)