高血圧は無症状のことが多い病気ですが、頭痛やめまいが現れることも少なくありません。
そういった高血圧に付随する症状に有効とされている漢方が釣藤散(ちょうとうさん)です。
この記事では、釣藤散の効果や向いている人、副作用などについて見ていきます。
釣藤散とは
釣藤散は高血圧による慢性的な頭痛や神経症に用いられる漢方薬です。
以下のような生薬が含まれています。
- 釣藤鈎(チョウトウコウ)
- 陳皮(チンピ)
- 半夏(ハンゲ)
- 麦門冬(バクモンドウ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 人参(ニンジン)
- 防風(ボウフウ)
- 菊花(キクカ)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 石膏(セッコウ)
半夏、人参、生姜など、身体を温めて代謝を良くする生薬が多く含まれていることが特徴です。
釣藤鈎という生薬は高血圧による症状の他、小児のひきつけの薬にも利用されています。
釣藤散の効能効果
釣藤散は朝にひどくなる頭痛など、高血圧にともなう症状への処方として利用されています。
具体的には、以下のような症状に対して効果があるとされています。
- 慢性的な頭痛(目覚めた時に生じ、起きて動いていると忘れる様な頭重感)
- めまい
- 肩こり
- のぼせ
- イライラ
- 不眠
- 目の充血
どんな人に向いている?利用できない人は?
釣藤散は中年以降でやや虚証の方で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがある方に向いているお薬です。
逆に、下記のような方は薬を飲むことができない場合があります。必ず医師か薬剤師の指導を受けましょう。
- 医師の治療を受けている方
- 他に薬を使っている方
- 妊娠中、もしくは妊娠している可能性のある方
- これまでに薬を利用して発疹や赤み、かゆみなどのアレルギー症状を起こしたことのある方
釣藤散はどうして血圧の症状に効くの?
漢方では、血圧が上がる原因は加齢もしくはストレスと考えられており、釣藤散は特に、ストレスによる高血圧の症状に有効です。
ストレスによって血圧が高くなっている人は、「肝気(目に見えない、人の体を支える原動力のようなもの)」が上昇していると考えられています。
「肝気」は、ストレスや緊張によって流れが悪くなると頭のほうへ昇っていきます。上昇した「肝気」は熱に変わり、頭痛、めまいといった症状の原因になります。
さらに、「肝気」は「血(全身に栄養を与えるもの)」を動かし、血圧を上げます。
釣藤散は「肝気」の上昇をおさえることで、「気」「血」のめぐりを整える働きをするのです。
血圧を下げる薬ではなく、高血圧の原因を改善する薬ですので、血圧が下がりすぎることはありません。
釣藤散の副作用
漢方は西洋薬と比べて副作用が出にくいですが、絶対に出ないというわけではありません。
釣藤散では、発疹、蕁麻疹といった皮膚症状や、食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、便秘などの消化器症状が副作用として報告されています。
また、稀にですが重大な副作用として下記のようなものがあります。
- 偽アルドステロン症
血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないのに、アルドステロン症と同じような症状が出る病気です。
具体的には、高血圧、むくみ、尿量が減少する、手足がこわばる、まぶたが重くなるといった症状が出ます。 - ミオパチー
低カリウム血症から引き起こされる筋肉の病気で、体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる・しびれる等の症状が出ます。
上記の重大な副作用は薬の成分である甘草(グリチルリチン)によって引き起こされます。甘草の含まれる薬を複数飲んでいると副作用が起きる可能性が高くなるため、飲み合わせに注意が必要です。
甘草は漢方のほかにも、風邪薬、胃腸薬、肝臓病の薬など、多くの医薬品に含まれる成分です。飲み合わせに問題がないか、薬剤師や医師に相談するのが確実でしょう。
薬を飲んでいて気になる症状が出た場合には、服薬を中止して医師・薬剤師に相談してください。
まとめ
高血圧の薬というと、まず西洋薬を思い浮かべるかと思います。
漢方薬である釣藤散は血圧を下げるお薬ではありませんが、高血圧の原因を解消し、症状の緩和に効果的といわれています。
血圧を下げ過ぎる危険がなく、副作用も起きにくいために比較的安心して利用できることがメリットです。
高血圧傾向の方で頭痛の症状に悩まされている方などは、一度試してみても良いかもしれません。
漢方薬には釣藤散以外にも血圧を下げる作用がある処方がいくつもあります。体調・体質に合わせて使用することで高血圧に付随する症状も減らす効果がありますので、興味がある方は専門医にご相談ください。