中年にさしかかると誰しも気になり始めるのが、「血圧」です。毎日測定して、その結果に一喜一憂している方は少なくないでしょう。家庭用血圧計の普及もあり、血圧を日常的に測定している患者さんは、昨今急激に増加しました。ですが血圧というものが一体何なのか、血圧が上昇することによってどの様に健康へ悪影響が生じるのかをきちんと理解している人は少ないかもしれませんね。今回は、血圧が一体どのようなものなのか、そして血圧が高いと人体にどの様な悪影響が及ぶのかについて説明します。

目次

血圧ってなに?

血圧を一言であらわすと、血液が血管の壁を押す圧力のことです。血管は心臓から送り出された血液によって絶えず満たされています。そのため、血管の壁は血液による圧力に常に晒されることになります。この圧力が高い状態が高血圧なのです。高血圧の状態になると、血管の壁により大きな負担がかかることになり、様々な疾患のリスクが高まるのです。

血圧を決める因子

では、血圧はどの様な因子の影響を受けているのでしょうか?血圧を決定する二つの因子として、心拍出量末梢血管抵抗があります。それぞれどの様なものなのか簡単に理解しておきましょう。

1.心拍出量

心拍出量とは心臓が全身に送り出す血液の量のことです。心拍出量が多いほど、血圧は高くなります。心拍出量が多くなる原因として、甲状腺機能亢進症貧血などがあります。

2.末梢血管抵抗

末梢血管抵抗とは血管における血液の流れにくさのことです。末梢血管抵抗が大きいほど血圧は上昇します。末梢血管抵抗が大きくなる代表的な原因として、動脈硬化があります。血管内で増加したコレステロールが、血管壁を傷つけることで血管の壁がどんどん固くなってしまうのです。

これでもやはりイメージしにくいですよね。分かりにくい場合は、水(血液)ホース(血管)をイメージしてみましょう。流れる水の量(心拍出量)が異常に増えたり、ホースが細くなったり、柔軟性がなくなった(末梢血管抵抗の増加)とします。すると、ホースに異常な負担(高血圧)がかかってしまうでしょう。このような現象が実際に体内で起こっているのです。

高血圧はなぜ体に悪いの?

上でも説明したように、高血圧とは血管の壁に過度な負担がかかっている状態です。すべての臓器は血管によって機能を維持しているため、血管に負担がかかると全身の様々な場所で障害が起こります。ここでは生命にかかわる障害を中心にいくつか触れることにします。

1.脳

脳内の血圧は基本的には自動的に一定に保たれています。ですが、高血圧が過度に進行すると、自動的な調節能力だけでは対応できなくなり脳の血圧が急激に上昇していきます。脳内の血圧が上昇すると、脳梗塞脳出血が起こるリスクが格段に高まります。

2.心臓

血圧が上昇すると、心臓は全身に血液を送り出すためにより多くのエネルギーを必要とします。結果的に心臓にはより大きな負担がかかることになり、その負担に耐えられなくなったときに心臓の機能は徐々に低下していきます。これが心不全です。また、ほかにも狭心症心筋梗塞などのリスクも高まります。これらは時に突然死の原因となることもあるため注意が必要です。

3.腎臓

腎臓内で体内の不要物質をろ過する役割を果たしている器官(糸球体)は極めて細い血管でできています。したがって、糸球体は高血圧に対して非常に弱いとされています。高血圧が進行すると、糸球体が破壊され、腎不全に至ります。

まとめ

はじめでも述べましたが、血圧を気にしている人は多くても、血圧が一体何なのかを知っている人はそれほど多くはないかと思います。血圧の正体を知ることで、日々の血圧管理に対してもより積極的に取り組めるようになるはずです。「原理を知り、それを健康管理に活かす」という姿勢で今後の血圧管理に取り組めると良いのではないのでしょうか?