「血圧」とは、血液の流れをつくる圧力のことを指し、高血圧とは文字通りこの圧力が高くなった状態です。そのほとんどは本態性高血圧といって原因不明とされていますが、中には病気により高血圧となることがあります。今回は高血圧の原因疾患のひとつ、「原発性アルドステロン症」について解説します。降圧薬を飲んでも効き目がない…という場合には、この原発性アルドステロン症かもしれません。

目次

「高血圧」とは

血圧ってなに?

先にも述べたように「血圧」は血液の流れをつくる圧力です。この圧力は、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)と血管内側の弾力性や血液の粘度(末梢血管抵抗)により決まります。また、心拍出量は心拍数と1回の心拍で送り出される血液の量(1回拍出量)に依存します。これらの関係を式で表すと、次のようになります。

血圧=1回拍出量×心拍数×末梢血管抵抗

このため、運動の直後でドキドキしているとき(心拍数が増えたとき)、塩分を摂りすぎて血液内の水分の量が増えたとき(1回拍出量が増えたとき)、動脈硬化により末梢血管抵抗が上がったときなどは血圧が上がります。

高血圧の定義

血圧は「130、80」などとあらわされます。どんな意味があるのでしょうか?

下の数値は拡張期血圧、上の数値は収縮期血圧と呼ばれるものです。心臓は拡張・収縮を繰り返すことで全身に血液を送り出していますが、心臓の拡張期に測られるものが拡張期血圧、収縮期に測られるものが収縮期血圧です。

測定する場面によって高血圧の基準は異なりますが、病院で血圧を測った場合(診察室血圧)には、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上が高血圧の基準です。

高血圧の原因・弊害

本態性高血圧と二次性高血圧

高血圧の原因は、大きく2つに分けられます。ひとつは、本態性高血圧といって原因となる基礎疾患が見当たらない高血圧です。高血圧症の85~90%をしめるといわれています(ファイザーより)。肥満、塩分過多、喫煙、ストレスなどの環境因子のほか、体質といった遺伝的な要素とも関連しています。治療では、食事療法や運動療法といった生活習慣の指導が基本です。

もうひとつは、基礎疾患などにより高血圧となる二次性高血圧です。薬剤の副作用、腎臓の病気、ホルモンの分泌異常があります。このタイプの高血圧は、原因疾患の治療を行うことで高血圧を改善できる可能性があります。

このうち、原発性アルドステロン症による高血圧は二次性高血圧にあたります。

高血圧がまねく病気

高血圧の状態が続くと、血管に不要な圧力がかかり続ける状態となります。圧力がかかり続けた血管は少しずつ傷んでいき、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などの心臓・血管にかかわる病気を引き起こします。また、末梢の血管に影響が出ることで、高血圧性網膜症や腎硬化症、腎不全といった病気の原因にもなります。

原発性アルドステロン症とは

原発性アルドステロン症は、副腎腫瘍が原因でアルドステロンと呼ばれるホルモンの分泌が過剰になる病気です。アルドステロンは副腎という臓器で作られるホルモンのひとつで、体内のナトリウム(塩分)の量を調整することで、血圧の調整をする働きをしているホルモンです。

症状がない場合もありますが、高血圧、多飲・多尿、筋力低下、四肢麻痺などがみられることもあります。この原発性アルドステロン症による高血圧は、高血圧のうち3~10%を占めるという報告もあり、国内には100万人以上の患者さんがいると推計されています(原発性アルドステロン症の診療ガイドラインの現状と課題(PDF)より)。

原発性アルドステロン症の症状

心臓病

1.高血圧

アルドステロンは、体内にナトリウム(塩分)を保持する作用をもつホルモンです。そのため、原発性アルドステロン症によりアルドステロンが過剰に分泌されると、体内に塩分が溜まりやすくなります。体内の塩分の濃度が高まると、塩分濃度を薄めようとして心臓は血液の量を増やすことで心拍出量が上がり、これが高血圧の原因となります。

2.多飲・多尿、筋力低下など

アルドステロンが過剰に分泌されることでカリウムの排泄が増え、低カリウム血症の状態になる場合があります。低カリウム血症では、脱力感、筋力低下、吐き気、嘔吐、多尿などの症状が出ることがあります。

その問題点とは?

本態性高血圧に処方される降圧薬が効きづらい治療抵抗性、重症な高血圧、急な血圧のコントロール不良や、本態性高血圧と比べて心血管系の合併症を発症するリスクが高いといった特徴があります。

しかし、自覚症状にとぼしく診断がつきづらいこと、原因となる腫瘍も画像検査による発見が難しいほど小さいものが多いことなどから、診断がされずに適切な治療ができていないケースがあることが指摘されています。

治療にきちんと取り組んでいるにも拘らず高血圧が改善されない場合には、医師に相談するようにしましょう。

まとめ

原発性アルドステロン症による高血圧は、副腎腫瘍によりアルドステロンというホルモン分泌がさかんになるために起きます。そのため、食事療法や運動療法、降圧薬の服用といった治療が効きづらい場合があります。一方で、きちんと診断・治療をすることで高血圧の症状を改善することができる病気でもあります。

治療抵抗性(治療が効かない)を示す高血圧、低カリウム血症のような症状がある場合には、一度医師に相談をしてみてもよいかもしれません。