ドラッグストアで漢方薬を選ぼうとすると、同じ症状に対して複数の薬があると思います。例えば、便秘に使われる薬だけでも防風通聖散、大黄甘草湯、桂枝加芍薬湯、麻子仁丸など、多くの市販薬があるのです。

これは何故かというと、漢方による治療は症状だけでなく、利用する人の体質から改善していくという考え方で行われるためです。

体質にあった薬を使わないと効果が充分に発揮されないどころか強い副作用がでることもあり、漢方において全身の調子を診ることはとても重要です。

自分は漢方においてどのような体質なのか、知っておくことでドラッグストアでの薬選びもしやすくなるかもしれません。

ここでは、漢方で診る体質についてご説明します。

目次

漢方で診る体質、「証(しょう)」について

漢方における証とは

漢方において、患者さんのその時の体質や状態のことを「証」と言います

証を決める要素はたくさんあり、専門家は脈やお腹・舌の状態だけでなく患者さんの声質や態度、姿勢、体格、匂いなど、さまざまな視点から証を判断していきます。

証を決める上で「陰陽」「虚実」「気・血・水」「六病位」などいくつかの基準がありますが、今回は代表的なものとして「虚実」と「気・血・水」を説明していきます。

「虚実」…病気に対する抵抗力

「虚実」は、病気に対する抵抗力や体力を表すものです。

虚証よりも実証の方が病気に対する抵抗力が強いとされています。漢方薬のパッケージなどに書いてある「体力のない方」は虚証、「体力のある方」は実証と考えるとおおむね良いでしょう。

それぞれの特徴は以下の通りです。

虚証

  • 体力がない(疲れやすい)
  • 痩せ型、もしくは水太り(むくみ体質)
  • 顔色が悪い
  • 肌がカサカサしている
  • 声が細くて小さい
  • 胃腸が弱く、下痢をしやすい
  • 寒がり

実証

  • 体力がある(疲れにくい)
  • 筋肉質
  • 血色が良い
  • 肌にツヤがある
  • 声が大きくて太い
  • 胃腸が強く、便秘気味
  • 暑がり
  • 食欲旺盛

実証のほうが健康そうに見えるかもしれませんが、虚実は、どちらか一方にかたよりすぎると良くありません

虚証と実証のあいだを中間証と言います。

上記の項目を見て、混じっていたりどちらとも言えなかったりする場合は中間証かもしれません。

「虚実」3つの特徴

「気・血・水」…過不足・停滞した体質は病気の原因に

「気・血・水」とは、人間の体を巡って健康を保っている3要素のことです。「気・血・水」の巡りが悪くなったり、不足したりすると不調や病気の原因になると考えられています

そのため、「気・血・水」のどの要素に乱れがあるのかを探ることも、漢方においては証の基準となります。

目に見えない生命エネルギーのことです。元気、気力、気合いの「気」はここから来ています。

精神活動を含めた生体の機能を維持する働きを持つと言われており、気の巡りが悪くなると心身のバランスを崩してしまいます。自律神経のはたらきに近いと考えられています。

「気」の乱れの種類と、それぞれの出やすい症状は下記の通りです。

気虚(気が不足した状態)

無気力、疲れやすい、だるさ、食欲不振など。

気滞・気うつ(気の巡りが悪い状態)

いらいら、憂鬱感、頭重、喉が詰まる、息苦しい、お腹が張るなど

気逆(気が本来とは逆の方向に流れている状態)

のぼせ、動悸、発汗、不安感、吐き気、咳など

全身を巡って組織に栄養を与えるもので、主に血液のことです。生体の物質的な要素であり、「気」によって調節を受けています。

「血」の乱れの種類と、それぞれの出やすい症状は下記の通りです。

血虚(血が不足した状態)

貧血、肌が乾燥する、脱毛、血行不良、睡眠異常など

瘀血(おけつ:血の巡りが悪い状態)

月経異常、便秘、お腹を押すと痛む、色素沈着、精神異常など

潤いを与える無色の液体のことです。体液、分泌液、尿といった、血液以外の体液を指します。「血」と同じく生体の物質的な要素であり、水分の代謝や免疫システムなどに関係しています。

「水」の乱れの症状は下記の通りです。

水滞(水毒とも:水の巡りや分布が悪い状態)

むくみ、めまい、頭痛、下痢、尿量の異常、舌に歯の跡が残るなど

「気・血・水」は健康維持の3要素

薬選びに迷ったら専門家に相談を

ここまで証に関わる「陰虚」「気・血・水」について簡単に説明してきましたが、血虚と水滞が合わさるなど複合した証も見られる事が多く、なかなか自分では判断できないケースも多いと思います。

自分はどんな証か、どの薬を使えば良いのかについて、迷った場合には漢方の専門医に相談してみましょう

また、証はどんどん変わっていくものです

普段は実証の人が、風邪をひいている間だけ虚証になるということも充分ありえますので、現在の自分の証をもとに薬を選びましょう。

まとめ

漢方では、体質全体を改善していくという考え方で治療していくため、証を診ることはとても大切です。

薬を選ぶ際にも、添付文書やパッケージの説明をよく読んで、今の自分に合うものを試してみましょう。

適切な薬がわからなかったり、迷ったりした場合には一度、漢方の専門医に相談してみても良いかもしれません。