「なんとなく不調が続いているが、病院に行くほどではない。」「確かに症状はあるが、検査をしても異常はないと言われる。」

こういった症状に悩んでいる方は意外に多いのかもしれません。

たとえば、過度のストレスは体調に影響することがあります。
しかしストレスによる体調不良は必ずしも「病気」と診断されるほどのものではないことが多いはずです。

病気とは言えない、それ故に根本的な治療が困難な体調不良は、改善させることはできないのでしょうか?

今回は都内で開催された第三回Kampo Academia プレスセミナーにて行われた、麻生ミューズクリニックの玉田真由美先生の講演「ストレスに伴う不調と漢方治療」の内容をご紹介します。

目次

ストレスを抱えがちな現代

厚生労働省の平成28年度の調査によると、悩みやストレスが「ある」と答えた方は全体の47.7%にも及びました。特に30代~50の、働く世代の方々がストレスにさらされている状況にあるようです。

さらにこの統計では性別による差も出ており、男性よりも女性の方がストレスを抱えている割合が高い結果となりました。

女性のストレスの受けやすさについては、様々な要因が考えられると玉田先生は話します。

女性は脳の構造上ストレスに弱く、周囲に気をつかいがちであること。身体的には男性よりも体力がなく、月経・妊娠・出産といった女性特有の変化もストレスに成り得ること。そして社会的にもまだ「家事や育児は女性がするもの」といった性別役割分業が残っていること等が、女性のストレスに関わっている可能性があるとのことでした。

健康と病気の間

こういったストレスは時に、体調不良につながります。

ストレスによって引き起こされる症状は様々ですが、「大した症状ではない」と見過ごされがちなものや、病気というわけではない・受診しても診断が下らないものもあります。

放置しがちな症状の具体例として、以下のようなものが挙げられました。

  • 食欲低下
  • 気力・体力の低下
  • 不安・イライラ・情緒不安定
  • 不眠
  • 腹痛・胃が痛い
  • 喉が詰まった感じ
  • 動悸
  • 歯ぎしり

確かに、このような症状で「病院に行こう」と考える人は少ないように思います。
しかし、そのうち治るだろうと考えていた症状がいつまでも改善しないと、不安に変わっていきます

また、「そもそも医療機関に相談するような内容ではない」と感じる人が多いものとして

  • デリケートゾーンの不快感
  • 尿意切迫感・夜間頻尿
  • 嫌な夢・怖い夢
  • 過食
  • イライラ
  • 眠気・疲労感
  • 髪の毛が抜けやすい

といった症状が挙げられました。

この中には医療機関に限らず、人に打ち明けにくいものが含まれているように感じます。
さらに我慢ができてしまう症状であると、悩んでいても受診することをためらってしまう、もしくは医療機関を頼るようなものではないと考えてしまうのではないでしょうか。

その他にも、病院を受診したことはあるが原因がわからなかった症状(吐き気、腹痛、頭痛、便秘、下痢、めまい、耳鳴り、身体の痛みや慢性的な蕁麻疹など)で悩む方もいます。
これらは症状を和らげる治療(対症療法)はできても、根本的に治らないため治療をやめると再発するようなことがあります。そもそも、異常が見つからないので特に治療の必要はないと言われることも少なくないでしょう。
異常はなく、治療の必要がないと言われても症状をつらく感じる方にとっては心配がぬぐいきれないこともあるようです。

こういった病気と健康の中間地点にあてはまる方は、ストレスの多い現代ではたくさんいるのかもしれません。

どうすれば解決できる?

原因がわからない、病院に行くほどでもないと感じた症状でも、悩んでいるようであれば何か解決策はないのでしょうか?

講演で、玉田先生は漢方治療という手段を提示しました。
漢方とは、中国起源の伝統医学が日本の風土や体質に合わせて独自の発展を遂げたものです。
最近はドラッグストアにも漢方薬がたくさん並んでいるため、飲んだことがある方もいるのではないでしょうか。

西洋医学がピンポイントに病気や症状を治療していくことが得意なのに対し、漢方はその人の体質の改善を目標としています。
そして漢方では、原因が特定できないものも治療できる可能性があるほか、病気の前段階の状態を「未病」と言い、それらも治療対象になるのです。

ただし漢方の診察は指針が多いことも特徴です。
漢方の診察では、西洋医学の問診でも聞かれる「どのような症状が出ているか」だけではなく、体格や姿勢、歩き方など、様々なことを鑑みていきます。

※漢方の歴史や診察の方法について、詳しくは下記の記事に書いてありますのでご参照ください。

漢方薬もその人の体質に合わせて処方されるため、例えば便秘に対して利用する薬でもたくさんの種類があります。
どの薬が自分に合うのかは自己判断が非常に難しいため、玉田先生は漢方専門医の診断を受けることをお勧めするとのことでした。

まとめ

治療というと、西洋医学による治療を思い浮かべる方が多いかと思います。

しかし西洋医学では診断がつかない症状を抱える方や、病気とは言えないような悩みで受診を迷っている方は、一度漢方専門医のいる医療機関を訪ねてみても良いのかもしれません。

もちろん薬だけに頼るのではなく、まずはストレスを軽減させることも重要です。
自分に合ったストレス解消法を見つけることから始めてみましょう。