ストレスは、からだのあちこちに様々な症状を起こします。お腹が痛くなる人もいれば、冷や汗が出る人もいるでしょう。一方、ストレスが耳の症状をきたす場合があることはあまり知られていません。

本記事では、ストレスが原因で起こることがある耳の病気「急性低音障害型感音難聴(ALHL)」について解説します。

目次

急性低音障害型感音難聴(ALHL)の症状:低音が聞こえなくなる

急性低音障害型感音難聴(acute low-tone sensorineural hearing loss:ALHL)は、その名が示すように低音が障害される感音難聴です。20代から30代の女性に多くみられます。

ALHLの多くは、突然発症します(ただし、いつ発症したかはっきりとは自覚できないこともあります)。急に耳が詰まった感覚が生じたり、低い音の耳鳴りが発生したりといった自覚症状が起こります。

ALHLで聞こえにくくなるのは、主に500Hzより低い周波域の音です。これは人の話し声よりも低い音域のため、いわゆる難聴(聞こえづらい)の症状よりは、耳が詰まったような感覚や、自分の声が響くような感覚をおぼえる患者さんが多くみられます。

ストレスがALHLの誘因になりやすい

ALHLは、内耳にリンパ液が過剰にたまり、むくみ(内リンパ水腫)が起こることが原因ではないかとも考えられています。しかし、正確なところはまだ分かっていません。

一方、ストレス疲労がこの内耳のむくみを引き起こすことがあるとされています。

どんな治療を受けるの?

ALHLを疑った場合、耳鼻咽喉科を受診します。問診鼓膜の診察聴力検査などを経て、診断がくだされることになります。

難聴の程度によって治療法は異なりますが、循環改善薬ビタミン剤利尿薬ステロイド剤を用いた治療が行われることが多いです。

利尿薬は体内の水分の循環を促し、内リンパ水腫を軽減させます。イソソルビド(商品名:イソバイドメニレットなど)という薬を処方されることが多いです。この薬には独特の風味があり、服用しづらい場合はオレンジジュース炭酸飲料などと混ぜることで飲みやすくなることがあります。

難聴の程度によっては、ステロイド剤を用いて治療することがあります。ステロイド剤は服用量を徐々に減らしていく必要があるので、自己判断で服用をやめてはいけません。

いずれの薬を処方された場合にも、服用時は必ず医師や薬剤師の指導に従ってください。

再発が多く、メニエール病に移行することも

ALHLは比較的治りやすい病気です。短期間で聴力が戻ることが多く、ときには自然に回復することもあります。

一方、再発を繰り返しやすい病気としても知られています。何度も再発する場合、進行性の難聴メニエール病に進展することもあります。再発を防ぐためにも、十分な休息をとり、ストレスへの対応策を考えておきましょう。

さいごに

低音が聞こえにくくなり、耳が詰まったような感覚が伴う急性低音障害型感音難聴(ALHL)。急に「難聴」と言われたら不安になると思いますが、珍しい病気ではありません。また、治療によって良くなるケースが多いです。

ただ、ALHLは再発が多い病気でもあります。ALHLと診断されたら、ゆっくりと休息をとり、できるだけストレスがかからないよう工夫してみてください。現代社会でストレスフリーな生活を送るのは難しいことではありますが、ちょっとした気分転換の方法を見つけておくとよいでしょう。