私たちの生活に欠かせない「食事」。必要な栄養をとるだけでなく、旬の食材や様々な調理法の味を楽しむことが趣味となっている人もいることでしょう。

ところが、病気や治療の副作用などでこの「味」を感じられなくなってしまうことがあります。そうした場合、食事を楽しむことはできなくなってしまうのでしょうか。本記事では、味覚障害の方でも美味しく楽しむことができる食事の工夫をご紹介します。

目次

味覚障害はどんなときに生じるの?

味覚障害は、「食べ物の味を感じにくくなった」「味の感じ方が今までと違う」「口の中がいつも苦いように感じる」といった症状をいいます。程度も様々で、濃い味なら感じられるケースもあれば、まったく味を感じられなくなってしまう患者さんもいます。

味覚障害は、次のような原因で起こります。

  • 亜鉛不足
  • 薬の副作用がん治療
  • 加齢による感覚器官の機能低下
  • 風邪(鼻づまりによるもの)
  • 口腔内の異常(舌炎、舌苔のたまりすぎ、ドライマウスなど)
  • 全身の病気(糖尿病、肝不全、腎不全など)

味覚障害でも「楽しく」「おいしく」食べるために

味覚障害の症状は、人によって大きく異なります。食べやすい味付けも人それぞれですので、自分にあった工夫をしてみましょう。

また、料理は目でも楽しむものです。食器を変えてみるなど、見た目の工夫も有効な場合があります。

ここでは、味覚障害の症状ごとに、味付けの工夫例を紹介します。

味を感じにくい場合

何を食べても味を感じない、または感じにくいときには、下記のような工夫を試してみてください。

  • 味付けをいつもよりはっきりさせる
  • 食材のうまみや香りを活かす
  • 酢の物・汁物・果物をとる回数を増やす
  • 少しさましてから食べてみる

「味付けをはっきりさせる」とは、単純に調味料の量を増やすことだけを指すのではありません。香辛料や香味野菜を使うと、味にアクセントがついて食べやすくなることがあります。

また、だしを濃いめにとると、味を際立たせることができます。だし醤油だし酢を活用するのもおすすめです。

味を強く感じる場合

「何を食べても甘い」「やたらとしょっぱい」など特定の味を強く感じすぎてしまう場合その味の調味料や素材の利用は避けてみましょう。

  • 甘味に過敏になる場合:砂糖やみりんの使用を避け、醤油や味噌を活用する
  • 塩味に過敏になる場合:味噌汁の味は薄めで、だしを濃くしてうまみを利用する
  • 苦味に過敏になる場合:醤油や塩は少なめで、さっぱりとした味付けを心がける

また、場合によっては食器を工夫することで味覚の違和感をやわらげることができます(詳しくは後ほど説明します)。

いつもと違う味だと感じる場合

塩味に違和感があったり、金属のような味に感じたりと、本来とは異なる味を感じてしまう場合は下記のような工夫が考えられます。ご自身が「どんな味なら食べられるか」を知ることが大切です。

コンビニの出来合い食品や、カップラーメンなどなら美味しく食べられる場合も少なくないので、うまく活用してください。

  • 違和感のある味は避け、様々な調味料・味付けを試してみる
  • 肉や魚はアク抜き・臭み抜きを行う
  • ごま・ゆずなどの香りや、酢を利用して風味を添える

味付け以外に工夫できることは?

木の食器で食べるスープ

ここまでは、味覚障害の方向けの食事の味付けで工夫できることを紹介してきました。

では、ほかにはどんな工夫が有効でしょうか?いくつかご紹介します。

金属製の食器は避ける

スプーンやフォークなどの金属製の食器を用いると、苦味を増してしまうことがあります。特に苦味を感じやすい方は、プラスチックや木製、陶器の食器を使用するのがおすすめです。

口の中を清潔に保つ

口腔内が汚れていると、味の感じ方が変わってしまうことがあります。やわらかい歯ブラシで歯や歯肉、舌を磨きましょう。歯磨き粉がしみる場合は、水やぬるま湯だけで構いません。

こまめな水分補給を行う

口腔内の乾燥も味覚を変化させてしまう一因なので、こまめに水分をとるとよいでしょう。あんかけ料理や汁物など、水分を含んだ料理を用意するのもおすすめです。また、食事の前にレモン入りの水を飲むなどすると、口の中をさっぱりさせることができます。

さいごに

味覚障害の治療法は、原因によって異なります。亜鉛不足による症状であれば食事療法や亜鉛製剤による薬物治療を行います。薬の副作用によるのであれば、場合によっては原因となる薬の減量・中止を検討することもあるでしょう。いずれにせよ、医師への相談が必要です。

ただ、抗がん剤による治療中など、味覚障害の症状と上手に付き合っていかなければならないケースもあります。毎日の食事を無理なくとれるよう、味付けや食器、口腔内のケアを工夫してみてください。「絶対に食べなければ」と意気込むのではなく、見た目や香りなどを楽しみながら食べられるようにしましょう。