現代病とも言われ、年々患者の増えている味覚障害。生理的な現象、つまり加齢によって起こることはある程度仕方のない部分もありますが、生活習慣、主に食習慣によっておこる味覚障害がとくに若者の間に増えてきています。これは食品に含まれる亜鉛不足によって起こることが明らかになっています。ここでは、かかりやすい人の傾向、治療または予防法についてお話していきたいと思います。
どんな人がかかりやすいの?
以下の項目で当てはまるものが多いほど、味覚障害のリスクが高いと言えます。
1.55歳以上である
加齢とともに味蕾が減少・委縮してきます。また唾液が年齢とともに減ってくると味覚を感じにくくなる傾向があります。
2.無理な食事ダイエットをしている
ダイエットによる栄養の偏り、とくに亜鉛不足によるものです。
3.一人暮らしである
一人暮らしだと出来合いのものを食べる機会が多くなり、栄養が偏りがちになります。また一人では自分の食べているものの味付けの濃さが分かりにくく、発見が遅れます。
4.ファーストフードやインスタント食品、コンビニ弁当をよく食べる
栄養が偏り、亜鉛が不足しがちになります。また、添加物を多く含むので亜鉛の体への吸収が阻害されます。
5.野菜中心の食事をしている
一見、健康的な食事をしているように見えても野菜には亜鉛が不足しています。
6.長期間飲んでいる薬がある
血圧を下げる薬、抗生剤、アレルギーの薬などの薬は亜鉛の吸収を阻害する副作用があります。
7.舌苔が多くついている、または歯磨き時に舌を毎回磨いている
味覚の受容体、味蕾が舌苔で厚く覆われていると当然味を感じにくくなります。逆に舌苔をとろうとブラッシングをやりすぎるのも舌の表面を傷つけ、舌苔がつきやすくなる逆効果を生み、同様に味覚を感じにくくなります。
味覚障害になったらどこの科を受診すればいいの?
舌を専門とする領域は歯科と耳鼻科です。また、味覚外来、味覚異常外来などの専門の科を設置している歯科、耳鼻科、大学病院などの大病院もあります。そのような機関では専門的な検査も受けやすいのでよりよいかと思われます。
亜鉛不足で他に出る体のサインはあるの?
亜鉛が不足して出てくる味覚異常以外のサインとしては
- 抜け毛が多い
- 爪が変形したり白い斑点や縦筋がでたりしている。また伸びるのが遅い
- 肌が荒れる、シミが目立ってきた
- 目が疲れやすい、視力が落ちた
- 風邪をひきやすくなった
- 疲れやすくなった
- ケガの治りが悪くなってきた
- 物忘れが激しくなってきた
などがあります。
どんな治療をするの?
原因によって治療法は変わってきますが、主に
- 食生活の改善
- 亜鉛製剤の服用
- 味覚障害を起こす薬を違う薬に変える
- 原因の病気がある場合はそれを治す
- 唾液分泌低下の場合は唾液分泌促進剤の投与
- カンジダ症の場合は抗真菌剤の投与
- 心因性の場合はカウンセリング
などが挙げられます。
最近の研究によると、亜鉛製剤を3カ月から6カ月間摂ると、味覚障害患者の約7割に改善の結果が出ていることが明らかになっています。
亜鉛を多く含む食べ物は?

次の食品を積極的に摂るようにしましょう。
- 魚介類:牡蠣、煮干し、タラバガニ、数の子、サザエ、明太子 など
- 肉・卵類:肉類全般、卵
- 豆類:納豆、味噌、きなこ など
- 海藻類:のり、わかめ、ヒジキ 寒天 など
- 種実類:ごま、カシューナッツ、松の実 など
- 乳製品:プロセスチーズ、パルメザンチーズ など
- 嗜好品:抹茶、ココア など
また、亜鉛と一緒にビタミンCを摂ると、より亜鉛が体の中に取り込まれやすくなりますので果物などビタミンCを多く含む食品も積極的に摂るとよいでしょう。
まとめ
通常、普通にバランスのとれた食事をしていれば亜鉛不足にはならないと言われています。また、味覚障害は高齢者でも若い人でもきちんと治療すれば改善する病気なので、味を感じづらくなったりなど異変を感じたりしたら悪化しないうちに医師、歯科医師に相談することをお勧めします。