乳児から幼児(1歳~小学校入学前)になると、離乳食が終わり食事の内容が変わってきます。また、生活スタイルの変化もあることから、排便に関しての習慣・パターンにも変化がみられる時期です。ここでは、幼児期の便秘と自宅での食生活、便秘時の対応などのホームケアを解説します。

目次

幼児の便秘の定義

1歳以降のお子さんでは離乳食が終わり食事の形態も変化してくるため、排便の習慣には個人差があります。便が毎日数回出る子もいれば、34日に1回出るお子さんもいます。

一般には、便の頻度が週に3回以下であっても、排便時に苦痛がない場合や日常生活で腹痛などによる不機嫌がない場合には便秘症と呼びません。便秘症とは、こうした排便回数の低下を伴い、便が硬いために力んで粘膜から出血する、なかなか便が出ないなど苦痛を伴う状態を表します。

幼児の便秘の原因

肛門の近くに便がたまってくると、便を出そうとする「便意」が発生します。しかし幼児の場合は乳児と異なり、生理的に肛門が狭いお子さんや、食生活において食物繊維や水分の摂取量が少ないお子さんでは、この便意が起きにくくなることがあります。

また、硬い便を無理に出そうとすると肛門の粘膜が裂けてしまうことがあります(肛門裂傷)。この肛門裂傷があり、便をするときに「痛い、つらい」とネガティブに感じるお子さんは、排便に対して恐怖心を持ってしまい、便意を我慢します。その結果として、肛門の手前にある直腸に便がとどまり続けると、たまった便からさらに水分が吸収されて硬い便となってしまい、排便をしにくくなる悪循環となります。この結果、慢性的な便秘症となってしまいます。

幼児の食生活・ライフスタイルと便秘

幼児になると、離乳食と比べて食べるもの・飲むものの内容に変化がみられます。そして自我が発達するため、嫌いなものがはっきりしてきます。生活習慣も、近年では親御さんの勤務状況などから1日のタイムスケジュールが遅くなりがちです。

便秘には、献立の内容変化も関与しています。便秘になりやすい傾向があるお子さんは、以下の通りです。

  • 食事の内容として根菜類・果物などの食物繊維や水分が少なく、脂肪分が多い
  • 肥満傾向がある
  • 19時を過ぎてからの夕食で、量が多い
  • 就寝時間が遅い傾向がある(22時を過ぎるなど)
  • 間食の時間が日によって変わり、量が多い
  • 偏食がある

こうした傾向は、食卓の雰囲気を楽しくして、好き嫌いをさせない(嫌いなものを食べたらほめる)、水分はジュースではなくお茶にするなどの工夫で改善することもあります。

また、積極的にとった方がよいものとして、ヨーグルトや乳酸菌の飲料食物繊維が多い野菜(ごぼう、セロリ、にんじんなど)柑橘類などがあります。使用する油もサラダ油よりはオリーブオイルなどがよいでしょう。

こうした整腸作用がよいとされる食物・飲料をとってみて、どの食品がお子さんにあっているか、日々の便の状態をチェックしてみるとよいでしょう。便の調子がよくなるものを見つけたら、嫌いでなければその食べ物を習慣的にとってみることをおすすめします。

トイレットトレーニング・集団生活と便秘

トイレットトレーニング

2歳から3歳になると、トイレットトレーニングを開始する時期となります。機嫌が悪い時などは無理強いせず、お子さんの気分が良い時やリラックスしている時に、自発的にトイレに行かせるなど、気長に対応をしてみるとよいでしょう。トイレを楽しい雰囲気にすることを心がけるとともに、自分の意思でトイレに行けたり、また排便に成功したりしたらしっかりとほめてあげてください。便意は楽しい時や、ほめられた時の方が自然に発生しやすくなります。

その反面、通園が始まる、家族が増えるなどの環境・心情変化によっても便意(腸管の動き)は変化していきます。通園が開始した時にはトイレが怖い、汚いなどという小さなことからの恐怖心によって便意をがまんする癖もでてしまいます。性格にもよりますが、繊細なこどもの心に寄り添うことでも便秘の悪化を防ぐことができるとされています。

自宅での便秘時でのホームケア

自宅で明らかな腹痛がみられた場合、成人でのウォシュレットの感覚で冷たい水をスポイトなどで肛門にかける方法があります。これは肛門反射を誘発して腸管の動きを促し、排便の手助けとなります。また、腸の走行にあわせた「の」の字のマッサージも有効です。こうした方法でも便が出ず、腹痛が強くなり眠れない、食事がとりづらいという症状があれば、受診をしてください。

便秘と診断された場合、医療機関からは整腸剤軟下剤(ラキソベロン、酸化マグネシウムなど)が処方されます。医師の指示に従いこうした内服薬を継続していくと便もやわらかくなるため、排便の恐怖感もなくなり排便習慣も改善してくることが多いです。

まとめ

幼児の便秘は、肛門裂傷などにより排便に恐怖を感じる心理的な側面、また食生活やライフスタイルによる変化などによって起こります。トイレットトレーニングなどが1つの壁となりますが、排便への恐怖心を取り除くこと、食生活(時間・内容)を見直すことが便秘対策では重要です。

腹痛が悪化するなどの症状が持続する場合には、いちど医療機関の受診をご検討ください。