子どもを持つお母さん、お父さんは、小さな我が子が転んだり転落したりして頭をぶつけないか、心配なことと思います。寝返りやハイハイを始めたばかりの乳児や、よちよち歩きの幼児が転倒しないか、わんぱく盛りの児童が遊具から転落しないかと常に目を光らせていなければならず大変です。今回は、医師・武井 智昭先生による監修記事で、お子さんが頭をぶつけてしまった時に確認すべきことをご紹介します。

目次

なぜ転んで頭をぶつけやすい?

子供はなぜ転ぶとすぐに頭をぶつけてしまうのでしょうか。それは以下のような子供の特徴が原因なのです。

1.子供は体に対して頭が大きい

大人と子供を比べてみてください。子供は大人に比べ、頭の体に対する比率が大きく、生まれた時が最大です。

身長は4歳頃までに約2倍になり、体重は約4倍になりますが、脳の容積は2歳までに大人の約72%、8歳までに90%に達します(日本小児放射線学会雑誌より)。頭はある程度の大きさを持って生まれてくるため、重量も体よりも重く、転ぶとすぐに頭をぶつけてしまいます。

2.大人に比べ、顔よりも頭の面積が広く頭をぶつけやすい

頭蓋骨で考えてみましょう。頭蓋骨には顔の部分と頭の部分がありますが、生まれたばかりの赤ちゃんは、顔:頭=1:8と頭の割合が高い特徴があります。5歳になるとその割合は1:4、思春期には2.5:1になります。このように頭蓋骨の大半を頭が占めているため、ぶつけるのは圧倒的に頭が多いのです。

一番怖いのが脳の損傷

頭をぶつけた時に、傷ができて出血すると驚いてしまいますが、それよりも怖いのは脳に損傷がある時です。脳に損傷があると、色々な症状がでてきます。詳しくは「頭をぶつけた後に起こりうる7つの病気とは」の記事で解説します。

頭をぶつけた時の5つのチェックポイントと対処法

では、外からは見えない脳の損傷にどのようにして気付けるのでしょうか。

1.出血しているか

頭は思った以上に出血します。慌てる必要はありません。泥などの汚れは水で濡らしたガーゼなどで拭き取り、清潔なガーゼやハンカチで出血部位を抑えます。通常は数分抑えると血は止まります。もし血が止まらない、出血がひどいなどの場合はすぐに病院へ行きましょう。

2.意識はあるか

まず、頭をぶつけて大泣きしている時は意識があります。ひどく頭をぶつけたにも関わらず泣かず、呼びかけに対し反応が鈍いもしくは反応がない場合、視線が合っていない場合は意識レベルが低下しています。すぐに救急車を呼び病院へ行く必要があります。

3.ぶつけた場所がへこんでいないか

子供の頭蓋は柔らかく、外からの圧力に弱い部位もあります。骨折の可能性もありますのですぐに病院へ行きましょう。

4.麻痺はないか

手足の動きは正常でしょうか。右側の手足だけ動かないとか、痺れがあるなどの症状はないか確認しましょう。完全に麻痺がなくても、歩く時に右側に傾くとか、手を握った時に一方だけ力が弱いなどの症状の時もあります。脳内に何かしらの損傷が考えられます。急いで救急車を呼ぶ必要があります。

5.何度も吐く、反応がだんだん鈍くなってくる

頭をぶつけて数時間たつのに、何度も嘔吐が続いていないでしょうか。または、頭をぶつけた後、1~2日後に嘔吐が始まるといった症状はないでしょうか。それに伴い反応が鈍く、顔色が悪くなってはいないでしょうか。もしそういう症状があれば急いで救急車を呼ぶ必要があります。

まとめ

アメリカの調査結果ですが、頭を強くぶつけて救急受診した子供の90%は軽症で、大きな問題はありません。ほとんどは重篤な状態ではありませんので、必要以上に心配をする必要はありません。ただ、頭を強くぶつけた後48時間は子供の様子を注意深く観察しましょう。1~2日後に出てくる症状もまれにあるからで す。

チェックポイントにある、視線、顔色意識消失、麻痺、嘔吐は特に注意深く観察しましょう。重大な脳損傷が起こっているかもしれないからです。

いつもと様子が違うと気付いた場合は、躊躇なく医療機関に相談に行く事をお勧めします。