子供が頭をぶつけた時に見るべきポイントは「子供が頭をぶつけた時の5つのチェックポイント」で解説していますが、ここでは頭をぶつけた後に起こりうる病気について、医師・武井 智昭先生による監修記事でご紹介します。
子供が頭を強くぶつけた際に、一番心配なのは「重大な病気になっていないか?」、「命に別状はないか?」ではないでしょうか。子供は大人に比べて転倒して頭をぶつけやすいのですが、残念ながら、頭をぶつけて亡くなってしまったり、重大な後遺症が残ってしまったりする事例は毎年起こっているのです。
軽症の状態
まず、頭蓋骨で守られている脳にダメージがあるか無いかが、その後の重篤度に大きく関係します。脳にダメージがない場合は、軽症と判断できます。
1.頭部の皮下血腫(たんこぶ)
いわゆるたんこぶです。頭蓋骨と皮膚の間の血管や南部組織が破れ、皮膚の下に血液が溜まってコブになり起こります。コブはぶよぶよと柔らかく、普通は自然に治ります。
2.頭部切創
頭をぶつけた時に皮膚が切れて出血をする事があります。頭皮と頭蓋骨の間には網の目のように血管が張り巡らされており、血流が良いため、手足の切り傷以上に出血する場合があり驚きますが、小さな傷の場合は軽く圧迫するだけで止まります。
5分間圧迫しても血が止まらない場合、病院を受診してください。テープや消毒の処置や、場合によっては縫合する必要があります。
3.脳しんとう
頭を強くぶつけた事が原因で、一時的に意識レベルが変化したり放心状態になったりします。意識消失を起こす場合もありますが、短時間で意識は戻ります(15分以内)。脳の中に損傷はなく、6時間以内に治まりますが、医療機関での診察をおすすめします。
重症と判断される病気

頭蓋骨や脳にダメージがある場合、重症化します。生命を脅かす状態になる場合もありますので、注意が必要です。
4.頭蓋骨骨折
子供の頭蓋骨は弾力性があるので割れにくいのですが、強くぶつけた部分が陥没する陥没骨折などを起こしやすい特徴があります。その他、頭蓋骨がひび割れのようになる線状骨折があります。頭蓋骨骨折と同時に、頭蓋内出血や脳損傷を起こすケースもあり、重大な状態です。
5.頭蓋内出血
1つ目に紹介した皮下血腫は頭蓋骨の外で起こる出血ですが、ここでいう出血は頭蓋骨の内部で起こる出血です。頭蓋骨の外の出血と違い、頭蓋内出血は重篤であり、死亡の恐れや重度の後遺症を残す危険性があります。
頭蓋内出血は、どの部分で起こったかでいくつかの種類があります。
- 硬膜外血腫:頭蓋骨と脳を覆う膜のうち一番外側にある硬膜の間に血液がたまって起こります。
- 硬膜下血腫:硬膜と、その内側にあるくも膜との間に血液が溜まり起こります。
- 脳内血腫:脳の中に起こる出血です。
頭蓋内の血管が破けて少しずつ出血し血が溜まり起こりますので、頭をぶつけて数時間後~数日後に症状(意識レベルの変化や、麻痺や頭痛・嘔吐など)が出始める場合もあります。
6.脳挫傷
特に交通事故などで大きな力によって強く頭をぶつけた時に起こることがあります。衝撃を受けた部分の脳が崩れることを脳挫傷といいます。
強くぶつけた部位の反対側の脳に生じることもあります。また、脳内の出血や脳の腫れを伴う場合もあります。
7.びまん性軸索(じくさく)損傷
脳の神経細胞の一部が損傷した状態で、6時間以上持続する意識消失を起こします。転倒や自動車の衝突などで起こりますが、乳児を強く揺さぶったりする事で起こる事もあります(揺さぶられっ子症候群)。軸索損傷が起こると、脳細胞が壊れ重篤な状態になります。
まとめ
軽症の場合は、ほとんどの場合完全に回復します。重症の場合は、最終的に完全に回復する場合もあれば、後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至ってしまうこともあります。子供の場合は特に、自覚症状が分かりにくく(自分で症状を表現できない場合も多いため)、慎重に観察し判断する事が重要です。「子供が頭をぶつけた時の5つのチェックポイント」を参考に、少しでもおかしいと思った場合は医療機関で精査してもらうように しましょう。