子供はよく泣きます。おなかがすいている時や、おしっこやうんちで気持ちの悪い時、どこかが痛い時などはまだ分かりやすいのですが、ずっと泣いていて泣き止まない時には心配になります。泣き止まない時に何か病気が考えられるでしょうか? 泣き止まない時の原因となりうる病気についてお話ししたいと思います。

目次

子供が泣くのは、当たり前のこと

まず知っておいていただきたいのは、子供(特に乳児)が泣くことは自然のことです。

言葉を話すようになるまでは時間がかかり、また、しっかりと自分の状態を表現できるようになるにはさらに時間がかかります。
それまでは「泣く」ことでしか、自分の気持ちや状態を表現できません。

お腹が空いている時、おしっこやうんちで気持ち悪い時、何か不快に感じるものがある時、周囲からは原因が分からないけど泣いている時など、様々な状況で泣くことがあります。
子供が泣いている時は、まずは状況をよく観察するようにしましょう。

子供が泣き止まない原因となる病気について

子供が泣き止まない原因となる主な病気について、部位別に述べていきます。
ここでは、自分の言葉で表現することが難しい学童期以前を主な対象としています。

頭頚部

  • 喉の痛み:風邪をひいた時などに喉が赤くなり、痛みを認めるがあります。
  • 口腔内の発疹ヘルパンギーナと呼ばれる夏風邪や手足口病などで特徴的ですが、その他多くの細菌やウイルスの感染症でもできます。
  • 口内炎:原因ははっきりと分かっていませんが、体調が悪い時などにできることがあります。
  • 中耳炎:耳の痛みがあります。よく耳を触るしぐさが見られます。鼻水などの風邪症状を合併していることがあります。
  • 目の炎症など:目を擦ることで、角膜などに傷がつき、その部分に炎症あるいは潰瘍を認めることがあります。
  • 異物:鼻などに小さなものを詰めてしまうことがあります。

胸部

  • :何らかの原因で咳が続く時に、息苦しさから泣くことがあります。胸の動きを観察してください。呼吸が早い場合には喘息性気管支炎などの可能性があります。
  • 不整脈:多くはありませんが、原因になることがあります。動悸などの症状を不快に感じることで泣くことがあります。
  • 摂取したものの逆流:一旦胃の中に入ったものが食道に逆流する時に不快に感じるようです。これも多くはありませんが、食べ物や飲み物を摂取してすぐに寝た時などにずっと泣くことがある時などには考える必要があります。

腹部

  • 便秘:便が出ないことでお腹がはり、それを不快に感じるようです。
  • 腸重積:腸と腸がはまり込んでしまう病気です。血便を認めることが多いです。間欠的(20~30分泣いて、その後は一旦泣き止んで、その後また泣く)に泣くことが特徴的と言われます。
  • 鼠径ヘルニア:足の付け根の小さな穴から腸の一部が出てしまうものです。出てしまった腸が戻らなくなった状態を嵌頓(かんとん)と言い、痛みがあります。足の付け根に盛り上がりを認めます。

会陰部

  • おむつかぶれ:肛門周囲のお尻が赤くなります。痛みもあります。
  • 肛門周囲精索:(せいさく)と呼ばれる腹部と精巣を繋いでいるひも状のものが回転してしまい、痛みが出現します。精巣が赤紫色に変色して、早急な治療が必要です。
  • 精巣の炎症:精巣(あるいは精巣の付属臓器)に感染が起こったものです。痛みを認めます。

四肢

  • 肘内障:肘の関節の(亜)脱臼です。腕を強く引っ張った時などに起こりますが、はっきりとした機転がない場合も多いです。脱臼した側の腕を動かさなくなります。
  • ターニケット症候群:髪の毛や糸くずが絡んで痛みを認めることがあります。手足の指や陰茎に見られます。

全身

  • じんましん:かゆみによって泣くことがあります。じんましんは食べ物などのアレルギーや風邪などをひいている時に認めることがありますが、原因が分からないことも多いです。
  • 虫刺されや皮膚の炎症:虫刺されによる痛みやかゆみ、その他の皮膚の炎症などでのかゆみなどが原因で泣くこともあります。かゆみは濡れタオルなどで冷やすと落ち着くことがあります。
  • 髄膜炎・脳炎:脳や脳を覆っている髄膜と呼ばれる膜に炎症が起こった病気です。発熱やけいれん、ぐったりしているなど他の症状を認めることが多いですが、最初の症状が不機嫌(ずっと泣いている)だけということもあります。後遺症を残す可能性もあり、重大な病気です。

原因不明

  • コリック:原因は分かっていませんが、3ヶ月前後の子供で夕方から夜にかけて何をしても泣いていることがあります。他に身体的な異常などは認めません。
  • 成長痛:原因は分かっていません。夕方~夜間に下肢の痛みを認めることが多いです。30分~1時間程度でおさまることが多いです。

受診のポイント

泣き顔の赤ちゃん-写真

ずっと泣き続けている時には、上で述べたような状態・病気を認めることがあります。
しかしこれらを家庭で見つける、判断することは難しいでしょう。

医療機関を受診する一番のポイント周囲の方から見て「普段と違う泣き方かどうか」です。

普段と違うかどうかは、いつも見ている方にしか分かりません。
いつも見ている方が「普段と違う泣き方」だと判断された場合には、迷わず医療機関を受診しましょう。

まとめ

子供、特に小さい子供が泣くことは異常ではありません。

ただし、ずっと泣いていて泣き止まないときには、その原因となる状態や病気を認めることがあります。

また、不機嫌(泣き止まない)ことが最初の所見となることもあります。
いつも世話をされている、いつも見られている方が「いつもと違う泣き方」だと思われる時には迷わず医療機関を受診しましょう。

また、ずっと泣くことに加えて、耳をよく触ったり、皮膚に炎症がある場合などにも受診し、適切な治療を受けましょう。
泣き止まないことの原因となる病気の中には、重大な病気も含まれるため注意が必要です。